8巻目にして、五賢帝時代にたどりついた。ふうーっ、って読者の方がため息をつきたくなる気の長さである。これはライフワークというよりも死ぬまでに終わるのか? という気がする。
で、例によって粘液質の文章で指導者の資質が分析される。この人はやっぱりカエサルしかいないようで、だからこのシリーズもカエサルをめぐる2巻が圧倒的に面白い。まあ、国が大変なときにどう処するか、みたいな「プレジデント」誌的な読み方をする人も多いのだろうが、日本の指導者層の底の浅さを露呈するようなもんだよなあ、管理職の歴史好きってのは。
ふと思ったのだが、なんか梅原猛に似ていないか? 小説的だが小説ではなく、しかし勉強量と仮説構築力と人間的想像力(とくに性悪説的な)でまさろうとする姿勢と、強烈な自信において。塩野七生は専門家からは異端とされ(あるいは無視され)ているということはないのだろうか。梅原猛は学界ではほとんど四面楚歌だったけれども。
ちなみに「ローマ人の物語」のガイドブック(書名が長い。『塩野七生『ローマ人の物語』の旅 コンプリート・ガイドブック』)も刊行された。ほとんどは新潮社の編集者が書いたのだと思うが(クレジットがない)、下手な著者よりもずっと気が利いている。このシリーズでの地図や図版への気配りを見てみれば、一級の本づくりがどういうことかが、よくわかる。
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