面白い。細かい事を言えばいろいろあるが、納得度の高いストーリーと見事なアクション。ただ、次々と人が殺されていくのを見るのが最近、苦痛なんだなあ。
この映画は実にわかりやすい。これは伏線だってわかるし、登場時間の少ないワキ役も印象深く描写されていて「この人、誰だったっけ?」ということもない。もっとも、そういう人たちがどんどん死んでいくんだけど。また、悪玉テロリストが踊るようにターンしたり、女性のお尻を撫でたりする癖とか、FBI捜査官の結婚指輪とか、細かい描写の意図がはっきりしていて、しかも後できちんとフォローされているのにも好感。他にも、対句的というかつまり、同じようなシーン、台詞が時間を置いてリピートされていて、その微妙な差異で2人の入れ替わりを表現するという工夫がうまい。
そう、この映画はトラボルタの善玉FBI捜査官とケイジの悪玉テロリストとが顔を入れ替わってしまう物語。これだけだと無茶な設定だが、シナリオがうまい。そして、トラボルタ顔になった悪玉はFBIで実権を振るい、ケイジ顔の善玉は刑務所を脱獄して戦いを挑む。このへんの心の葛藤や、パーソナリティの違いを演じさせたら、そりゃニコラス・ケイジの方が圧倒的にうまいわな。小さな息子を殺した憎い敵の顔に自分がなっちゃう、苦しさ。しかも秘密作戦を知る者は殺され、孤立無援でテロリストの顔をひっさげてFBIの包囲をかいくぐっていく。そしてテロリストの昔の女の家に逃げ込むわけですが、テロリストに扮している堅物捜査官というここの演技はさすが。(ちなみにこの昔の女はジーナ・ガーションですが、いいですねえ。それはさておき、)相変わらず不器用なトラボルタには、さきほど触れた「対句」技法を用いて性格を描き分けることに成功しています。
きわめつけはジョン・ウーお得意のアクション。しょっぱなの飛行機を追いかけて犯人逮捕のシーンから二丁拳銃対二丁拳銃。派手な脱獄。昔の女の家を襲うFBI。鏡をはさんで撃ち合う2人。教会での対決。そしてモーターボートでの追跡と、ボルテージはどんどん上がっていく。スピード感、サスペンス、ハラハラ、ドキドキ、「男たちの挽歌」の作家らしく、激しくも流れるような映像は様式美さえ感じさせます。
深く考えればアイデンティティの問題とか、善と悪の二元論とか、理屈はつきそうですが、ここは単純に顔を奪われ、自分を失いかけた男の苦闘と受け取っておけばよさそうです。主役2人の人物造型が図式的という批判も成り立ちますが、このストーリーの場合、典型的なキャラクターにしておかないとややこしくなりすぎて設定の面白さをそこないかねず、上出来のエンターテインメントと褒めちぎっちゃいましょう。
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