洒落た短編集である。年1回、秋の競馬シーズンのお楽しみのフランシスの新作が短編集と聞いた時には、ついに疲れたのかネタが枯渇したのか手抜きかと心配したが、ちゃんと書き下ろしも数作入って楽しめる本になっている。
短編らしい、最後のオチもあるし、犯罪のトリックのアイデアも豊富、しかしそれよりなによりいかにもフランシスらしい人間性の描写というかキャラクターの設定が思う存分味わえる。短編なのに脇役に見事な「フランシス謹製」という印が押してあるようなもんだな。さらに、小説作法からもいくつかトゥイストを凝らした作品もあり、芸達者な面も見せている。
ある意味、すべての作品がきちんと競馬から題材を取っているので、最近の短編のように勉強熱心なフランシスもいいけど、ちゃんと競馬ネタでフランシス節ミステリーを読めるってところがファンにとっては初期を彷佛とさせてくれて嬉しいのだ。
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