◆ 庭を森のようにしたい つれづれノート (13) /
銀色 夏生 ◆

作品名:庭を森のようにしたい つれづれノート (13)
作 者:銀色 夏生
発行所:角川書店 角川文庫
2004年6月25日 初版発行
定 価:552 円(税別)
ISBN4-04-167353-4 C0195 \552E
10 巻目からは毎年 6/25 に発売されている
1年分の日記(2003/04/01〜2004/03/31)、「つれづれノート」シリーズ
13 巻目。
宮崎の狭い家での仮住まいもついに終了。
夏には自分の作りたいように作った新居へ引越した。
これで、なににも煩わされない、素敵な日々が始まるかというとそうは行かない。
いうことを聞かない犬。ふとんにオシッコをしまくる。
いうことを聞かない娘。人の嫌がることをやめない。
なんか、ぶつくさと文句をつけることの多いつれづれな日々が続く。
退屈でも孤独でもないが、喜びがなく、創作意欲も湧かない。
したいことは、庭をつくり草木でぼうぼうにすること。
後半くらいから、日記はパソコンでつけることにしたとのこと。
イラストが少なくなって残念。
2月末に、以下のような1文が現れる。
-p331-
今まで、家族や友達のことをいろいろと書いてきたけど、自分以外の人のことを
勝手に書くのはよくないなぁと思ってきたので、これからは自分が思ったこと
感じたことを中心に書くことにする。
確かに他人に対して気持ちの重くなるような記述が多かったが、
これ以降は他人の話題は減り、自分を見つめた、読みごたえのある考察が
増えていく。
過去を振り返り自分が何者であるかが把握され、この先の生き方を見据える。
ひとりでいるのが合っている人だ。覚悟している。
-p358-
ひとりの人生を、長い期間、主体的にプロデュースできるとしたら、
自分しかない。自分だけは、自分の思い通りに動かせる。…
今の自分を不幸だと言ったりグチをこぼしたりすることは、自分のプロデュース能力の欠如を公言するようなものだ。
いいねぇ。
他に名言と思える共感できるところ。いろいろあるけどいくつか紹介。
-p32-
「一番カッコいいのは自分の体で体験した、自分だけが知ってる事に
たどり着いた人なのだ。」
-p154-
こういっちゃあなんだけど、やっぱ恋愛は妄想だ。
そして、出会いは縁だ。
-p166-
原因が分かるということは、解決するのと同じくらい、解決したといえる。
-p197-
もし子どもや若い人に、「夢をかなえる秘訣は何ですか?」と尋ねられたら、
「ひとの悪口を言わないことです」と言おう、ということだった。
-p198-
世の中でいちばん怖いのは、思い込みの強い人だ。
-p203-
「地獄への道は善意で敷き詰められている」
-p244-
怖い時には、調べよう。怖いものを、じっくりと。
知れば知るほど、怖くなくなる。納得すれば、敵じゃなくなる。
-p268-
他人に正当に認められないからと言って、がっかりするのはやめよう。
他人に正当に認められようと望むことこそ、甘い夢だ。
きっと人は人のことをほとんど誰もわからない。
この一連のつれづれノートを読んで来てつくづく分かったことは、
人はみなそれぞれ他人で、それぞれ思い通りに生きようとしているのだということ。
夫婦や、子供でさえも、相手を自分の思い通りに動かすことはできない。
「恋愛は妄想だ」に象徴されることだが、恋愛においては、お互いに
「相手が自分の望むことをしてくれる」ということを期待(妄想)している。
最初はそうしてくれそうに思えたりもするのだが、しばらくすると、
相手が自分を利用してわがままを通そうとしているのだと気付く。
お互いの望むものが違っていることに気付く。
初めに十分お互いを見極める、ということが必要だが、短い期間ではそれも難しい。
個人の幸せは「自分のやりたいようにやる」というわがままと
強く結びついている。
20 年以上かけて探り作り上げてきた自分のやり方を相手から変えろと迫られ、
自分の思い描いたサービスも受けられないとしたら、何のために
一緒にいるのか分からない。幻滅だ。
そこで、諦めるか、戦うか。
多くの恋愛・結婚はそういう道を辿っていくのではないか。
それは当然起こることだと覚悟した上で、それでも一緒にいるために
必要なものとは何だろう? 心の深い部分での「尊敬と信頼」だろうか。
対話する態度も必要だろう。
2004/09/29 Takakuni Minewaki
2005/09/25 last modified Takakuni Minewaki
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