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Talking about WINE by T.Yone, the fake-chef

偽シェフヨネのワイン漫談


第16回「ラベルは読んだが、、」| 第17回「日本の事情」 第18回「ボルドーのまとめ」
第19回「いくぞブルゴーニュ」 第20回「白ワイン好きなあなたに」


偽シェフヨネのワイン漫談 第16回「ラベルは読んだが、、」

今もかかさずワインを飲んでますか? 飲んだワインのラベルはとっておいてますか? ぼくの勝手な話もだんだん市販の解説書みたいになってきていかんですね。まだラベルも全部読んでないのに横道に入ると出てこれなくなるおそれがあるのでこのまま少し続けます。

5:1983 もちろん1983年収穫の葡萄から作ったものであるということを意味しています。

6:J-L.Charmolue 人の名前です。どういう人かと言うと、

7:PROPRIETAIRE A SAINT-ESTEPHE GIRONDE(FRANCE) 「シャトー・モンローズ」の所有者です。かつてバブルの頃日本人がフランスの有名な葡萄畑を買いに行きましたが、フランス政府が介入して白紙にしたことがありました(注12)。カネでは買えないんですね、もはや「文化遺産」なのでしょう。

8:MIS EN BOUTEILLE AU CHATEAU シャトーでビン詰めされたという表示です。「ミザン・ブテーユ・オー・シャトー」くらいの読みです。「おれんちでちゃあんとやってるんだよ」の表明です。何だか信頼性が増すじゃありませんか。

ということで、ひととおりラベルの内容を見てきました。「これでワインのことがよくわかる」と安堵している人に衝撃の告白です。ここ数回くどいほど述べてきた「シャトー」の考え方はフランスのボルドー地区だけのものです。他地区・他国でまた違った考え方でワインを分類しており、もちろんラベルの表示も違ってきます(ただし「シャトー・××」という名称自体は日本でも使っていますが) 。

いじわるですね、ぼくは。

(C)T.YONE 1998

(注12)どういう手を使ったのか、サンジュリアン村のシャトー・ラグランジュは、サントリーが経営しています。鈴田健二氏がチーフエノロジストで、サントリーのサイトにある"SUNTORY WINE NEWS"(毎月1回更新)で、ワイナリー最新情報を連載されています。URLは自分で探してみてね。まだリンクのお願いレターを書く準備ができていないので。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第17回「日本の事情」

ボルドーがシステム的に完成された表示方法を確立しているのに対してワイン後進国(発展途上国って言わないといけないんだっけ?)の日本はお粗末でしかありません。偏見でモノを言うと、明治以降日本でワインを作る情熱に燃えた先達の理想と努力には涙ぐましいものがあります(注13)が、そもそも日本の気候にワイン用の葡萄がなじまないのだと思います。食用の葡萄についてはマスカット以下世界に誇れるものがたくさんありますが、原料葡萄にとって日本は高温多湿すぎるのです。

ずっと前に勉強したので思い出してください。「ワインの味は葡萄の品質が決め手」なので「いい葡萄ができなければいいワインはない」のです。日本ではどうやってもボルドーに太刀打ちできるものはできません。「これはこれでうまい」ものは当然できます。しかし世界標準で「うまい」ものは無理でしょう。

国内産の葡萄だけで真面目にワインを作っていくと、フランス・イタリア並みの低価格高品質のものはできなくて、市場競争力がありません。でどうするかというと「国内産ワインに輸入ワインを混ぜる」のです。以前は何の表示もなく「国産ワインの顔をした輸入ワイン」という「生産地呼称」からはとうてい考えられないようなことをしていました。現在の表示も不十分です。半分以上国内産ワインが入っている場合「国内産ワイン・輸入ワイン使用」また輸入ワインが半分以上ブレントされている場合は「輸入ワイン・国内産ワイン使用」と表示するのです(何もごまかしてませんからね)。何%かもどこの国かもわかりません(味からみるとオーストラリアかな)。最近は、ワインとして輸入すると税金が高いので、葡萄ジュースのまま輸入して国内で発酵させるということもしています。ワインに関してはグローバル化してもらいたくありきせん。

