アメリカンフットボールのなかで、私が一番好きなポジションは実はラインバッカーなのであった。それも、テッド・ヘンドリックスやローレンス・テイラーのような(彼らも好きだが)アウトサイドではなく、ジャック・ランバート(古い!)のように中央にどんと構えるミドル・ラインバッカーがいいんですねえ。
というわけで、物語は31歳にもなってウォーターボーイをやっている(通常は小中学生くらいがやるもんだ)マザコン男が、憎い奴にはものすごいタックルをすることからチームで大活躍するという物語。母親はキャシー・ベイツで、最初の登場シーンからナタを振るって大ナマズに切り付けている。ガールフレンドはJail(刑務所)上がりで、車は盗むはナイフで脅かすはという不良。友だちは誰もいない。
もちろん、絵に描いたようなファンタジーに展開するわけだけれど、人物といい、料理といい、ファッションといい、あまりに「濃い」ので笑うより先にあっけにとられる。いやあ、すんごい。
ジミー・ジョンソン、ビル・カウアー、リン・スワン、ローレンス・テイラーというスターが自分の役で出ているのはご愛嬌。
また、深南部のプア・ホワイトをかなり誇張して描いているのが興味深い。
ヒーローが最後までボールを持たないところがよい。攻撃チームに入ってもリードブロッカーだし(このプレーが凄い。なにしろ、タッチダウンするまでやってくる敵を次々と吹っ飛ばす)。最後の最後のプレー(ま、よくあるプレーコールではあるにせよ)までの組み立てがいかにもマンガチックで楽しい。『キャプテン翼』のアメリカンフットボール版のようなスペシャルプレーはマニアにはこたえらない。
フットボール的リアリティから言えばありそうにないが、こうだったらいいなあと夢想したであろうプレーがすがすがしい。私は、ランでのブロックにしろ、パスでのレシーバーとの呼吸にせよ、アメリカンフットボールは「人を信じる」ことから始まるスポーツだと思っているので、ラストプレーはなかなか象徴的に思えたのですが。作っている方はそこまで考えてないだろうが。
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