これまでの話題(2001年1月〜6月)

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「株主重視か従業員重視か」

(2001年2月20日(火)更新)


日米の株価下落の影響もあってか、一頃のように「株主重視」を叫ぶ声も元気がなくなったかのように思います。そうすると今度は、また従業員重視とか従業員主権とかいう論調が勢いを増してきているようです。

昨年の暮れに出版された「日本型コーポレートガバナンス」などがその典型です。著者は一橋大学教授の伊丹敬之氏ですが、「人本主義」で名前を売った 人だけに、かっての劣勢を挽回しようという意気込みがありありです(失礼)。

さて、早速本題に入りますが、asktakaはこうした「株主重視経営」か「従業員重視経営」かといった形で、両者を対立概念でとらえることは間違っていると思います。

というのは、株主重視と従業員重視ではマネジメントのレベルが違うからです。つまり、全社戦略を考えた場合、事業ポートフォリオを考えて、例えば株式の時価で評価した企業価値を最大化するといった行動をとることになるでしょう。この場合、企業は株主重視の立場をとっているといえましょう。

しかし、こうした企業でも各事業部門の事業戦略となると、経営資源の重要な要素である従業員を重視した経営を行っているわけです。米国企業の間で定着しているエンパワーメントやチームなどは、こうした従業員重視の現れといえるでしょう。

このように、企業にとって株主も従業員もともに重視すべきなのです。だが、会社は誰のものかという話になると、商法の規定からも明らかなように株主のものですから、全社的には株主を重視する。そしてそのような企業統治が行われるような仕組みを作ることは当然です。だからといって、従業員を軽視するのではなく、従業員のやる気、意欲を引き出し、能力を生かしていかなければ 業績は上がりません。

どうも株主重視か従業員重視かという議論には、このへんの混乱があるように思います。この原因は、そもそも日本企業に全社戦略と事業戦略の区別があいまいだからではないでしょうか。asktakaは最初に述べたように、全社戦略vs.事業戦略といった対立概念として捉えずに、マネジメントのヒエラルキーとして捉えて両者を重視することは何ら矛盾することではないと思います。

こうした視点でみると、株主重視vs.従業員重視といった日本型コーポレートガバナンス論は不毛ですね。それよりも、asktakaは日本企業の戦略不在と変革の遅さ、この点を議論した方がよほど果実を生むことになると思います。皆さんはどうお考えですか?。



お知らせ:前回の話題は「パリのビジネス雑感」 でした。



2001年2月15日(木)〜16日(金)

「パリのビジネス雑感」


《ご挨拶》

1999年10月からほぼ毎日更新していた「今日の話題」 は、今回で最終回とさせていただきます。長い間ご愛読いただき有難 うございました。来週より「ビジネス四方山話」(予定)と名前を変えて再デ ビューし、週2、3回のペースで随時更新する予定です。今後とも相 変わらぬご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

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パリから帰国して早1ヵ月になりました。帰りの機中で「今日の話題」 用に認めた原稿が残っていますので、先ずはパリの話からはじめたいと 思います。

フランスは何といっても農業国です。パリから少し離れて郊外に出 ると、川と田園が広がっています。そういえばワインは農産物であ るし、産業連関表のアイデアの源泉となった「経済表」の著者ケネー は、重農主義者で知られています。

また、経済学者として思い浮かぶのは、このケネーと一般均衡理論 のワルラス、そして現代ではノーベル賞を受賞したケネス・アロー です。ワルラスやアローのロジカルでエレガントな学風と重農主義 の風土、これは一見ミスマッチのようにも思えます。でもasktaka には、このミスマッチこそフランスのビジネスに脈々と流れている 伝統のように思うのです。

つまり、フランス、とりわけパリのビジネスの話は、文化と歴史、 ブランドを抜きにすることは出来ません。そうです、パリは“ブラ ンド”の街なのです。ここでasktakaは、“ブランド”を次のよう に考えています。

1.オリジナリティがある
2.商品、サービスなどにエクセレンシー、卓越性がある
3.上記によって時間軸を超えた無形の価値をもつ

上記は、最近のブランド論とはやや趣は異なるかもしれませんが、 asktakaは直感的にはこの3点が“ブランド”には重要だと思います。

パリの街は文化的にもファッションでもこうした“ブランド”が溢 れています。もちろんパリの街にも生活必需品を買う普通のスーパ ーもあることは確かですが、日本に進出したカルフールや街中にある モン・プリなども、こうした“ブランド”の特性を持っているように 思えるから不思議です。

