Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 1999年8月

「ウォーターボーイ」
フランク・コラチ監督、アダム・サンドラー、キャシー・ベイツ、ヘンリー・ウィンクラー、フェルザ・バルク、ジェリー・リード、ラリー・ギリアード・Jr.、ブレイク・クラーク
★★★☆

アメリカンフットボールのなかで、私が一番好きなポジションは実はラインバッカーなのであった。それも、テッド・ヘンドリックスやローレンス・テイラーのような(彼らも好きだが)アウトサイドではなく、ジャック・ランバート(古い!)のように中央にどんと構えるミドル・ラインバッカーがいいんですねえ。

というわけで、物語は31歳にもなってウォーターボーイをやっている(通常は小中学生くらいがやるもんだ)マザコン男が、憎い奴にはものすごいタックルをすることからチームで大活躍するという物語。母親はキャシー・ベイツで、最初の登場シーンからナタを振るって大ナマズに切り付けている。ガールフレンドはJail(刑務所)上がりで、車は盗むはナイフで脅かすはという不良。友だちは誰もいない。

もちろん、絵に描いたようなファンタジーに展開するわけだけれど、人物といい、料理といい、ファッションといい、あまりに「濃い」ので笑うより先にあっけにとられる。いやあ、すんごい。

ジミー・ジョンソン、ビル・カウアー、リン・スワン、ローレンス・テイラーというスターが自分の役で出ているのはご愛嬌。

また、深南部のプア・ホワイトをかなり誇張して描いているのが興味深い。

ヒーローが最後までボールを持たないところがよい。攻撃チームに入ってもリードブロッカーだし(このプレーが凄い。なにしろ、タッチダウンするまでやってくる敵を次々と吹っ飛ばす)。最後の最後のプレー(ま、よくあるプレーコールではあるにせよ)までの組み立てがいかにもマンガチックで楽しい。『キャプテン翼』のアメリカンフットボール版のようなスペシャルプレーはマニアにはこたえらない。

フットボール的リアリティから言えばありそうにないが、こうだったらいいなあと夢想したであろうプレーがすがすがしい。私は、ランでのブロックにしろ、パスでのレシーバーとの呼吸にせよ、アメリカンフットボールは「人を信じる」ことから始まるスポーツだと思っているので、ラストプレーはなかなか象徴的に思えたのですが。作っている方はそこまで考えてないだろうが。

「交渉人」
F.ゲーリー・グレイ監督、サミュエル・L.ジャクソン、ケビン・スペイシー、デビッド・モース、ロン・リフキン、これが遺作となったJ.T.ウォルシュ、レジーナ・テイラー
★★★

何がIQ180だ! だいたい、IQは子どもの知能発達を見るためのもので大人には無意味なんだぞ。

さて、演技達者が揃って密室での会話の駆け引きかなと思いきや、ドンパチもたっぷり散りばめたやっぱりアメリカンな映画なのであった。

とりあえず、観る者を飽きさせない展開は認める。脚本にあんまり破綻がない(これだけいくつもの逆転の仕掛けをしておいてこれは立派)のも確か。だが、「う〜ん、凄い」というシーンも発見も感動もなかったのだ。長時間のサスペンスの持続は楽しめるのだが、カタルシスが弱い。アタマばっかり使って疲れたぞ。

「ハムナプトラ・失われた都」
スティーブン・ソマーズ監督、ブレンダン・フレイザー、レイチェル・ワイズ、ジョン・ハナ、ケビン・J.オコナー、アーノルド・ボスルー、ジョナサン・ハイド、オーディド・フェール
★★☆

なんにも期待していない上に、「映画の日」だから千円だし、初回だからかCFも予告編もなくいきなり本編が始まったものだからびっくりしたじゃないか、もう。ロッテリアのエスプレッソ・シェイクを落っことしそうになったぞ。

冒頭が古代エジプトのテーベの都の風景なんだが、巨大な彫像のアップと広大な建築群の遠景をカット割りせずに長回しでなめるように見せていくところで遺跡好きは圧倒されるわけで、「しかしなんでアヌビス像(山犬)があんなに大きいのかな?」と疑問に思ったりする。

というわけで、これは古代エジプトの呪いが20世紀(ただし、1920年代)に甦るオハナシで、いかにもエジプト学に則っているようで実はメチャクチャな、ある意味ではかなりバカな映画なのだが映像が面白いから許す。この映画を褒めると人格が疑われる危険が危ないがどうせフツーの人とは思われていないからいいや。

アラ探しをすればきりがないので、とりあえず見どころでも。まず、大神官イムホテプと恋仲の王の愛妾アクスアムンの衣装。というより、衣装じゃなくてペイントか。あんなもん、古代でも近代でもあるもんかってぐらいヘン。で、罰される神官の刑はなんと「生きながらミイラにされる」というもの。イムホテプは「棺桶に肉食スカラベ(そんなのいるのか?)と一緒に入れられてゆっくり食われる」という極刑で、しかもこの刑に処せられると死ぬことがなく、万一甦ると災いをもたらすということで衛兵が何千年も守っているという設定。これを開けてしまうバカな近代人はおっちょこちょいの図書館司書の女とその軽薄な兄と死刑を免れたお礼に案内する元軍人、それと競争するお宝狙いのアメリカ人3人とエジプト人の学者、それに裏切りを繰り返すガイド。

そして顔面をした砂嵐、襲いかかるミイラ軍団。「イムホーテープ!」を連呼する皮膚病の群集。それにしてもあのド近眼の眼をもらった再生イムホテプが普通に動くのが不審。きっとこれが最後の逆転のキーになるんじゃないかと期待したのに。それに生き返らせる呪文がカンタン過ぎる。「寿下無寿下無」の民にすればあんなの子どもだましだ。あ、やっぱりアラ探しをしてしまった。

「インディ・ジョーンズ」に似ているともっぱらだが、それは設定はもとよりパルプマガジンのテイストのせいだろう。矛盾もご都合主義も気にせずに二転三転、危機一髪、最後はハッピーエンドという安心のジェットコースター。だがよく考えるとこの元ネタはもともと1920-30年代のアメリカではやっていたものでその復活ということであれば似ていて当然なのだった。


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Text by (C) Takashi Kaneyama 1999