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21's SPACE 99TheUniverse VOL.18 
        【森 羅 万 象

2001.3.10.

前号まではこちら

【地球】シリーズにあわせて  環境ホルモン 木は切らない どうする!“ゴミ”もご参照下さい

   earth 地球を考えよう・・みんなで・・・ 【地球bP1】 
過食と飢餓


三つの栄養不良・・・
やせ衰えて骨と皮だけになって、異様に腹がふくらんだ子供の姿を映像等で見たことはないだろうか。カロリーと蛋白質の欠乏が腹部の水分のバランスを乱して起こる「クワシオルコル」とよばれる疾患だ。スーダン・・遠くから徒歩で連れらて来て、砂漠に設営されたテントでボランテイア医師団が高カロリーのビスケットと砂糖水を与えて健康を回復させようとしている姿。

一方地球の裏側の心臓病棟、心臓切開手術、或いは詰まった動脈に血流を取り戻す治療を受ける患者。この人達も又腹が異様に出ている。こちらは過食が原因だ。回復の見込みが非常に少ないスーダンの子供、対照的に過食が原因で疾患した市民の大半は病状が好転する。しかし、やがて又同じ病名で病室に戻ってくる。富と貧、医療の格差は明白だが、共通するのは“栄養不良”である。

世界保健機関(WHO)は全ての国の人口のほぼ半分が何らかのタイプの栄養不良の状態にあると推定している。12億人の飢えた人々、同じく12億人の食べ過ぎの人々、そして数十億人の第三の栄養不良グループがある。この第三のグループの人達とは、十分な食物を摂っているが基礎的なビタミンとミネラル不足に陥ってる人達である。
栄養不良は、子供の知能と身体の発達を妨げ、疾患率や死亡率を高め、医療システムに重い負担を課し、経済発展を阻害する。また、所得水準、女性の地位、都市への人口移動、紛争、土地分配、広告活動等広範な社会問題と密接に関係している。ということは、栄養の問題は社会発展の重要な位置にあり、国の将来にとって政策決定者は無視できない問題となる。

栄養不良・・
“人間が健康な生活を送るのに必要な栄養その他の食物要素の摂取量が偏ってる(不足または過剰)こと”と「地球白書」は定義づけている。

主要栄養素−炭水化物・蛋白質・脂肪−これらは細胞の成長に必要な要素となっている。また、身体のエネルギー源でもある。炭水化物と蛋白質は1g当たり4Kカロリー、脂肪は9Kカロリーのエネルギーを出す。

微量栄養素−
ビタミン・ミネラル、鉄、カルシウム、ビタミンA−E等が含まれる。ビタミンとミネラルは、主要栄養素が身体を作り維持するの助ける働きをする。微量に摂取されるものだが、非常に重要なものだ。このほかにも、コレステロール、食物繊維等の食物要素は栄養素とは定義されないが、健康にとっては重要なもの。

栄養成分−穀物(全粒穀物)は大部分が炭水化物で、繊維質、蛋白質、僅かな脂肪、微量栄養素が含まれている。対照的に肉類は、大量の脂肪、コレステロール、蛋白質、僅かな微量栄養素があるが、炭水化物、繊維はほとんど含まれない。果物・野菜は脂肪が少なく、繊維と微量栄養素を豊富に含んでいる。また、精糖のような食品は、栄養価がないエネルギー(エンプティー・カロリー)である。これらカテゴリーからそれぞれ必要な量の食物をバランス良く摂取することが健康を維持するには重要。
“健康と長寿を支える食事は、植物中心型(全粒穀物、野菜、果物、ナッツ類)で少ない量の畜産物”という研究もある。(ハーバード大学公衆衛生研究所他の共同研究)

飢え・・・
飢えは幼少児の命を奪うことが多いので、三つの栄養不良の中でも最も悲惨なもの。ここ数年は緩やかだが減少しているのが救い。慢性的に飢餓状態にある人の数は、7億9000万人−発展途上国の5人に1人−で1970年の9億1800万人から減少している。(国連食糧農業機関《FAO》の推計)とはいえ現実の悲惨な状態は楽観できるものではない。インドでは成人の49%、子供の53%が体重不足という調査もある。そしてここでも地域偏重があるのだ。飢えた子供の絶対数の減少が大きいのはアジアで、割合の大幅減少は中南米だが、アフリカでは低体重児の数が2倍に増加している。南アジア、(子供の44%が低体重児、インド、アフガニスタン、バングラデシュは更に上まわる)サブサハラ《サハラ砂漠以南》(ソマリア、エチオピア、ニジェール等の国々では50%に近い)のかかえる飢餓人口は深刻だ。

