わんだふる スイスアルプス (2)

  1.私にとってのスイスアルプス
  2.膨れ上がるスイスアルプス
  3.いよいよ出発 : 8月5日(土)
  4.あこがれのスイス(チューリッヒ)到着 : 8月5日(土)
  5.氷河特急に乗ってツェルマットへ : 8月6日(日)
  6.ヴァリスの山々 : 8月7日(月)     
  7.エッシネン湖経由でグリンデルワルトへ : 8月8日(火)     
  8.ベルナーオーバーランドの山々(1) : 8月9日(水)  
  9.ベルナーオーバーランドの山々(2) : 8月10日(木)  
 10.さよならスイスアルプス : 8月11日(金)  
 11.我に帰って : 8月12日(土)  
                                               
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6.ヴァリスの山々 : 8月7日(月)

 朝の5時ころ、家内が窓から山が見えると言って、私を起こした。今日は曇り空かなと考えていたので、半信半疑で起き上がり、ヴェランダへ出てみると、まだ薄ぐらい空の中、右前方に、あのマッターホルン(Matterhorn)の真っ白なピラミッド姿が浮かび上がっていた。ホテルの部屋からマッターホルンが見えるとは聞いていたが、ヴェランダから写真でしか見ていなかった、神々しいピラミッド姿の山を見て、しびれてしまった。しばらくすると、太陽に光が当たり始め、紫色を帯び始めてくる。家内とうっとりとその姿に見とれてしまった。スイスアルプスに来てよかったー!!
 ホテルでの朝食後、私と家内、それにMさん母娘のお二人と、計4人でホテルを出発し、近くのヘリポートに向かった。ヘリコプター遊覧は約20分で、1人14,000円くらいである。支払を済ませて、外で待っていると、赤いヘリコプターが飛んできた。ブルルンとうるさく回る羽根の下をくぐって搭乗する。空は雲ひとつない快晴である。
 フワァーと浮き上がると、ぐんぐん上昇し始める。そして、急に白い山が目の前に見えてきたと思っているうちに、ぐんぐんとチナールロートホルン(Zinalrotohorn(4221m))の氷河の先端に近づき、氷河の上をすれすれに飛んでいく。大きく割れたクレパスがよく見える。氷河の上をさらに上昇すると、チナールロートホルンが目の間に迫ったかと思う間に、今度は360度のパノラマの展望である。どれがどの山かはほとんど分からないが、4000m級の山々がぐるりと見わたせる。でも、マッターホルン(Matterhorn(4478m))だけはすぐに分かった。皆、ワーッと声をあげてしまった。朝ヴェランダから見えたあのピラミッドが大きくそびえているではないか。もう言葉には言い表せない。

ヘリコプター Zinalrothorn(4221m) Matterhorn(4478m)

 今度は、ヘリコプターは南に方向を変えて、マッターホルンに向かって行く。右前方には、オーバー・ガーベルホルン(OberGabelhorn (4063m))、ダン・ブランシュ(DentBlanche(4357m))が見え、左前方には、クライン・マッターホルン(Kl.Matterhorn(3883m))、ブライト・ホルン(Breithorn(4164m)からモンテ・ローザ(MonteRosa(4634m))へ連なる真っ白な山々が見える。さらに後方には、先ほどのチナールロートホルン、ヴァイスホルン(Weisshorn(4505m))、それにミシャベル(Miscabel)山群までが見渡せる。ヘリコプターはさらにマッターホルンに近づき、北壁に衝突するほどに近づいたかと思うと、今度は一転上昇し、マッターホルンの頂上付近まで上がり、その回りをぐるーっと回ってくれた。私がその時どんな気持ちであったかは、おわかりになっていただけるのではないだろうか。興奮して、「すごい、すごい」というばかりであった。(山頂には白く光る十字架も見ることができたが、写真では分からない)。

 The Top of Matterhorn(Up)

The North Wall of Matterhorn
                         
(Left)
 The South side of Kl.Matterhorn
         and 
Breithorn



 ヘリコプターはクライン・マッターホルンとブライトホルンの氷雪に覆われた南斜面を通り、ポリュックス(Pollux(4091m))、カストール(Castor(4228m))を左に見て、リスカム(Liskamm(4527m))ヘ向かうクライン・マッターホルン付近は、ロープウェーなどを乗り継いで登ることができ、スキーヤーの姿も見ることができた。もちろん、時間があれば、私も滑降してみたいものであるが、残念。今回は諦めよう(これが最後かも?)。また、天気がよいためか、ブライトホルンに向かって蟻のように1列に歩いている登山者が多く見えた。このくらい好天気に恵まれれば、私にも登れるかもしれないなどという気持ちが湧き上がってくる。でも、これも諦めざるを得ない。マッターホルンの山頂を目の前に見ることができたのだから、諦めよう。残念、残念。

 続いて、ヘリコプターは、リスカムの手前の鞍部で北に旋回し、ゴルナーグラート(Gornergrat)からスネガ(Sunnegga)方面に向かう。眼下には、モンテ・ローザ(MonteRosa(4634m))から流れるグレンツ氷河(GrenzGletscher)、ゴルナー氷河(GornerGretscher)が広がっている。もう、なんと言おうか。これこそ’スイスアルプス’である。日本で比較すべきものは何もないではないか。「わんだふる!わんだふる!!」。最後は、オーバー・ロートホルン(OberRothorn(3415m))を右に見て、左へ旋回し、元のヘリポートに着いた。搭乗した4人は、しばらく興奮気味であったことは言うまでもない。
The North Side of Breithorn(4164m)

