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14.意外な一面



「わっ!?」

サルーンから大きな叫び声が聞こえて、アンジェリークは自室の扉を開けて廊下から下を覗き込んだ。サルーンの真ん中で立ち尽くしているのはニクス。そしてその背にしがみつくように止まっているのはエルヴィン。状況は見えないが、いつもは冷静なニクスが動揺のあまり珍しく大声を上げたようだった。さて、どうしようかしら、アンジェリークは階下の様子を眺めながら思った。助けてあげるべきだとは思う。しかし、彼女が降りていってエルヴィンを抱こうにもニクスの肩に乗ってしまった彼には手が届かない。自分で降りるかもしくはニクスが下ろすか、はたまた誰か他の人に手伝ってもらうしかないが、あいにくと今日は二人きり。

「エルヴィン!こら、髪を梳くんじゃありませんよ!?」
「うにゃ〜ん」
「爪を研ぐなら、別の場所で……って、いたっ!」
「にゃ、にゃ」

あら、エルヴィンったらなんだかご機嫌さんだわ。でも、ちょっとあれは可哀想かも。
アンジェリークはようやく下に下りることにして、階段を駆け下りた。

「ニクスさん。エルヴィンがごめんなさい」
「えっ?あ、ああ、いいんですよ」
「ちょっとしゃがんでいただけます?」
「ええ……わかりました」

しゃがめば、さすがに降りるはず。もししがみついていたとしてもニクスが屈めばアンジェリークにも手が届く。そっとニクスが腰を屈めてしゃがむとエルヴィンはアンジェリークを見上げて「にゃーん」と一声鳴いて床に下りた。座り込んだニクスはやれやれといった風情で肩を竦めると、少し決まりの悪そうな顔をした。
「災難でしたね」
「どこから見ていました?」
「えっと……、あ、ええ、ついさっき、ついさっきです」
「まあ、いいでしょう。疲れました、癒していただけませんか?あなたの柔らかな唇で……」
「……!」

アンジェリークはそのままニクスに抱き寄せられ、意外な姿を見たお詫びにと頬にキスを落とした。



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