Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 1997年1月

「秘密と嘘」

マイク・リー監督、ブレンダ・ブレッソン、ティモシー・スポール、フィリス・ローガン、クレア・ラシュブルック、マリアンヌ・ジャン=バティスト
★★★★★
文句なしの五つ星。批評家は、やれ脚本がなく、俳優とのミーティングでつくったとか、やれ9分にわたるロングショットとか技法面ばかり言うが、家族を描いてこれだけの圧倒的感動をもたらすのは、ただ者ではない。ストーリーは、黒人のキャリア女性の母探しと、成功したカメラスタジオ経営の弟とその妻、工場勤めの姉とその私生児とのいさかいがやがて絡み合う。そして、秘密と嘘が明かされる。こう書くと実につまらないが、事実、ストーリーは重要ではない。映画的リアリティが観る人を容赦なくスクリーンの中に引きずり込む。数年に一度の傑作。ただし、思春期以降の方向け。人生経験が長い方ほど感動は深いかも。

「僕のボーガス」

ノーマン・ジェイソン監督、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェラール・ドパルデュー
★★★
ウーピーのハートウォーミングな映画という惹句にひかれてつい観てしまった。母の死でハリエット(ウーピー)に引き取られることになったアルバートという少年には空想上の友達ボーガス(ドパルデュー)がいた。仕事で手一杯のウーピーは果たして少年の心を開かせることができるのか? 結論から言えば、凡庸な結末にはがっかりした。これがウーピーとドパルデューでなかったら、駄作とこき下ろすところ。

「大地と自由」

ケン・ローチ監督
★★★★
スペイン内戦を舞台に、義勇軍に参加したイギリス人の戦い、転節、恋を描く。問題は人民戦線対ファシストという構図とは別に、反スターリン勢力とスターリン勢力(当時のソ連)との対立があったことで、それが国際義勇軍にも波及して悲劇を引き起こしてしまう。知人には「悪質な反共映画」という評もあったが、私は「良質な反スターリニズム映画」と言うのが正しいと思う。ややこしい思想対立がよく整理されていて、説明的でもない。ラストシーンの握りこぶしが象徴的。

「フェノミナン」

ジョン・タートルトーブ監督、ジョン・トラボルタ、カイラ・セジウィック、フォレスト・ウィテカー
★★★★☆
超能力者になったサクセス・ストーリーではなく、生きること、死ぬことを見据えたラブ・ストーリー。"Jack, how do you wanna die?"の一言がぐっときます。エリック・クラプトンの「チェンジ・ザ・ワールド」も聴きものです。ご家族でも、カップルでも、お薦め。

「評決のとき」

ジョエル・シュマッカー監督、サンドラ・ブロック、サミュエル・L.ジャクソン、マシュー・マコノヒー、ケヴィン・スペイシー
★★★
「ザ・ファーム/法律事務所」「ペリカン文書」「依頼人」の原作者ジョン・グリシャムの処女作の映画化。ただし、余りに地味過ぎて編集者にうけなかったらしく、当時には出版されず、一連のヒット作のあとに刊行された。少女をレイプした犯人を銃で殺して復讐した父。問題は、レイプ犯人が白人なのに、復讐した父は黒人だったこと。法廷の内と外で戦いが始まる。今は黒人と言わずにアフリカ系アメリカ人と言わなければならないんでしょうが。陪審という制度について、人種差別について考えさせられます。でも、映画としては?マークがつく。


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Text by (C) Takashi Kaneyama 1997