過食・・・

“過食人口”は増加の一途をたどっている(WHO)。
太りすぎと肥満は、体格指数[BMI−Body Mass Index]で判定される。
『BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)』

(*自分の身長・体重を入力すると瞬時に計算してくれる→ http://lt.qupa.com/sp/bm )

指数が19〜24までが健康的とされ、25以上は“太りすぎ”で心臓疾患、糖尿病、ガン等の疾病のリスクが大とされ、30以上は“肥満”で疾病リスクが更に増す。18以下は“痩せすぎ”で別の障害がある。
成人の55%はBMIが25以上あるというアメリカが過食人口の多さでは群を抜いている。成人に占める肥満者の割合は23%、子供の5人に1人は太りすぎか肥満である。過去20年で50%増加した。ヨーロッパでもこの傾向は同じで、英国では過去10年間で肥満の割合は倍増して16%になっている。さらにこの傾向は、他の地域でも顕著で、中国では、89年から92年の間に成人の肥満の割合が9%から15%へ増加している。ブラジルは31%、コロンビアは43%と、途上国でも太りすぎの傾向は同じだ。

微量栄養素・・
ビタミン・ミネラルが不足している人々(三つ目の栄養不良)は、部分的に飢餓や過食と重なっている。微量栄養素欠乏は、偏食によって起こる。ライフサイクルの変化、ファーストフードの普及等で、特にヨード、ビタミンA、鉄の摂取不足が世界中で問題になっている。

ヨード
は極微量に摂取される元素で、人間の一生の間に小さじ一杯分のヨードしか必要とされないといわれるが、ヨード欠乏障害は知的発達障害の主因になっている。いま、世界では130カ国の途上国で7億4000万人(世界人口の13%)が影響を受けている。
日本では、海草などから摂っているヨード。たとえば、山岳地の多いボリビアでは、日常の食物から摂ることはできない。ヨード欠乏症を防ぐ最も有効な方法は、毎日使う食塩にヨードを加える(ヨウ化物を添加した食卓塩)こと。この方法だと、費用も1年間に1人あたり6円で済む。現在、世界の食塩の約60%にヨードが添加され、1年間に1200万人の子どもが知能の発達を妨げられずにすんでいるという。
*注:ヨードがたくさん含まれる食品の例 昆布 佃煮 (5-10g)10-20mg
昆布巻き(3-10g) 6-20mg とろろ昆布(5g)9mg

ビタミンA欠乏症は子供の失明を引き起こし、時には死亡さえもする。だが、詳細な統計データがない。

最も一般的に不足している微量栄養素はだ。鉄は全粒穀物、緑葉菜、肉類に多く含まれている。1999年の国連報告は、人類の80%にあたるおおよそ50億人が何らかの鉄欠乏症の状態にあるという。最もひどい鉄欠乏症の20億人(大部分は貧しい国々の女性や子供)には貧血症、認知障害が発症している。

これらの(三つの)栄養不良は、食物摂取パターンの変化が起因していると言える。畜産物の消費量の増大、油脂と砂糖があらゆる食品に添加されるようになって、脂肪と糖分の摂取量が急増している。欧州や北米では脂肪と糖分がカロリー摂取量の半分以上、穀物や野菜のような複合炭水化物はカロリー摂取量の三分の一にとどまっている。さらに、全粒穀物食品の多くは、ビタミン・ミネラルが失われた精製穀物になっている。
ファーストフード食品は、脂肪、糖分、コレステロール、塩分の推奨目標摂取量の一日分を一回の食事で越えてしまうようだ。

飢餓と過食の環境を考えてみる。

飢餓・・・
飢餓が栄養不良の最も深刻な形態であることは誰でもが理解している。そしてその原因は、乏しい食糧供給つまり、降雨不足ややせた土壌等による不作と考えがちだ。だが、「地球白書」は“現実には、飢餓は人間の意志決定−特に社会構造に関する決定−の産物である”と断言する。人がどのような生活を確保しているか、女性がどんな地位にいるか、行政が国民に説明責任を果たしているか、それらはその国の農業資源の供給量より、だれが食べ、だれが食べないかということに大きなインパクトを持っているというのだ。

