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07.愛する程に苛めたい



「フランシスさま、あの」
「どうかしましたか?レディ」
「すごく人に見られてる気がするんですけど……」
「そうですか?私は全く気になりませんが」



フランシスは人目も憚らずパルクディマンシュのベンチに腰掛けて、隣のエンジュの髪をいじりながらキスを繰り返していた。その前からずっと手を握ったままだったし、隣に座って彼女を抱き寄せては頬や髪に唇を寄せて甘い言葉をひたすらに囁いき続けてもいた。

「レディ、もしかしてこんな私をわずらわしいとお思いですか?」
「えっと、その、そういう訳ではなくて」
「ではいいではありませんか。愛する女性に常に触れていたいと思うのは至極自然なこと。あなただって遠慮なく私に触れてくださっていいのですよ」
「あ、いえ、それはちょっと……」
と、言いながら心なしかエンジュは体を少し横にずらす。その頬は先ほどからずっと甘いイチゴのように赤く染まったままだ。そんなエンジュがいとおしくてフランシスはその僅かに空いた隙間を埋めようと自らの体をずらす。するとまたエンジュは体をずらし、その繰り返しを続けるうちにとうとう彼女はベンチの端に到達してしまった。もう少しずれるとエンジュはベンチから落ちてしまうところまで。

「エンジュ、そんなに逃げなくてもいいじゃありませんか」
危うく転げ落ちそうになったエンジュの背中にそっと腕を回すと、フランシスはそのほっそりした見かけに似合わない強い力で自分の方へと抱き寄せた。「掴まえましたよ、エンジュ」、そう耳元で囁くと柔らかな唇に自らの唇を重ねた。


あなたを心の底から愛しているから、
とてもとても愛しているからこそ、少しだけ苛めたくなるんですよ。

困った人ですね、あなたという天使は。
私の心をこんなにも狂わせるなんて……本当に罪な女(ひと)だ。




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