化石は立っている

[Standing Protoceratops]
( 1997/8/12 撮影 at ツグリキン・シレ、モンゴル ) ( スケールは 10cm )

風も止んだところで、午後の部の発掘に向かう(16:30)。 バルスボルド博士も一緒だ。
午前中に見つけた化石 (1) (2) を見てもらう。どちらもプロトケラトプスだということだが、 破損が進んでいるので、放置することになった。

再び、うろうろと歩き回る探索モードに入る。 Wさんと一緒に歩いていると、あったあった、骨の散乱。 骨は部分骨で、これもプロトケラトプスだろうなぁ、と思いながら掘り進む。 そこにねこまたぎさんがやってきて、座り込んでこちらの様子を眺めている。
ふと目をやると、そのねこまたぎさんの足もとに、化石が!(写真)

こっちのほうが、ちゃんと全身がわかる形になっている。 この写真の、手前側が尾、向こう側が頭、という配置。 左右で縦に太く突き出しているのは、両足の骨だろう。 その両足の中心付近に背骨の一部と、右寄りにはあばら骨の 並んだ突出が見える。
この骨を見ると、(横倒しではなく)立ったままの状態で化石になり、 地表に現れながらその上半分が削り取られた、という様子が良くわかる。

通常、化石というのは、死んでから他の動物に食われたり、水で流されたり、 地殻変動で曲がったりしたりと、さまざまな作用を受けてから地表に現れるので、 死んだときの状態はわかりにくいものだが、ここツグリキン・シレでは 座った姿勢で頭を上にして、死んだときの姿が立体的に保存されて 化石になっているものが多い。
周囲に砂がつまっているので、砂嵐にじっと耐えているうちに 砂に埋まったのではないかとか、砂地に掘った巣穴の奥にいるときに 天井が崩れてきたのではないかとか、いくつか想像はできるのだが、 本当のところはまだわかってないらしい。

とにかくそういう状態で化石になっているという点は珍しく、 学術的に意義が大きい。
格闘化石(2匹の恐竜が戦ったままの状態で化石化した)が一番の例だが、 死んだときの姿勢が残ることによって、何をしている時にどういう状況で 死んだのかとか、体の部位の機能がわかったり、生態がわかったりするのだ。


1998/05/10 T.Minewaki

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南ゴビ 写真日記 1997思い出のアルバムMINEW

T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp