Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 2000年8月

「クローサー・ユー・ゲット」

アイリーン・リッチー監督、イアン・ハート、ショーン・マッギンレイ、ニーアム・キューザック、キャスリーン・ブラッドレイ、ルース・マッケイブ、パット・ショート、ユアン・ステュアート、ショーン・マクドノー

★★★★

アイルランドの小さな村。元サッカー選手が経営するパブ、豚の飼育にいそしむ青年、女好きの肉屋、ゴシップ好きで郵便局兼任のドラッグストア、しゃちほこばった神父がしきる教会。

その教会で「十戒」と間違えて「テン」を上映してしまい、ボー・デレクの肢体に興奮した若者たちがアメリカの女性向けに新聞広告を出すという暴挙に走る。「この村には、ロクな女がいないじゃないか!」というわけだ。

ストーリーはほぼ予想通りの展開をたどるわけだが、もともと登場人物が少ないので、それぞれの人物や生活の描写が実にていねい。私には愛らしくてたまらない。

小舟をかついでパブへ行くのもまた、旅心を掻き立てる。まあ、ある意味「粋」な映画である。賛同する人は少ないと思うが。

そしてラスト、いつものバスがやって来る。かつて、毎日「アメリカ女性が今日は来るかな?」と待ちわびたバスだ。このラストは、トゥイストが利いているというよりは、私には可愛らしくてしょうがない。

まあしかし、私にアイルランド映画を語らせると「あばたもえくぼ」ではある。

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「M:i-2」

ジョン・ウー監督、トム・クルーズ、ダグレイ・スコット、サンディ・ニュートン、ヴィング・レイムス、リチャード・ロックスバーグ、ジョン・ポルソン、ブレンダン・グリーソン

★★★☆

悪評さくさくたるなかで、あえて擁護に回る。少なくとも、前作のデ・パルマに比べればはるかに姿勢が明確。おそらくトム・クルーズは俳優としてではなく、プロデューサーとして「007シリーズ」や「エイリアン」のようなドル箱シリーズを作ろうとしているのだと思う。毎回、実力派監督を招く、主人公は変えない、あくまでエンタテインメント、それも笑えるくらいに誇張した演出の娯楽大作。

とすれば、ジョン・ウーの美学を発揮するのにこれ以上の舞台はあるまい。だいたい、映画なんて絵空事なのである。不死身のスーパースターが絶体絶命の危機をくぐり抜けるところにカタルシスがあるのだ。

というわけで、硝煙のなかスローモーションで登場するクルーズとか、オートバイでのスタント、カーチェイスで車がダンスして愛を語ったりするのは、実に微笑むべきシーンなのだ。ここでは、感動するよりも笑いながらジョン・ウーにスタンディング・オベーションするのが正しい。手に汗握る、なんてことはハナから期待されていないのである。

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「パーフェクト・ストーム」

ウォルフガング・ペーターゼン監督、ジョージ・クルーニー、マーク・ウォールバーグ、ダイアン・レイン、ウィリアム・フィッチナー、カレン・アレン、ボブ・ガントン、メアリー・エリザベス・マストラントニオ

★★★☆

海の男が出会った「完璧な嵐」。ペーターゼンという監督はやっぱり海と相性がいいのかもしれない。

一般にはただの海洋パニック映画、唯一嵐を映像化したSFXが見事、みたいな評価になっているのかもしれない。たしかにそうなのだが、私はなぜか好きなのだ。それはたぶん、海の男が集まるパブとか、「こんなときに海に出やがって」と沿岸警備隊に言われる漁師たちが、どーもアイルランド系に見えるからなのからだろう。

そして、口汚く罵りながらもみんな救命活動にただちに出動していくのだ、自分の命を懸けて。

余計なものを省いて、海と嵐と船、というシンプルなところもよい。だいたい、役人根性の役立たずとか、不倫とか、ライバルの確執とか、組織の不手際とかいろんな要素を入れては失敗する映画が多い中で、実に潔い。

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Text by (C) Takashi Kaneyama 2000-2001