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Christmas Time Is Here...



なあ、オレは今までぎょうさんごまかしたり、アホ言うたりしてきた。
せやけど、せやけどな。
自分だけは本気やねんで。せやから、よけいに肝心なことは中々言えへんねん。









クリスマス、どないしよか?
どこ行ってもぎょうさん人がいてるから、やっぱウチ来る?
なーんて軽いノリで桃花をウチに誘ってみたらホンマになった。




まあ、卒業してからなんぼでもウチには遊びに来てるし、そんな無茶なこと言うてる訳やあらへん。実際去年はカッコつけてごっつええレストランを3ヶ月も前から予約して、ごっついおしゃれしてご飯食べに行ったけど、結局肩が凝っただけで帰りのコンビニで安っぽくてちっちゃいケーキ買ってウチで食べた。そのケーキの方がよっぽどうまかったし、何よりも桃花がにこにこしてたし、やっぱオレらにはそのくらいが分相応って奴かもしれへん。



「来たよ!」
「お、おう、よう来たな。まあお入り」
「うん。う〜寒かったぁ!まどか、温かいカフェオレプリーズ!」
「ほいほいちょい待ち。ちゃーんと用意してんで。まずこたつでも入っとき」
「うん、そうする」

卒業して2年。オレにしてはかなり真剣にこいつと付き合うてるつもり。
ホンマこの子はええノリなんやけど、ちょっとしっとり感は乏しいかもしれへん。

今日はクリスマスイブやさかいに、オレが腕によりをかけて昨日からこいつの好物のビーフシチューを仕込んである。よく冷えたシーザーサラダも冷蔵庫の中。もう20歳過ぎて公然と飲んでもええから、取っておきの安くてうまいスパークリングワインもよう冷えてる。桃花にはとりあえず好きなケーキを買うといでって言うてあったから、最近お気に入りのアナスタシアっちゅう店に寄ってきたらしい。

こたつの上にはささやかなクリスマスツリー。BGMはちゃーんとクリスマスソングのコンピ。

寒い寒いとこたつに足を突っ込んで揺れてる桃花の前に適温のカフェオレとオレにはブラックコーヒー。益田さんとこでバイトさせてもらった時にもらったええ豆や。

「うーん、いい匂い。いただきます」
「はい、おあがり」

こくこくと両手でカップを抱えて半分くらい飲み干した。もうちょっと味おうたらどないやろ。ま、ええか。桃花の体が温まるんが先やしな。


「なあ、ちょっと聞いてもええか?」
「何?」
「ホンマにどっか出かけへんでもよかったん?」
「うん、わたしこの部屋好きだし、落ち着くし。ひょっとしてまどか去年みたいにどっか予約したなんて言うんじゃないでしょーね?」
「してへんよ。桃花がこれでええっちゅうから。せやけど、女の子ってもっとこう……なんちゅうか……」

小さく膨れた桃花はカフェオレを飲み干したかと思うと、すっとオレの腕に自分の腕を絡めて甘えてきた。どうしてそういうこと言うかなー、と桃花はオレを見上げながらさも心外だと言わんばかり。せやけど、女の子にとってクリスマスイブ言うたら一大イベントやろ。自分だけは違うとでも言うんかいな。



「オレな、前にもちらっと言うたと思うけど、結構家が金持っててん」
「うん、それで」
「せやけどな、オヤジはいっつも忙しかったし、お袋もオヤジに付き合うて大人のパーティや。オレいつも小学校の頃お手伝いさんの作ってくれたご飯とケーキを一人でテレビ見ながら食べててん」
「うん」
「何て言うか……その、あれや!」
「もしかしてお部屋でこういうのってちょっとわびしいとか思ってる?」
「ううん、そないなことやない。逆や、逆」

頭の上にクエスチョンマークが踊り狂ってるで、桃花。まあ、せやろな、意味不明やわな、オレの言うてること。でもな、こないして本当に好きな女と二人きりでささやかなクリスマスを過ごすっちゅうのも悪いもんやないなーって噛み締めてたとこなんや。

「嬉しい?」
「うん?あぁ、うん、めっちゃ嬉しい」
「そっか、わたしもめっちゃ嬉しい」
「発音が変」
「何よ〜、まどかの標準語だって変じゃん」
「オレは変じゃないよ」


二人して顔を見合わせて、なんでもないことでこうやって笑い合うやなんて、ごっつい幸せなことやないやろか。子供の頃はなんぼ金があったかて、家族が一緒でないんはあかんのやないかって思うてたけど、やっぱりそうなんかもしれへん。まだ、桃花はオレの家族やないけど、一緒におってこんなに温かい気分にさせてもらえるんはごっつい嬉しい。


さてと、シチュー温めて狭いこたつの上に並べるとしますか。
二人で膝突き合わせてご飯食べて、うまいケーキでも食べて、朝まで一緒に過ごせたら嬉しいねんけど。
なあ、ダメやろか?

クリスマスくらい……かめへんよな?



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