一方、ワイン、チーズなどの農業、畜産といった伝統的な1次産業 もファッション・ブランドと並んでフランス経済に貢献しています。 むしろ、こうした伝統産業がしっかり根付いているからこそ、フラ ンスのブランド・ビジネスが生きてくるのだと思います。

asktakaは、日本の伝統産業が元気で、それと同時に先端産業に属する 新興企業や老舗企業を含むブランド企業がダイナミックな活動を続ける、 こうした日本の姿を思い浮かべています。伝統的なT企業、あるいは 先端企業にお勤めの皆さん、今後の日本経済の行方はあなた方の双肩に かかっていることは確かです。皆さんのご健闘とご多幸をお祈りして、 「今日の話題」の最終回を締めたいと思います。



お知らせ:前回(1/12-13)の話題は「2001年の憂鬱を超えて」でした。



2001年1月12日(金)〜13日(土)

「2001年の憂鬱を超えて」


皆さん、お久しぶりです。本年もよろしくお願い申し上げます。今年最初の「今日の話題」をパリ行きの機内で書いています。12月から年末年始の公私にわたるドタバタで、公約(?)通りパリからの発信になります。

さて、今日の話題は、オフハンドで思いつくままに“雑感”を述べたいと思います。題して“2001年の憂鬱を超えて”です。今日は、最近の“円安”“株安”“物価安”の3つの“安”を話題にしたいと思います。肩の力を抜いて、ファイト!さんの「雑感」にあやかりたい、と思うわけです(笑)。

先ず、日本でフランに換えようと思って某都市銀行の自動為替両替機にいって驚いたのは、いつのまにか対フランで円安になっていた点です。1、2ヶ月前は、1フラン15円前後で、対ドルでは円安傾向でしたが、まだ対EU諸国通貨では顕著な円安ではありませんでした。

ところが、11日に500フランのパックを両替したところ、1万円でおつりが260円でした。以前は1,500円程度のお釣りくるものと想定していたのですが、暫く為替のチェックをしなかったら随分円安が進んだものですね。

90年前後や95年頃の1ドル80円台の円高メリットを享有したasktakaにとっては、海外滞在中の円安傾向は何ともアンラッキーな思いがしますね。ただ、こうした円安はasktaka個人としては“憂鬱”でも、輸出に好影響が及ぶことが考えれば、まぁ良しとすべきですね。

次に、世の中では株安で、実業界や政界などが騒いでいるようです。これも、あれよあれよいう間に、日経平均が1万3千円台にまで下落しました。日経平均は米国の株価と連動している上に、金融機関の3月決算対策として株式持合いを解消して、時価の低い株を売りに出していることも影響しているようです。

株価は企業収益と相関があるので、こうした株安は株式投資家ならずとも、何とも“憂鬱”な思いがします。民間投資と消費支出主導の本格的な景気回復が期待されているのですが、こうした株安を見るとどうも一抹の不安を禁じえませんね。

最後に物価安です。90年代後半の日本経済の特徴の一つは、価格破壊の波を受けて物価安になり実質消費支出が伸び悩んだ点にあると思います。この影響は、特に小売業界において強く、百貨店や量販店(総合スーパー)が軒並み対前年の売上を割っているのも、量と価格の掛け算のうち後者の下落が効いている点を見逃せません。

こうした物価安は消費者の懐から見ると、実質的な可処分所得を増加させるので、プラスの効果も期待できるのですが、何せ先行きが見えない点が効果を相殺しています。

一方、物価安は、一層の低価格化に対応できない、つまり、ビジネスシステムやコスト構造を変革できない企業に退出を促します。外資流通の日本上陸の極めつけとして、来年にも米国のウォルマートが日本進出する予定です。asktakaには、こうした環境下こそ、日本の流通業界の新旧交代や新たなビジネスチャンスが生じる好機だと考えるのですがね。

このように憂鬱な話題も多い今日この頃です。だが、こうした問題も、考えようによっては、企業が大きく変身する契機を与えると考えるべきではないでしょうか。2001年は21世紀の最初の年として、皆さんの会社に新たな歴史を加える年になることを祈っています。

ということで、暫く「話題」から遠ざかっていたせいか本調子ではないですが、ぼちぼち通常のペースに戻したいと思います。先ずは、パリ滞在中は『パリからの話題』を「今日の話題」特別号としてアップしたいと考えています。ではまた。



お知らせ:前回(00年12月27-28日)の話題は「2001年の飲食業界を考える」 でした。



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