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Talking about WINE by T.Yone, the fake-chef

偽シェフヨネのワイン漫談


第11回「ワインの保存」| 第12回「ワインのグラス」| 第13回「ついに難問登場か」
第14回「ラベルを読もう」| 第15回「生産地呼称」


偽シェフヨネのワイン漫談 第11回「ワインの保存」

このへんでもう一度「味」についてお話しましょう。あっちこっちにとんですんません。ついレストランの話題をやってしまいましたが、やっぱり高級フランスレストランの敷居は高いですよね。

コルク栓をされたワインは涼しいところに寝かせて保存されます。その間にコルクを通して外気と接し熟成していきます。つまりごくごく少しずつ酸化していくわけです。この程度が「飲み頃」を決めます。例のシャトーマルゴーでは1993年以降のものはまだ飲み頃に達していません。熟成に時間がかかるということです。ボルドーの赤はとくに時間がかかります。

ということを書くと「またか」とうんざりですね。でも「生産地ごとの飲み頃」なんかを記憶するのはやめにします。これはガイドブックにまかせましょう。

さて、長い間ビンにとじこめられているうちに保存が悪かったりコルクにトラブルがあったりするとワインは死んでしまいます(注9)。冗談で「酢になる(=ワインビネガーからの発想)」などと言っていますが、とうてい飲めないものになってしまいます。そのチェックがレストランの儀式なのです。ワインを立てて保存しているとコルクが極度に乾燥して中身が変質する原因になります(注10)。くれぐれもお気を付けください。買う時にもご注意を。

異常に酸っぱい場合や透明感がなくなって濁っている場合は×です。ワイン通になったあなたならきっとわかります、ご心配なきよう。

(C)T.YONE 1997

(注9)何よりも、直射日光はいけません。それから振動もだめです。大きい温度変化も大敵です。しかしながら、巷で売っている20本入りぐらいのワインセラーでは、短期的な保管は大丈夫でも、10年以上に渡る熟成保存はダメなんだそうです。「可愛い娘の生まれた年のワインを買って、二十歳になったら開けるんだ!」というロマンを達成するためには地下室か別棟のワイン蔵が必要なのでしょうか? とにかく、長期熟成保存と、飲み頃のワインをとりあえず保管するレベルとでは大きな差があるようです。ちなみに、私が周囲に聞き回ったところでは、保管場所は「押し入れ」(そんなに湿度の高い押し入れなのか?)「冷蔵庫の野菜保管庫」(頻繁に開閉すると温度変化が大きい)「玄関の靴入れ」(匂いが心配)でした。どれも「?」ですが、少なくとも横に寝かせていることだけは守っているみたいですね。

(注10)ワインを立てたためにコルクが乾燥するのは、かなり短い期間で起こります。ワインの変質までいかなくても、コルクを抜くのに多くの困難が伴います。最悪はコルクを破壊してビンの中に押し込み、ワインを漉すはめになってしまいます(はい、やったことがあります)。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第12回「ワインのグラス」

さて散漫になってきました。でもあなたを惑わそうとしているわけではありませんよ。ここでワインに必須のグラスについて話をします。別にバカラでなければならぬとは言いませんからご安心を。

よくサントリーやメルシャンのワインを買うとグラスがついてきます。ワイングラスはこのタイプのものが適していると思って下さい。すなわちチューリップのカタチをしたものです。大きさはいろいろです。そして必ず足がついています。
これは次の理由によります。カクテルグラスのように上で拡がっているものはワインの香りを逃がしてしまいます。ワイン用のものは上端で少し狭まっているため香りをキープできます。また足は特に冷やしたワインの場合、体温で暖まるのを防ぎます。だから足の部分を持って飲んでくださいね。どちらの要件も満たしていない湯呑みは落第です。
余談ですが、シャンパンがよくシャーベットグラスのような平べったいものに入って出てきますが、炭酸を逃がしやすいため、細身のビールグラスの背の高いようなフルートグラスで飲みます。シャーベットグラスって誰が流行らせたんでしょうね。
なお、産地によってグラスの大きさ・形が違っています。お金と収容スペースに余裕のある人はガイドブックを見て揃えてみてください。

