わんだふる スイスアルプス (4)

  1.私にとってのスイスアルプス
  2.膨れ上がるスイスアルプス
  3.いよいよ出発 : 8月5日(土)
  4.あこがれのスイス(チューリッヒ)到着 : 8月5日(土)
  5.氷河特急に乗ってツェルマットへ : 8月6日(日)
  6.ヴァリスの山々 : 8月7日(月) 
  
7.エッシネン湖経由でグリンデルワルトへ : 8月8日(火) 
  8.ベルナーオーバーランドの山々(1) : 8月9日(水)  
  9.ベルナーオーバーランドの山々(2) : 8月10日(木)     
 10.さよならスイスアルプス : 8月11日(金)  
 11.我に帰って : 8月12日(土)  
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8.ベルナーオーバーランドの山々(1) : 8月9日(水)

 昨夜は、眠り始めの頃雨が降り始めたように思ったが、すぐにぐっすりと眠りについたようだ。4時ころ目が覚めたので、カーテンを開けてヴェランダへ出てみると、眼前に、アイガー(Eiger(3970m))の黒い大きな岩壁が薄明かりの空に浮かび上がっているのが見えた。岩壁には、3ヵ所小さな明かりが見える。(後で聞いたところによると、昨夜は烈しく雨が降ったとのことである。私は雨が降ったのは記憶にあるが、それ以外はまったく知らなかった。)

もう一眠りするために、再びベッドに入り、うとうととしていると、いつものように家内に呼び起こされた。「山頂が明るく輝いているよ!」という声を聞いてベッドから飛び起きる。ヴェランダに出てみると、目の前に大きなアイガーがそびえており、昨日は見えなかった山頂が、少し赤味を帯びて、真っ白に輝いているではないか。昨日見た垂直の壁は、北壁そのものではなく、アイガーから北東に延びる稜線の先端にある絶壁であることがわかった。徐々に白さが増し、最後は真っ白な大きな山容が、眼前に横たわっていた。アイガーの左には、遠くにフィッシャーホルン(Fiescherhorn(4049m))のピークまでが望める。うーん、またもや表現のしようがない展望である。それも、朝起きたホテルのヴェランダからの眺めである。それに、今日も快晴である。ラッキーこの上なし。今日もベルナーオーバーランドの山々をたっぷりと楽しめると思うと、わくわくし、元気が湧いてくる。
Eiger(Right) (3970m)

 朝食後は、いよいよメンリッヒェン (Mannlichen (2222m)) からクライネシャイデック(Kleine Scheidegg(2061m))までのハイキングとユングフラウヨッホ(Jungfraujoch(3454m))への登山(登山電車による)である。グリンデルワルトの駅に着くと、駅前はすでにハイカーで混雑していた。電車が到着すると、線路を横切って、電車に乗る(プラットホームはない)。次の駅グルント(Grund(924m))で降り、ロープウェーの駅まで5分ほど急いで歩く。昨日のエッシネン湖のリフトが混雑していたので、グルントのロープウェー駅も混雑し、長い行列があるのではないかと予想していたが、人が少なく、すぐに乗ることができた。やはり、せかせかとするのは日本人だけで、まわりはなんとなくのんびりした感じである。ロープウェーは、標高924mのグルントから、中継駅ホレンスタイン (Holenstein (1529m))を経て、メンリッヒェン(2222m)まで、およそ30分である。ヨーロッパで一番長いロープウェーとのことである。ロープウェーからグリンデルワルトの高原を見下ろすと、アイガーの白と黒の岩峰を背景とし、広々とした緑の牧草地が広がり、家々が点々と見える。これこそ、あのスイスの牧歌的なイメージそのものである。写真が現実に変わったような気持ちである。

Grinderwalt &   
    Lauberhorn(2472m)
Wetterhorn(3701m) & 
 Schreckhorn(4076m)
Eiger(3970m) &Monch(4099m)


 終点メンリッヒェン駅でロープウェーを降り、外へ出てみると、まわりは草原で、360度のパノラマである。今来たロープウェー方面を見ると、グリンデルワルトの緑の高原が広がっており、はるか向こうには、ヴェッターホルン(Wetterhorn(3701m))やシュレックホルン (Schrechorn(4076m))までが見渡せる。。一方、ロープウェーの反対側は、ラウターブルンネン(Lauterbrunnen)の谷を見下ろし、その向こうに、明日行くはずであるミュレーン(Murren)、シルトホルン(Schilthorn)等が見える。南に目を向けると、アイガー、メンヒ、ユングフラウのベルナー・オーバーランド3山が真正面に展開している。ここから、クライネシャイデックに向けて、およそ2時間のハイキングである。ベルナーオーバーランド3山を正面に見ながらのハイキングは本当にすばらしい。道は広く、整備されており、たいへん歩きやすい。子供を連れた家族や老夫婦、若いグループなど多くの人々が、草原に咲く花々を見たり、牛と写真を撮ったり、岩に腰掛けて休憩したりと、思い思いのスタイル、ペースで歩いている。日本なら、霧が峰か美ヶ原の高原を、雪に覆われた槍・穂高連峰を間近に見ながら歩くようなものだろうが、残念ながら一般のハイカーが、近くに3000mを超える山々を見ながら、草原を歩くといったところはない。また、東海自然歩道も時々歩くが、整備も悪く、とても子供や老人がゆったりと歩けるとは思われない道によく出会う。日本では、最近は中高年の登山者は多く見かけるが、若いカップルや家族連れのハイカーが少ないように思われる。なんとか、日本も観光のあり方を見直し、ゆっくりと自然とのふれあいができるよう、インフラ整備を進めてほしいものである。スイスとは考え方がどうも違うような感じがする。

