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クリスマスプレゼント

二人して何という格好をしているのだろう。

益田のヤツがクリスマスは仮装パーティにしようなどと言い出したせいで、彼女はやけに張り切って衣装を買ってきた。しかも、中身は当日まで秘密だと言われていた。
まあ、いいだろう。たかが、仮装だ。せいぜいいつもと違うスーツを着せられるか、多少おかしな帽子の一つも載せられるくらいだろうと、高を括っていたのだ。


「零一さん。じゃーんっ!!」
「こ、これは何だ?」
「何ってサンタさんに決まってるでしょ。赤い上下だもん。あ、そうそうわたしのも当然お揃いで買っちゃった。しかも、帽子とブーツ付きっ!」
「な、な、な」
「さあ、お着替えしましょv」


満面の笑み。この微笑みに何度俺は煮え湯を飲まされてきたことか。風邪を引いたわけでもあるまいに、両手にサンタ服をぶら下げてにこにこと笑う彼女に心なしか背筋が寒くなった。
経験上、彼女のこの微笑は俺に有無を言わせない。
いや、正直に言おう。俺はただ単に弱いのだ。彼女の笑顔に。


情けない、と言えば至極情けない。
だが、こればっかりはどうしようもない。惚れた弱みと笑う奴はいくらでも笑うがいい。

全く、30男の間抜けたサンタ姿など、喜ぶのは益田と君くらいだ。
仕方が無い。ええい、ままよ。


見つからないようにそっとため息を吐き出しながら、俺は差し出された真っ赤な衣装に袖を通し、彼女に向かってどうだと言わんばかりに腕を広げてみせた。すると何を思ったのか彼女は、いきなり俺の腕の中。


にっこり笑って見上げる君がいとおしくて、半分自棄になった俺はそっと彼女を抱き上げる。相変わらず軽い。


「きゃっ、零一さんったら」
「何だ、違ったのか?」
「もう」
「怒ったのか?」
「怒りません、ちょっとびっくりしただけよ」
「そうか、それはよかった」
「零一さん。ハッピークリスマス」

抱き上げられたまま、彼女は首を傾けて俺の頬に口付けた。この状態で俺の方からも口付けるのは些か無理がありそうだ。下ろしてから、ゆっくりヤドリギの下で口付けを落とそう、君のかわいらしくて憎らしい唇に。



ハッピークリスマス。
今年は君という嬉しいプレゼントを貰った。

普段神だの仏だの思ったことがないくせに、今年からは神に感謝しなくては。
君というかけがいのない贈り物をくれた運命にも。



もちろん、君自身にも。




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