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10.水も滴る…?



「きゃぁっ!!」
「アンジェリーク、どうしました!?」

庭の隅、ニクスが丹精している花壇の方からアンジェリークの悲鳴が聞こえてきた。ニクスはどうしても手渡したい荷物があるとの連絡を受けて、正面玄関へと引き返すところだった。背後から聞こえてきた声に慌てて振り返ると、この間レインが作った水遣り機を手にしたアンジェリークが慌てていた。横ではいつも一緒にいるエルヴィンが水を避けようとニクスの方へと走ってくるのが見えた。そんなエルヴィンを片手で抱きとめて、珍しく走って彼女の元へと引き返した。

「アンジェリーク!大……丈夫……で……!わっ!」

ニクスにしては珍しく今度は大きな声を上げる。
そこにはホースをコントロールできずに水を撒き散らすアンジェリークの姿があった。
そして、ニクスの声は正面からまっすぐに向ってきた水にかき消されたのだった。


ようやく、水が止まりアンジェリークは慌てて水浸しになったニクスを見つけた。
「ご、めんな、さい」
「いいんですよ、あなたが濡れなくてよかったですよ。……っくしゅん」
「ああ、ごめんなさい。ニクスさん」
「大丈夫。大丈夫ですから」
「でも……」
「じゃあ、温かいお茶でも淹れていただけますか、マドモアゼル」

頭から水を被ったニクスは、それでも精一杯の笑顔でアンジェリークを逆に慰めた。



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