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15.口説く色男



「ねえ、エルヴィン君。君にお願いがあるのですが」
「にゃーん?」
「アンジェリークはこの頃どうしたのでしょうね。どうも私は避けられているような気がしてならないんですが」
「にゃ?にゃにゃーん」
「気のせい、でしょうかね」

ニクスはエルヴィンを掴まえて、最近のアンジェリークの態度を嘆いていた。
「あれ何やってんだ?」、レインは通りすがりにそんなニクスの姿を見かけたが、声を掛けるような雰囲気ではなくその場は素通りした。ただし、頭の中には大量のクエスチョンマークを散りばめたまま。

ニクスはそっとエルヴィンを抱き上げると腕の中に閉じ込めて頬ずりをしながら、またも「アンジェリークが何か怒っている様子なんですよね」と声を掛ける。何をしたのか何を言ったのか考えてみるが、無意識の結果なのかどうにも心当たりがない。だからこうやっていつも一緒にいるエルヴィンを掴まえてかき口説いている最中なのだった。だがしょせんは話のできないただの猫。いくらいとしのアンジェリークとこのエルヴィンがいつも一緒にいるからといって彼を口説いたところで何もならない。それでもニクスは腕の中で逃げようともがくエルヴィンにしつこく話しかける。
一旦、サルーンを素通りしたレインは、キッチンでジェイドが作っておいてくれたおやつをつまんで自室へこもろうと再び通りかかった。

「おい、ニクス。さっきから何やってんだ?」
「ああ、レイン君。何でもないですよ」
「あいつだったら花を見てたぜ、いつもの場所で」
「そうですか」

アンジェリークに避けられているとしても、そのままにしておくのはいけない。ニクスはいつになく急ぎ足で庭へと歩いていった。後に残されたのは意味もわからずにゃーんと一声鳴くエルヴィンと、くすくす笑うレインだった。「猫口説くくらいならさっさと行け」、レインは肩を竦めてエルヴィンを抱き上げた。



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