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13.絵になるワンシーン



かの人はいつも優雅に佇み、そこにいるだけで絵になる人だった。





初めて出会ったのはメルローズ女学院の応接室。ノックをして扉を開けると一陣の風が舞い込んできた。その風の流れる方向へと目を向けるとそこには開け放たれた窓の外をじっとながめている一人の男性の姿があった。初夏の美しい芝生をながめているのか、それともその向こうに見える森の緑をながめているのか。



アンジェリークはその男性の立ち姿から目が離せなくなった。
そのままドアノブに手を掛けたまましばらく立ち尽くして動けなくなった。


やがてゆったりと空気が動く気配がして、その男性はこちらへと視線を向けた。そのまま数秒間アンジェリークと彼の視線は絡み合ったが、すぐにかの人は口元に優雅な微笑みを浮かべた。

「こんにちわ」
「……えっ?あ、はい、こんにちわ」
「あなたが……アンジェリーク。そうですか、あなたが奇跡の少女……ですか」
「は?」
「いや、失礼。少々不躾でしたね」

風に乱れた濃い色の髪をさっと片手でかきあげると、その男性はゆっくりとアンジェリークの前へとやってきた。そしてゆったりとした動作で彼女の手を取り、指先にそっと唇を寄せた。そして真っ赤になったアンジェリークを見て今度はにっこりと笑った。





かの人はいつも優雅に佇み、その存在そのものが絵になる人だった。
そしてその絵になる人は、今アンジェリークの傍らにそっと寄り添っている。初めて会った時よりも一層柔らかな微笑みを浮かべながら。




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