信頼できる「内職商法」?

■ペンネーム「たまご王子」さんからの投稿です。

 はじめまして。「HTS」を検索してこちらにたどり着きました。
 それというのも、この前、私のところにかかってきた、電話の内容が「実録!勧誘電話」の「トンデモSOHO斡旋会社」と良く似てるんです。
 私は、パソコン関係に疎いので、電話の話を結構納得していたんですが、返事をする前にちょっと調べて見ようと思ったのでした。
 どうやら、私が電話を受けた会社も、ちょっと胡散臭いようですね。
 危ないところでした。ありがとうございました。
 それにしても、あちこち似たような話ばかり聞かされますが、本当に信頼できる会社って、あるんでしょうか…。疲れます。

■あー。えー、たまご王子さん・・・。「信頼できる会社」の「会社」って、「在宅の仕事しませんか、って電話してくる会社」のことですよね? そう、仮定して以下話を進めます。
 断言しましょう。「信頼できる会社なんて無い!」です。
 
 ちょっとくどくなりますが、この際所謂「内職商法」について私の考えるところを書いてみます。たまご王子さん、この場をお借りすることをお許しくださいね。

■まず結論から申せば、「在宅ワークを謳って勧誘する会社の目的は、ワーカーの確保ではなく、教材(もしくはそれに類する商材)の販売にある」と私は考えます。
 
1.「在宅でお仕事をしてみませんか(興味はありませんか)」
 就職活動の経験の有る方、思い出してみて下さい。仕事にありつくためにどんなにアグレッシブに自分を売り込んだか。
 何か特別なコネやツテや世間にとどろくスバラシイ評判でもない限り、会社の方からアナタにコンタクトをとることはありません。
 それに、職安にでも求人を出せば簡単に望む人材が手に入る筈です。ワザワザ高いコスト(テレアポの人件費)を払って不特定多数に電話するなんて普通はしませんよね?
 
2.「安心して仕事を発注できるように、この資格をとって(この教材で勉強して)もらいます」
 でも、既に資格を持っていたり勉強する必要の無かったりする人はお断りなんだそうです。ヘンですよね・・・。
 だいたい、職安にでも求人を出せば簡単に(以下略)
 仕事を外注に出す会社の側にしてみれば、一定のクオリティが維持できるなら単価が安い方が良いに決まっています。コスト(時間も含む)をかけて人材を育成なんかしていていいんでしょうか。
 
3.「わが社の教材(テスト)を使っていない人間は信用できない」
 そんなことを言ったら、「中途採用」や「ヘッドハンティング」なんてものを全否定しなきゃならなくなりますが・・・。
 そもそも、仕事についての細かいノウハウを決定するのは、SOHO斡旋会社じゃありません。だって「斡旋」ですもん。仕事の大元の依頼人である各会社によって、それぞれやり方は変わってくるでしょう。
 自分の会社の求人ならともかく、教材(テスト)にのみ重点をおくのはナンセンス。本当に必要なのは、ワーカーの能力の筈です。
 
4.「わが社に登録するにあたって、登録料数万円をお払い下さい」
 登録するだけにどれだけのコストがかかるというのでしょう。
 仕事の斡旋にあたっての費用ならば、各々の報酬から差し引かれるのがスジでしょうし、万が一仕事が出来なかった場合の保証金なんて言うなら、それは預り金勘定なんでしょうか。
 
5.「月々の収入から、一万数千円の手数料をいただきます」
 #これって、教材のローンを言い換えているだけですが、一応ツッコミ入れときます。
 手数料? 仕事を割り振る為の? ナルホド仕事の斡旋業務に費用がかかりますよね。でもそれが何故定額なんですか?
 各々仕事の受注先や種類、発注方法などによって、費用って違ってきますよね。
 百歩譲って仕事1件いくら、と定額に請求するシステムだとします。でも、月に何件の仕事をするかなんてわかりませんよね。収入の無い月は、勿論手数料はかからない筈ですが?
 
6.「万が一仕事が無かった場合は、既払い金を返金いたします」
 では、仕事が少なかった場合はどうなんでしょうか。
 1回でも仕事をすれば、それが百円の収入しか無くとも返金の対象から外れてしまうってことです。
 
 社会の全てのシステムには必ず、それを構築する理由が存在します。
 上にあげた疑問点から、私には「在宅ワークを謳って勧誘する会社」が「在宅ワークを斡旋する」には不適当な理由で、このシステムを採用しているようにしか思えません。
 
 つまり。ぶっちゃけた話、「在宅ワーカーが本当に欲しい会社なら、こんなことしねーよ」というわけなんですね。はい。
 
 最近は、業者の方も賢くなってきたようで、単純に「教材費」と言うと警戒されてしまうからか、
 「仕事の郵送料や斡旋料を月額で○○円、これはローンじゃありません。信販会社の集金代行システムです」とか
 「ワーカーの管理に業務用のCD ROMを用意するのでその費用が○○円かかります」とか
色々言い方を変えてきているみたいですが、要するに月々の支払いを強要することに変わりはありません。
 
 相手は勧誘のプロです。一見もっともらしい話をもちかけてくるような気がしますが、そもそも「仕事の話が親切に向こうからやってくる」ことはあり得ないと心に刻んでおきましょう。