(C)T.YONE 1998

(注13)新潟県高田市の「岩の原ワイン」などは明治の日本人の気骨がうかがえる産物です。日本の赤ワインにしてはけっこういけます。日本の大手メーカーは、まだこの水準にも到達していません。ただし、これはフランスワインを基準にするなら、違う飲み物だと思うのではありますが。食事の友ではあるが、お互いを引き立て合うパートナーとは言いがたい、という意味で。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第18回「ボルドーのまとめ」

「早くイタリアの話をしろ」という向きにはお気の毒ですが、世界の趨勢はボルドー重視ですのでもう一回だけ。シャトーの数は例の"Pocket Wine Book"では390あります。げっ、毎日1本ずつ飲んでも1年で終わらない。どの年のものでもよしとするのならまあ平均は1本8,000円程度でしょうか。私は踏破をとうにあきらめています。もちろんおカネの面で。

さて、今の季節は94年のシャトー物が多く出ていて、かつお節まみれのネコのように幸せです。通常のシャトーは3年くらいセラーに寝かせてから出荷するので今出回ってるのです。94年は比較的良い年でした。おいしいはずです。91、92と不作で93から上向いてきています。ただし、94年ものが飲み頃を迎え「始める」のは多分、2000〜2005年くらいだと思います。いじわるではありません。じゃまだ買わなくてもいいやと考えてる人は甘い。現在86、88、89年くらいのヴィンテージが飲み頃を迎えていますが、いざ買おうとしても商品がないのです。あってもムチャ高い。だから出回っている時に買い込み、保存する(注14)という手段に出るしかないのです。この漫談でヴィンテージ物を紹介していないのはいくら「うまいぞ」と言っても手に入らないでは仕方ないからです。でも上記の85、86、87年あたりも時々出回ります(注15)。見かけたらさっさと買って飲んでみてください。まあ6,000〜15,000円くらいで買えるでしょう。

と言ってもだよ、こういう考え方もある。シャトー・オー・ブリアンは94年もので多少未熟成でもシャトー・オー・ブリアンにはちがいなく、絶対にうまい。じゃ指をくわえて寝かせておかなくても飲んじゃえ。二枚舌野郎です。

(C)T.YONE 1998

(注14)この保存がむずかしい。本格的にセラーを導入するか、店で預かってもらうか、になるでしょうか。

(注15)まったくの余談ですが、数年前に84年物がたくさん出回りました。というのも、ボルドーの84年物は80年代で最悪の年で、これ以上(すでに10年はたっていましたが)熟成させても価値が上がらないという判断です。しかし、悪いとはいえラトゥールやマルゴーのような最高級シャトーがラベルをつけて出荷するからにはそれなりの水準はクリアしている(基準に達しない原酒はセカンドラベルやポーイヤックとかメドックとかボルドーのAOCに流す)わけで、1万円台ならお買い得! でも、どうせ贅沢するならいい年のを飲みたい! と悩んだものです。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第19回「いくぞブルゴーニュ」

スタンダード価格のものを10本飲んだら、1本くらいは高いものをはりこんでみましょうよ。給料日でもバレンタインでも有名人の誕生日(または命日)でも記念すべきことはでっちあげてください。

ボルドーが94年ものの出荷ならばブルゴーニュは95年ものが出回っています。これも寝かせておくほうがよいのですが、目をつぶって飲んじゃいましょう。赤ならVosne-Romanee(ヴォーヌ・ロマネ)やGevrey-Chambertin(ジヴレー・シャンベルタン)白ならMeursault(ムルソー)やChassagne-Montrachet(シャサーヌ・モンラッシェ)あたりでしょうか。7,000円くらいでしょうね。