言い忘れてました(ということが時々出てきます)。レストランで「儀式」をする時は、グラスの足を持ち、中のワインをぐるぐるとまわして香りを立ててください。栓をあけてすぐはワインがびっくりしてまだ実力を発揮できないのです。空気とよくまぜてください(家庭で飲む時も同じですけど)。

(C)T.YONE 1997


偽シェフヨネのワイン漫談 第13回「ついに難問登場か」

ワインを通常どうやって味わうかをワイン通のあなたはしっかりと把握しましたね。まだ「わかんなーい」という人は前回までのものを読み返してください。

さてとうとう「生産地」の話題と正面から取り組む時間になりました。ぼくだって気乗りしません。でもこのレッスンをやらないと結局「ワインはやっぱりわからない」ということになるのです。

まず概況です。ワインの生産量はフランスとイタリアが競っています。しかしPocket Wine Bookではフランスが70ページ近くあるのにイタリアは30ページにすぎません。ちなみに今超流行りのチリワインなんか2ページ半しかとられていません。もちろん著者の偏見もあるでしょうが、ワインの世界では比較的常識に近いカタチです。なぜフランスがそれほどワイン王国なのかと言うとこれはいろいろ陰謀があるわけです。もちろんいい葡萄(ワインの質は葡萄が左右したんですよね。覚えてますか? 食べておいしいとは違います)が収穫されるということが前提ですが、前世紀にボルドーワインの格付けをして国家をあげて「これはいいんだぞ」と世界に広報したからです。今もフランス政府は自国の文化の輸出に熱心です。

フランスワインに割くページが多いということはとりもなおさずフランスワインに記憶容量を多く取られるということです。フランス語講座はこのあと開講の予定です。次回からはまずラベルの読み方から始めましょうね。ワインはラベルがすべてです。必要十分事項が記載されています。

(C)T.YONE 1997


偽シェフヨネのワイン漫談 第14回「ラベルを読もう」

ではラベルの読み方です。ビン詰めされたワインは外見からは中身の判断ができないためラベルは重要です。ラベルをよりどころにして評価・鑑定・売買がされるわけでここにウソがあるとやっぱりヤバイんです。

このあいだ飲んだボルドーのワインです。

1:GRAND CRU CLASSE DU MEDOC EN 1855

2:Chateau Montrose

3:SAINT-ESTEPHE

4:Appellation Saint-Estephe Controlee

5:1983

6:J-L.Charmolue

7:PROPRIETAIRE A SAINT-ESTEPHE GIRONDE(FRANCE)

8:MIS EN BOUTEILLE AU CHATEAU

1:GRAND CRU CLASSE DU MEDOC EN 1855 これは前世紀の遺物です。1855年にボルドー・メドック地区の格付けが行われました(注11)。単なるステータスで現在ではとりたてて意味はありません(とぼくが言っているだけです)。詳細は市販のガイドブックに譲ります。

2:Chateau Montrose これが「生産地」です。「シャトー・モンローズ」です。この「シャトー」は「城」と訳されることが多いのですが、別にお城でワインを作っているわけではありません。ワインの世界では「一区切りの葡萄畑」をあらわします。「モンローズさんちの葡萄畑」くらいの意味です(おいおい、ホントかよ) 。

3:SAINT-ESTEPHE 「地区名」です。「サン・テステフ」というところであるということをあらわします。もちろん上記の「シャトー・モンローズ」は「サン・テステフ」以外には存在しないので、理解している人には不要の表示と言えます。

4:Appellation Saint-Estephe Controlee 「サン・テステフ地区」で収穫された葡萄だけで作られたワインであることを表示しています。「アペラシオン・サン・テステフ・コントロレ」くらいの読みです。ここでひとつ覚えなければならないやっかいなことがあります。でも疲れたので次回にしましょう。

