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07.虜



「私を虜にするなんて、あなたは罪な人ですね」、
ニクスはアンジェリークの柔らかな髪を指先で弄びながら、低く柔らかな声で囁く。薔薇色の頬に優しく口付けを落とし、ネグリジェの胸元にもキスを落とす。

タナトスを浄化し、本来なら女王になるべき神聖な少女を胸に抱きしめながらニクスはただキスを繰り返す。

最後の敵を倒した後、彼女の姿は時空の彼方へと去った。世界を救ったという達成感よりも、彼女がいない無力感の方が先に立ち呆然と立ち尽くしたものだった。だからこそ、アンジェリークが地上に戻ってきた時には思わず強く強く抱きしめた。もうすでにニクスは自分が彼女の虜になってしまっていることに気が付いていたからだ。

「私はあなたに囚われてしまったのです。あなたと言う柔らかな檻に、ね。だから、絶対に釈放するなんて言わないでくださいね」
ニクスはふいに切なそうな表情になったかと思うと、たちまちその瞳を曇らせる。

アンジェリークはそんな彼を柔らかく抱きしめながら、魔法の言葉をつむぎ出す。
「囚われ人になったのはニクスさんだけじゃないですよ。わたしも同じ。初めて会った時から虜になったんです」
「ありがとう、アンジェリーク」
愛していますよ永遠にね、ニクスは柔らかなキャンドルの光の中で囁きながら再びベッドに彼女を横たえた。



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