さてブルゴーニュの産地表示はボルドーのようなシャトーシステムではありません。AOCだけです。ずっと昔に説明したとおりこれは生産地呼称で「O」の部分にたとえば「Meursault」という地名が入ります(注16)。とりあえずは煩雑なシャトーの名前を覚えなくてよい分ボルドーより記憶の負荷がないでしょうね。ボルドーのシャトーワインたとえばPontet-Canetがいくつもの種類で出回るということはありません。一方ブルゴーニュでは「△△△社のMeursault」や「■■■社のMeursault」があります(注17)。これは各社それぞれが地域の葡萄畑を押さえてワインを作っているからです。だから同じ年度の同じ地域でも値段が違うということが発生します。店に行って「どれを買えばいいか」と悩むはめに陥ります。「じゃラベルのキレイなのにするか」というのもひとつの選択肢です。

(C)T.YONE 1998

(注16)この場合はつまり、「Appellation Meursault Controlee」と書きます。

(注17)一応、信頼されている仲買業者がいくつかありますので、"Pocket Wine Book"で当たってください。しかし、一番いいのはいい店を見つけて仲良くなっておくことでしょう。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第20回「白ワイン好きなあなたに」

漫談の舞台はブルゴーニュに突入しましたが、このままのペースでやっていくとけっこう大変なことになると実感してきました。急ぎます。ブルゴーニュは白ワインの宝庫です。辛口でヌケがよく適度の酸味と芳醇なブーケを持っています。ハズレはないと信じても大丈夫です。

Chablis、Pouilly-Fuisse、Macon-Villages、Puligny-Montrachet、Meursault、Batard-Montrachet(注18)などなど。実は前回まで執拗に解説してきたボルドーには料理と合わせるマトモな白ワインがないのです。もちろんボルドーの白と言えばデザートワインの最高峰であるChateau d'Yquem(シャトーディケム)以下のSauternes(ソーテルヌ)地区が有名ですが甘すぎてとうてい料理には耐えられません(注19)。もちろん少ないなりにも辛口(注20)もありますが、とうていブルゴーニュにかないません。「赤体質」ですね、ボルドーは。

ずっと前に言ったように、キリッと冷やしてお飲みください。黄金色のブルゴーニュの白は世界一です。海産物系が特によく合います。ワインにパワーがあるのでクセがあったり比較的くどい料理でも対応できるしっかりものです。

でもネダンに割高感があることは事実です。単なるBourgogne AOC(注21)の白でも平気で2,000円以上します。上記のいかにもおいしそうなものになるとため息が出ます。うまいものは高いと心で思っても財布は納得しないなあ。

(C)T.YONE 1998

(注18)老婆心ゆえに、おおよその読みを。順に、「シャブリ、プイイ・フュイッセ、マコン・ヴィラージュ、ピュリニィ・モンラッシェ、ムルソー、バタール・モンラッシェ」です。ただし、このカタカナで通じるのは日本だけ(だと思う)。なお、このヨネのセレクションはさすがですね。実力があってコストパフォーマンスも高く、割合手には入りやすいものを列挙されています。シャブリは有名ですが、その中に「級」があります。いい方から、「グラン・クリュ、プルミエ・クリュ、シャブリ、プティ・シャブリ」となります。ちなみに、ピュリニィもバタールもシャサーニュもつかないただの「Montrachet(モンラッシェ)」はブルゴーニュの白の最高峰=つまり世界の白ワインの頂点ですから、もしもあなたが開けるときにはご一報を!(単に飲みたいだけだが)

(注19)フォワグラ(!)と合わせたり、メインのあとにロックフォールと合わせるとか、言われております。やったことはありません。上等なソーテルヌなら、それ自身がデザートとして供されることがあります。これが一番いいかもしれません。

(注20)代表的なものにグラーヴ地区、アントゥル・ドゥ・メール地区の白がある。

(注21) 「Appellation Bourgogne Controlee」と書いてあります。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


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annotation by Takashi Kaneyama 1998