きっといろんな文句がありそうだし、映画としての完成度とかストーリーや設定の細部には問題もあるのだが、しかし、あえて、私はこの映画を擁護する側に回りたい。
冒頭、キャリー=アン・モスがジャンプキックして敵を倒すシーンでの360度映像でまいってしまった。複数台のカメラの映像を継ぎ目なくつなぐ技術は知っている。しかし、こんなカタチで技術、お金、人的資源を使った監督はいなかった。
しかも、戦闘がヴァーチャルな世界で行われている設定のため、荒唐無稽なもろもろが許されてしまう。だから、ここで使われているスローモーションはただのスローモーションではない。そして何より大事なのは、こうした映像や技法がテーマと密接に、というより監督(たち)の意図とイメージが必然的にこれらの道具立てを必要としていることが納得できることだ。
私見では「ブレードランナー」に比肩する映画革新のメルクマールだと思う。一部ではキューブリックが死んだ年にこの映画が公開された暗合からか「2001年 宇宙の旅」と比べる人がいるが、さすがにそこまではちょっと言えない。
日本のアニメの影響とか、禅の思想とか、いくつもの痕跡は見てとれるが、重要なのはこの映画が追随者なのではなく、逆にこの映画がこれから多くの追随者を生むであろうことだ。「マトリックス以後」というコトバが、やがて聞かれることになるだろう。
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