多くの場合、食糧不足より貧困が飢餓の根本的な原因といわれている。貧しい人々は食糧も、食糧を作る土地も、その他の生産財も手に入れることができない。教育機会に恵まれないイコール雇用にも恵まれない、の図式になる。貧困は家庭の栄養摂取の重要な担い手、女性に更に厳しい。世界の食糧生産の半分以上が女性でなされ、アジア農村部では80%におよんでいるとされる。しかし女性には、土地所有権、農業訓練、教育、その他の社会特典を持たされない。又、途上国では自分の所得のほとんどを家計の食費等に費やしているが、男性は自分の所得の相当な部分を飲酒やその他の非家計出費に使ってる。女性は貧困の中で、飢えた子供をかかえ、子供に関わることも十分に出来ず、飢餓が世代を超え永続化する。女性を貧困の中に置いている社会には栄養不良はなくならない。政策の選択に関しては、土地その他の資源の不公平は分配、税制、その他様々な不公平があるが、他の機会で考えよう。

飢餓を発生させたり、悪化するものに紛争がある。アンゴラ、コソボ・・多くの紛争地域で何百万人の人々が飢餓状態に置かれている。紛争当事者双方が、食糧を武器にして流通経路を断ったり、農地から追い立てたり、作物を破壊したり、雇用を消失させ飢餓を悪化させる。さらに、農業基盤、学校、病院、工場の破壊、戦争の悪影響は紛争終結後も長く続く。1997年以来の紛争で施設された地雷のため、アフガニスタンでは耕作可能地の大半が耕作できない状態にある。また、90年代での中央アフリカの絶え間ない紛争で発生した大量難民によって同地域の飢餓が悪化している。

過食・・
途上国の大半で飢餓が存在している一方で、過食が問題視されている状況だ。
人間は生来、脂肪と糖分の多く含んだ食物への欲求が強いと言われる。それは、動物の生まれながらの食物環境から来ている、つまり遠い過去の、生存に必要な食物が簡単には手に入らなかった狩猟・採集時代にさかのぼる考え方だ。本能的に手にはいるときに少しでもカロリーを摂っておくという習い性。

穀物等の、繊維と複合炭水化物を豊富に含くむ食品は、満腹感をもたらすのに反して、糖分と脂肪に対しては満腹感を持ちにくいメカニズムを持っているといわれる人間の身体構造。そこへ近世、過食を生む種々の環境がでてきた。都市化、所得の向上等の社会的変化、つまり農畜産業の機械化、高収穫量品種の開発等によって、食肉、乳製品、植物油、砂糖等が大量にしかも廉価に供給されるようなった。新しいライフスタイル(食習慣)の変化を加速するもう一つの要因、それは食品産業の台頭がある。ファーストフードの急速な普及がそれの典型だ。
それの本家米国では、摂取する野菜の5分の1はフライドポテトとポテトチップスという報告さえある。
この“食文化”は急速に全世界に浸透している。手軽に安く高カロリー食品を食べ、反面野菜や穀物(炭水化物)等の摂取量はおちていく。

栄養不足と栄養過多、片やビタミン・ミネラル不足で一生の初期段階でたいへんなダメージを与え、後者は、成長に連れ徐々に心臓病、ガン、その他生活習慣病を多くし、共に健康リスクをもたらす。栄養過多の人々にも、微量栄養素(ビタミン・ミネラル)不足が加わって健康リスクは更に大きくなって来た。飢餓と共に不健康な食生活の社会的コストの問題は更に深い考察を要すると思う。

最後に、
“米国人と日本人が5回に1回肉食を減らせば世界の飢えは救われる”
“牛の穀物飼料を5%減らせば計算上、世界の飢えは救われる”
“1kgの食肉を得るのに、穀物7kgを要する”
“幼少期の食習慣は、一生ついてまわる”

シモフリ肉・・・牛は2才で成長が止まる、欧米ではここで出荷するが、日本ではここから(食肉に付加価値を付けるため)穀物飼料を与え続ける。過剰カロリーは、脂肪となって筋肉の中に入り込み、シモフリ肉となる。

“牧草と残飯だけで牧畜をし、穀物は人の口に”で飢餓も栄養不良もなくすことが出来そうだ。

現代人は、様々な代償を払って、《豊かな食生活》を求めている。
飢餓も過食も、英知を持った人類は克服の出来ないはずはない。政策権者は勿論、個人としても食習慣を見直すことで、世界の飢餓、過食(共に健康リスクが重くのしかかる)からの解放への第一歩を記すことが出来るのではないだろうか。
                                                                h.       
  
  地球(環境)問題
 今、私達一人一人になにが
 出来るか〜考えてみましょう。
 
環 境 省

                          参考文献:「地球白書2000-01」
                             地球環境財団/環境文化創造研究所 
                              レスター・R・ブラウン編著;浜中祐徳;監訳

 
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