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01.僕を予約してみない?



ねえ、先生。
僕のことどう思ってる?
僕らじゃなくて僕だけを見て。
ねえ、お願い。
先生。僕だけを見て、トゲーとセットじゃなくて単品の僕だけを。






「ん……」
冬休みに入ったというのに僕は学校へ毎日通うために7時には起きるようにしている。学校へ行かなきゃいけないから一応起きるけれど、それでも毎日眠くて仕方がない。

「クケーッ!」
「ん……着替える……」
「トゲトゲー」
「……大丈夫……ちゃんと行く……から……ぐぅ…………」

耳元でトゲーが呼んでいる。判ってるよ、ご飯食べながら寝ちゃダメだよね。判ってるよ、着替えながら寝ちゃダメだってことも。でも、眠いんだ。先生の声が聞こえない場所だと目を開けていられないだけ……。



「瑞希くん。今日も寒いのに来てくれてありがとう。さあ、始めましょうか」
「……ん……先生」

南先生は僕の担任の先生で、大好きな人。
自分では気づかなかったけれど、この間風門寺に指摘されてなんだこれが恋なのかってやっと自覚した。
この頃の僕は先生が隣に座るとどきどきして、正面からじっと見上げられると目をそらしたくなったし、日曜日に先生に会えないと思うと寂しくて困ってたから、理由が判明して安心したんだと思う。

でも、その気持ちに気がついてよくよく周りを観察すると、何てライバルが多いんだろうってまた別の意味で気になった。中でも子犬は隙あらば南先生を落語に誘おうと仕掛けてくる。今のところ連敗記録を更新中だけど。


「先生……寒い」
「えっ?あ、そういえば指先がちょっと赤いわね」
そういうと先生は僕の冷たい指先に触れた。僕も冷たいけど、今日の先生の手もずいぶんと冷たい。だから温められたらと思ってついついその小さな手をぎゅっと握ってしまった。

赤くなってる、先生。
でもたぶん僕の顔も赤い。
先生の手を握ったら急に体温が上がった。最初は気のせいかと思ったけど、心臓がどきどきしているってことは血流が多くなっているってことだろう。



寒いからか、先生が大好きなトゲーさえも今は活動が鈍っていて、ポケットの中にもぐりこんでうたた寝をしている。
僕の心臓の音がトゲーにも聞こえてしまいそうだ。



「先生、僕を……予約して?」
「はい!?」
「そうしたら寒い時はいつも先生を温めてあげられる。どう?」
「み、瑞希くん!」
「ふふっ、何てね」

「もうっ、びっくりさせないでよ」と先生は大人げなくふくれっ面になった僕をにらむ。
でもね、本気だよ、僕。

将来の夢は先生のお婿さんだから。




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