(C)T.YONE 1997

(注11)ここから先は単なるウンチクです。有名なメドックの5大シャトー(1級格付け)はChateau Lafite-Rothschild、Chateau Margaux、Chateau Latour、Chateau Haut-Brion、Chateau Mouton-Rothschild(1973年昇格) ですが、このうちムートンは1855年時点の格付けに落ちてオーナーは「それでもムートンはムートンなり」の名言を残しました。なお、これはあくまでもメドック地区だけ(グラーヴ地区のオー・ブリオンは例外)の格付けなので、サンテミリオンのシャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブランやポムロールのシャトー・ペトリュスは対象になっていません。念のため。また、サンテミリオンなどと違ってメドックではこの150年間にムートンの昇格以外はまったく見直しが行われておらず、その1級〜5級の格付けはそのまま信用できるものではありません。

さらに付け加えれば、5大シャトーのひとつ下のランクである2級のうち、シャトー・コス・デストゥルネルとシャトー・レオヴィル・ラス・カーズ、シャトー・ピション・コンテス・ドゥ・ラランドなどは、「スーパーセカンド」と呼ばれ、5大シャトーに匹敵する品質であるとみなされており、価格もそれなりになってきていますが、それでもまだお買い得かもしれません。もっとも最近なかなか見つかりませんが。しかし、それにしても言いにくい名前だ。

もっとついでに言えば、メドックで1級〜5級に格付けされたワインは「GRAND CRU」として、他の格付けされなかったワインとは別格の扱いをされる「貴族」の誇りをもっています。かつての日本酒の1級酒とか2級酒といった税法上のクラス分けとはまったく別です(そんな誤解はしないか)。とはいえ、昔の権威に頼っている実力の落ちたシャトーもあります。逆に格付け外の「ブルジョワ」でもいいものはたくさんあります。自分の舌を信じましょう。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第15回「生産地呼称」

ワインの値段のところで、「生産地」がどの程度狭く特定されているかということに触れました。もう忘れたかな? 今事例にあげている「シャトー・モンローズ」は最も狭い表示です。フランス>ボルドー>メドック>サン・テステフ>シャトー・モンローズという関係です。

4:Appellation Saint-Estephe Controlee の続きです。「サン・テステフ地区」の誰か他の人の葡萄畑からも葡萄を買ってきて自分のところのものと混ぜてワインを作ったらもう「シャトー・××」とは表示できません。この理屈がわからない人はいませんね? 自分のシャトー以外の葡萄を混ぜると虚偽表示になります。でもこの「サン・テステフのほかの人の畑の葡萄を混ぜて作ったワイン」は、「Appellation Saint-Estephe Controlee」という表示ができます。つまりこのAOC表示(O=Origineで、AOCを「生産地呼称」などと言います)は「最低限この表示のところで収穫した葡萄で作ってるよ」という意味です。「シャトー・××」より大きな集合の表示なのです。

同様に「Appellation Medoc Controlee」という場合はもっと広い場所を指しているのです。というようにもう少し広くMedoc地区だけではなく、ボルドーの他のところの葡萄を混ぜたら「Bordeaux」となります。ちなみに、フランス国内のいろんな地方産の葡萄から作った場合は「生産地」という概念がなくなり単に「フランス産ワイン」でしかありません。通常「Vin de Table=テーブルワイン(ヴァン・ド・ターブルくらいの読み)」と称します。

さて、今日のヨタ話のしめくくりです。ラベルには以下の表示がされていました。復習です。

1:GRAND CRU CLASSE DU MEDOC EN 1855

2:Chateau Montrose

3:SAINT-ESTEPHE

4:Appellation Saint-Estephe Controlee

5:1983

6:J-L.Charmolue

7:PROPRIETAIRE A SAINT-ESTEPHE GIRONDE(FRANCE)

8:MIS EN BOUTEILLE AU CHATEAU

でもどこにも「ボルドー」って書いてありません。なぜこれがボルドーなのかは「知っている」からわかるのです。英語の単語と同じです。今後あなたがワイン通の苦痛を味わうか、歓喜にひたるかはどの程度本気になるかにかかっています(恫喝)。ラベルの読み方は続きます。

(C)T.YONE 1998


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annotation by Takashi Kaneyama 1998