Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 1997年8月

「浮き雲」

アキ・カウリスマキ監督、カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネン、エリナ・サロ
★★★★

フィンランドの小津ともデ・シーカとも呼びたいカウリスマキ独特の映画話法が冴える一品。例によって敗者を描いてやがてくるハッピーエンドへ持っていく流れがうまい。しかし、好き嫌いが極端に分かれるだろうなあ。

なにしろ、夫婦が揃って失業してしまい、再就職に悪戦苦闘し、泥沼にはまっていく映画ですから。でも、いいです。画面の色調も北欧の暗い冬という感じ。皮肉と抑制の効いた演出はアキの独壇場。

「世界の涯てに」

リー・チーガイ監督、金城武、ケリー・チャン、マイケル・ウォン
★★★★

香港映画では新しい人材がどんどん育っているようです。俳優にしても監督にしても、勢いがあります。この作品は、いまアジアで人気沸騰中の金城武と香港の大型新人(本業は歌手)ケリー・チャンの豪華共演という触れ込みつき。

スコットランドにある島は「世界の涯て」と呼ばれ、一年に一度死者の魂が集まるという。そんな話を教えてくれたイギリス人船員を探すのが、富豪の娘ケリー(役名と芸名が同じところはちょっと安易)。彼女は不治の病に冒されている。その船員捜しを請け負うのが金城演じるモンゴル出身の捜し屋。ケリーはイギリス人船員と捜し屋という二人の男のはざまで揺れます。

すぐに思うのは香港返還をめぐるイギリスと中国の関係と、そのはざまで揺れる香港を寓意的に描いたのではないか、ということです。そうとも読めるし、もっと一般的に人生の意味を考えさせるものともとれます。キワモノっぽい感じですが、なかなかいいです。後半のバラを咲かせるエピソードや、スコットランドのロケはぐっときます。

「スピード2」

ヤン・デ・ボン監督、サンドラ・ブロック、ジェイソン・パトリック、ウィレム・デフォー
★★
前作「スピード」に較べると物足りないのは否めない。仕掛けはお金がかかっているけれど、なんかスピード感に欠ける。「スピード」にはあったはりつめた緊張感が感じられない。でも、楽しめる娯楽映画です。バスの方が豪華客船よりもスリリングなんていうのは皮肉のようだけど、正直な感想。でも、あのセント・マーティンの町のセットはお金かけたんだろうなあ。ミニチュアは監督の意向で使わなかったそうです。

「モンド」

トニー・ガトリフ監督、オヴィデュー・バラン、フィリップ・プティ、ピエレット・フェシュ、ジェリー・スミス
★★★★
地味ながら佳品。放浪児モンドが港町(ニースだそうです)に住み着いて路上のマジシャンや小鳥をトランクに入れて飼っている物乞いやパン屋のおかみさんや釣り人やベトナム人のおばあさんと仲良くなっていく話。釣り人がモンドに字を教えるシーンがなんともいえず味わいがあります。子どもの名MONDOはフランス語のmonde(世界)にかけてあると思われます。きっとあなたは泣きます。原作はル・クレジオ。追記。あとで調べました。主人公の少年を演じたのは、パリ郊外のジプシー地区から追放されかかっていたルーマニア系の子、マジシャンは実は世界的に有名な綱渡り芸人、おばあさんは、50年代に夫を死刑で失った未亡人と、マイノリティの人々の存在感が際だっています。監督もジプシー系だそうです。


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Text by (C) Takashi Kaneyama 1997