 ハイキングの途中からは、道の左側(東側)はなだらかな牧草地、右側(西側)はなだらかな岩山となる。道の両側には、黄、白、紫、赤、青などの花々がたくさん咲いている。名前は教わるのだが、ほとんど覚えることができない。ただアルペンローゼだけは、サツキに似ており、赤い花をつけていたので覚えることができた。
<- Monch(4099m) & Jungfrau(4158m)

 最後の小高い丘を右に回り込むように行くと、眼下に美しいクライネシャイデック(Kleine Scheidegg(2061m))が見えてきた。駅前は広々としており、スイスらしいホテルや、土産物店もある。店の前では、4mくらいはあるかと思われる、あの長ーいアルプスホルンを奏でており、美しい音色をあたりに響かせていた。たくさんのパラソルがあり、多くのハイカーが、大きなアイガーの北壁をはじめ、メンヒ、ユングフラウの山々を仰ぎ見ながら休憩している。我々も、早速コーラとアイスクリームを買って、一休みとした。

 もう’すばらしい’という言葉は使い過ぎてしまったので、他の言葉を捜さねばならない。お金では買えない’贅沢’な風景を満喫しているとでも言おうか。できたら一人占めにして、自分だけの景色にしてしまいたいほどである。いや、もう言葉で表すのは、日本の旅行パンフレットに任せて、私はやめよう。


Jungfrau(4158m) & Lauterbrunnen-Breithorn(3782m) Eiger & Kleine Scheidegg

 しばらくの休憩後、今日のハイライト、ユングフラウヨッホ(Jungfraujoch(3454m))、Top of Europeへ向けて登山電車に乗る。登山電車はゆっくりと動き始め、アイガーの壁に向かって徐々に高度を上げていく。途中のアイガーグレッチャー駅(Eigergletscher(2320m))からいよいよアイガーのどてっ腹をくりぬいたトンネルに入る。なんとも気味が悪い。30分以上乗っただろうか、トンネルの途中駅アイガーワンド (Eigerwand(2866m))に着いた。登山電車はここで5分くらい停車するので、乗客は皆降りて、アイガーの岩壁に開けられた窓(ガラス張り)から外の景色を見ることができるようになっている。もうひとつの途中駅アイスメール(Eismeer(3160m))でも、一時停車し、やはり窓から外を見ることができる。下は緑の牧草地が見渡せ、左右は雪に覆われた岩峰と氷河の落ち込みが見える。位置がよく分からないので、どれが何やらさっぱりわからないのだが、とにかくすさまじい様相である。実際、カメラのシャッターを切ったが、どこから何を取ったかがよく分からない。

Eiger Gletscher from
Window of Tunnel
Jungfrau Firn (Up)       
    Top of Europe ->
Ice Palace
(Top of Europe)


 ユングフラウヨッホ駅を降りると、迷路のようになっており、どちらに何があるのかよく分からない。まずは、レストランへ連れていかれ、ランチを食べた。食後は自由行動である。最初に展望台へ行ってみる。目の前にユングフラウ(Jungfrau(4158m))が大きく見えた。グリンデルワルトの反対側には、大氷河ユングフラウ・フィルン(Jungfrau Firn)が壮大な景観を見せてくれる。展望台を降り、雪上に出ると、多くのスキーヤーがいた。自分も滑りたいが、時間がない。大氷河も滑り台のように見え、スキーで下れたら最高とは思うが、クレパスが大きく口を開けていることだろう。ムリムリ!
 この後、氷河の中に作られたという’アイスパレス(Ice Palace)’へ入ってみた。氷のトンネルが迷路のように作られており、床は青い氷で、滑りやすいた。ゆっくりとすり足で歩いていく。トンネルのあちこちに氷の彫像が彫られている。まあこんな所に氷の彫像を作ってみてもとは思うが、なかなかよくできてはいる。ついつい見とれてしまった。
 ユングフラウヨッホからの下りは、アイガーグレッチャー駅以外はノンストップでクライネシャイデックまで行く。そこで、グリンデルワルト行きの電車に乗り換え、アイガー北壁の直下を下り、牧草地を通って、ユングフラウに着いた。今日のすばらしい一日を思い出しながら、ホテルへ向かった。明日もきっと楽しい山歩きができることだろう。

 ホテルに着いてからも、夕食までに少し時間があったので、街中へ散歩に出た。まだ、東にはヴェッターホルンの大きな岩山が輝いている。西には今日一日楽しんだアイガーが、雲の帽子を頂上に乗せて、夕日に染まって赤く見える。南の方向には、岩壁の間から、遠くにシュレックホルンとフィッシャーホルンが輝いて見え、大きなグリンデルワルト氷河(Grinderward Gletscher)がこちらに攻めてくるようだ。またまた、ここで住んでみたいものだと、適わぬことを考えてしまった。

 スーパーなどでショッピングをした後、ホテルへ戻った。明日は最後の一日である。思いっきり楽しまなくては。

  ようやく、グリンデルワルトの一日が終わりました。
  この次は、いよいよ最後のシルトホルンとフィルストのベルナーオーバーランド(2)となります。ご期待ください。


                                                                                                                2000.09.17

                                               
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