 
午前は自由行動であり、集合時間のお昼までは時間がたっぷりとあったので、Mさん母娘のお二人と一緒にスネガ(Sunnegga)まで行くことにした。ヘリポートから川沿いにおよそ10分ほど行くと、スネガへ行く登山電車の駅に着いた。この登山電車は、山の斜面に掘ったトンネルを通って、上まで上がる電車である。日本の大町から黒部・立山への登山電車は、これをまねたものだと聞いたが、私は行ったことがないので分からない。1622mのツェルマットから2228mのスネガまで一気に登ってしまった。

 駅から一歩踏み出すと、そこはまた、あっと驚く360度の大展望である。雲はほとんどない。左から、ゴルナーグラート(今日宿泊する山頂ホテルが見える)、ブライトホルン、クライン・マッターホルン、それに先ほど山頂を見たばかりのマッターホルンの美しい姿が見える。さらに右に眼を向けると、オーバー・ガーベルホルン、チナールロートホルン、ヴァイスホルンと続いている。少し周りを散歩してから、レストランに入った(もちろん室内ではなく、屋外のテラスである)。そのテラスのいすに座り、コーヒーを飲みながら、マッターホルンをたっぷりと味わうことができた。日本で言えば、美ヶ原から槍ヶ岳が眼前に見えるといった感じであるが、ありえない話しである。いやー、何と幸せのことかと思う。

 爽快な気持ちで、再び登山電車に乗って、ツェルマットへ下り、皆と食事をした。午前の自由行動では、ヘリコプター組以外の人たちはスネガか、あるいはクライン・マッターホルンヘ行っている。皆それぞれ、すばらしかった景色や体験を話し合って、満足感に満ち溢れているようだった。
 午後は、ゴルナーグラート(Gornergrat)への登山電車に乗り、ローテンボーデン(Rotenboden(2815m))で降り、そこからリッフェルベルク(Riffelberg)までのハイキングである。ツェルマットの駅前に、登山電車の駅がある。登山電車は、最初は山沿いに登って行くが、森林限界を過ぎると急に展望が開け、白い山々が見え始める。ローテンボーデンに降り立つと、スネガからはよく見えなかった、ヨーロッパ第2の高峰モンテ・ローザ(MonteRosa(4634m))とリスカム(Liskamm(4527m))の氷雪に覆われた真っ白な姿がが大きく見えた。さらにその右には、カストール(Castor(4228m))、ポリュックス(Pollux(4091m))、ブライトホルン(Breithorn(4164m))と続き、最右翼にあのマッターホルンがそびえている。眼下には、ヘリコプターからも見えた、大きなゴルナー氷河(GornerGletscher)が展開していた。「すごい、すごい」の連発である。

Monterosa(4634m)
        Liskamm(4257m)
Castor(4228m)Pollux(4091m)
       Breithorn(4164m)
Matterhorn(4478m) &
                    RiffelSee

 ここからは、ゆっくり歩いておよそ1時間の下り道である。ローテンボーデンを少し下ると、’逆さマッターホルン’で有名なリュッフェルゼー(RiffelSee)がる。我々のときは、雲がかかってしまっていたが、池に逆さに映るマッターホルンを見ることができた。なんと幸運なことだろう。私のホームページの写真は、’山中湖の逆さ富士’であり、これも美しい風景ではあるが、真っ白なピラミッド姿のマッターホルンが、高山の小さな池に静かに映る姿は、これまたなんとも言えない風景である。リュッフェルゼーを少し下ると、また静かな池が現れる。ここでは、モンテローザとリスカムが湖面にきれいに映し出されていた。またまた感激。ここからリッフェルベルクまでは草原となり、あちこちに可憐な花が咲いている。マッターホルンを正面に見ながらのハイキングは、最高に贅沢なハイキングであった。

リュッフェルベルクに着いたのは5時頃か。駅前にはきれいなレストラン兼ホテルがあった。ここで再び登山電車に乗って、ゴルナーグラートへ向かう。終着駅を降りると、すぐ上の山頂(3135m)には、お城かと思うような立派なホテル(設備としては、トイレ(もちろん水洗)とシャワー(もちろんお湯が出る)が共同使用であるという以外は、通常ホテルとまったく同じであった)が建っていた。今日はここで宿泊する。
  Rifferberg(2582m)   Gornergrat(3135m)

 チェックイン後、展望台に行ってみた。モンテローザからブライトホルンの間だの真っ白な山並みがとても美しい。マッターホルンもくっきりと見える。北側には、朝に行ったスネガやウンターロートホルン(Unterrotohorn(3105m))、オーバーロートホルン(Oberrothorn(3415m))の山並みが見える。東に眼を向けると、ストックホルン(Stockhorn(3532m))が見え、ロープウェー(稼動はしていなかった)が山頂近くまで結ばれている。日中は日差しもあり、暖かかったが、3000mの山頂ということもあって、夕方になると戸外は冷え込んでくる。夕日に輝く山々をたっぷりと堪能して、ホテルへ戻った。明日の晴天を期待しよう。虫がよすぎるかなと思いつつも。
 (なお、私は、軽い高山病にかかったようで、夕食をすべて食べることができず、早めに寝る羽目になってしまった。日本の3000m級の山は何度も登っているのに、どうしたことだろう。長旅の疲れか、それとも寄る年波のせいだろうか。他に、2人の女性が高山病にかかり、ホテルに着くなりダウンしてしまった。スイスアルプスへこれから行く人は、注意をしていただきたい)。


                                                                                                                2000.09.03 完了

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