■では、実際に在宅で仕事をしている人は存在するじゃないか、その人達はどうしているというのだ、と思われるかもしれません。
 
・ある会社に雇用されていて、在宅で仕事をする。
 
 所謂「内職商法」でイメージされる「在宅ワーク」に一番近いのがコレのような気がします。業者も「仕事は必ずあります」とか「月に○○円保証します」とか言っているし。
 
 でも、「在宅ワーカー」特に「SOHO」なんて言う場合は、基本的にフリーランスの個人事業主として仕事をする、と考えるのが普通でしょう。
 そうすると、どうやって仕事を得ることになるのか。
 
・知り合いのツテ等で仕事をまわしてもらう
・自ら営業してまわる
・倍率は高いし機会や条件も厳しいが、求人を探して応募する
 
 毎月仕事があるかどうかなんて、誰も保証してくれません。よほど好きな仕事でない限り、フリーで頑張るのは大変エネルギーの要るものなのです。

■別の側面からも考えてみましょう。仕事を社内で処理せずに外注に出す、ということの意味です。
 
1.専門性の高い仕事をプロにまかす
2.即時性の要求される仕事をプロにまかす
3.変動する仕事量に応じて外注を利用する
 
 要するに、社員では対応できない仕事を委託されることが多いわけです。
 とてもじゃないけれど「育児・家事の方手間に」「空いた時間に」できるものではありません・・・。

■とまあ、落ち着いて考えれば「在宅で空いた時間に仕事しませんか」なんて勧誘がナンセンスなものであることはわかっていただけると思います。
 
 なあに、なんだかんだ偉そうに講釈たれている私ですが、勧誘を最初に受けた時はすごくびっくりしたもんです。
 求人が向こうから電話をかけてくるなんて! しかも私のこと知らない人が! 「初心者でも大丈夫!」って、なんて羽振りの良い業界なんだ! ・・・って(笑) 本当にオイシイ話なら乗ろう、とカモ根性丸出しで電話を受けていました。
 私の場合、たまたま在宅で仕事をするという経験があったので、「やっぱ、おかしいぞ」と、なんとか事なきをえましたが、勧誘の人は本当に口が上手いです。聞いているうちに、なんだかとてもお得な話のような気がしてくるんですよね。
 
 子供が小さい等の理由で家を空けることができない。何か家で出来ないかしら。そんな立場の人間がターゲットになるわけです。
 で、勧誘の第一声は「在宅でお仕事をしませんか?」
 業者の本当の目的は別なのに、それを隠して「お家でお仕事」「収入」と気を引くところが実にアコギで気に入りません。まあ、開口一番「ン十万の教材買いませんか?」じゃ誰も話を聞いてくれないわな、とは思いますが。
 
 お金が余っていてー、勉強するのが趣味でー、という人ならともかく、「何か今の私にできる仕事で少しでも家計の足しに」なんて思って何十万ものローンを組む、というのは切なすぎます・・・。
 この長々しい駄文が、少しでも誰かのお役に立てればいいんですが。

(2002.9.5)

■ここまで読んでも、どうしても自分の契約した会社はまともだと思いたい人、
 外に働きに出られない主婦の為に、市場原理を無視して奉仕して下さる会社があるかもしれない、と夢見てしまう人、
 騙されていても、高額のローンを組んでも、結果として仕事があるならいいんじゃないか、なんて業者の思うツボに嵌ってしまっている人。
 ちょいとここらで内職商法のしくみについて、もう一度良く考えてみませんか。
 
 分析対象は株式会社NMS(日本マーケットソリューション)(旧称ライフプランナー株式会社)。内職商法業界の最老舗です。
 
・悪徳商法と言われる根拠について:
  「ライフプランナーは良い会社なのか」
・売り上げの大半は「教材売り」:
  「ライフプランナーに関する考え方の別サイト投稿からの再掲」
・会社にとっての「お客様」とは?:
  「ライフ・プランナー クライアントは誰?」
 
 会社の目的がアウトソーシング業で無い以上、契約者が支払ったお金に見合う仕事にありつける可能性は無いに等しい、と言えるでしょう。
 これでもまだ納得できない人は、現役在宅ワーカーさんに喝!を入れてもらいましょう。
→きゃぽさんによる「在宅でPCを使った仕事がしたい」という人のためのページ
  「Signpost−Digital職人への道しるべ−」

(2003.7.21)

■内職商法の仕組みはわかった。どうやら収入は期待できないらしい。
 でも、私はまだ試験に合格しておらず、仕事を貰う段階まで達していない。
 条件をクリヤして、実際に仕事の量が約束と違う、とならないと騙されたと言えないのではないか。
 
 そんなことはありません。
 例えるなら、「地震特約付きの火災保険に入ったつもりだったが、営業のお姉さんが付けると言っていた地震特約はどうも契約書に無い。実際に保険金がおりるかどうかはっきりわかるのは、地震に遭ってからなので、それまでは騙されたとは言えないのではないか」というカンジですね。
 ね、ヘンでしょう? 
 
 契約解除は、早ければ早いほど苦労も少なくて済みます。それに、業者が倒産してしまったら、交渉できるものもできなくなってしまいます。
「そうか、最初っから騙されていたんだ!」と気がついたならば、即行動あるのみ。「解約したい「内職商法」!」に大雑把な契約解除の流れを書いておきましたので、参照してくださいね。

(2004.1.15)