ABOUT

NOVELS1
NOVELS2
NOVELS3

WAREHOUSE

JUNK
BOOKMARKS

WEBCLAP
RESPONSE

case of Madoka Kijo 3周年記念企画



えっと、今日は何やっけ?買い物に付き合う約束やったっけ?


いっつもいっつも休みやっていうても、自分にゆっくり付き合うてやれへんから、悪いなぁて思てんねん。自分もなーんも文句言わへんと、普段はメールとか携帯でちょっとしゃべるくらいで我慢してくれてるやん。

せやけど、オレやって健康な男子やし、ごっつい好きな女の子といつも一緒におりたいて思てるし。でもなー、お互い付き合いっちゅうもんがあってそうもいかへんねん、残念ながら。



「まどか、ちょっと待ってね」

2階の窓から顔を出して、桃花は下のオレに大きな声を上げる。
ええってええって今日は夜まで一緒にいてるつもりやから、そないに慌てんでええて。

「ゆっくり落ち着いて降りてきいや。せやないと階段落ちするで」
「大丈夫だよっ!」

まったく、桃花は運動神経やって悪うないくせに、なんでもないところでようけつまづく。ある意味才能なんちゃうかって思うくらい鈍臭いとこがある。

せやから、落ち着いてゆっくりしいや、何分でも待ってるさかいに。

「姫条、あいかわらず大変だね」
「おう、尽。お前もな」
「ホント、大変だよ、あの天然姉貴は。ま、頼むぜ、姉貴のこと」
「まかしとき。で、お前もでーとか?」
「うるさい!」
「ほお、モテル男はつらいね〜、尽くん」


もうちょっと、もうちょっとて言いながら、結局桃花んちの前で待つこと約15分。あまりにも日常茶飯事やから、待ってる間に弟が時々声掛けてくるようになった。最初はなんやごっつい睨まれとったような気もしたけど、今は天然な女を間に挟んで、よう話すようになった。
オレ自身は一人っ子やさかいに、弟いうんも面白いもんやなーって思う。ま、桃花の弟やから、よけい面白いんかもしれへんけど、それでも兄弟っちゅうのはええもんやなーと思う。




「ごめん、ごめん」
「今日はこけてないか?どっか打ってないか?」
「もう、心配性!」
「せやかて、こないだ派手に自転車でこけてそこら中に青たん作っとったんはどこのどなたさんです?」
「む〜。さあ、行くよ。荷物持ちのまどかくん」
「へいへい」

よう転ぶんは高校の頃からやったけど、こないだ特に激しくいったらしい。なんや触ったらごっつい妙な顔するんで、袖めくってみたら、ごっついかさぶた作っとった。
本人はたぶん、いや、絶対意地でもオレに話さへんから、こっそり弟に探り入れたら、案の定や。盛大に雨の日に自転車でこけてん。


車にするか、バイクにするか、迷うたけど、繁華街は止めるとこに困る。
高校出てからこっち、こうやって普通に道歩くんは久しぶり。手ぇくらいつないだって怒らへんよな。ええよな、うん、ええわ、オレが手ぇ握りたいねんもん。つないだろ。

「桃花」
「何?」
「手ぇつなご」
「何で?」
「何でて、つれないな〜、自分」

うわ、ほっぺたがちょっと赤ぁなった。ごっつかわいい。

赤い顔してつんつんしてもかわいいだけやで、桃花。
まあ、ええやん。手ぇつなごや。

ぎゅっと桃花の手を握ると、最初はちょっと逃げ腰やったけど、すぐに握り返してきてくれた。もうこの子はどこまでも照れ屋さんなんやから。ま、そこがかわいいとこでもあるんやけど。

「今日、どこらへん見に行くんや?」
「うーん、あんま考えてない」
「何やそれ」

まあええねん。
自分が毎日元気でにこにこしてこれとったら、それでええねん。
そんで、時々自分とこの弟とくだらん話して、ぼけたり突っ込んだりしてんのがええねん。

そういう何でもない日常っちゅうんが、こないにおもろうて、ちょっと切なぁて、かなり暖かいもんなんやて、自分に教えてもろうたからな。

「ま、とりあえず、ちょっと店しばいたら、昼にしよか。連休で混み混みになるやろからな」
「そうだね。あ、こないだ大学の友達に教えてもらったとこがあるの。まず、そこ行こうよ。こないだできたばっか」
「よっしゃそうしよ」


オレは自分のことごっつい好きなんやなー、ホンマ。
さーて、ええ天気に負けへんくらい盛大に盛り上がろか、なあ。

握り締めた手のひらに、ちょっとだけ力を込めて離れへんように。
あ、でも、自分こけたらオレも一蓮托生か!?

ま、自分の下敷きやったらしゃあないか。今日くらいはこらえといたるわ。



back

go to top