印旛疏水路

サイクリング

忍城(お しじょう)・石田堤・関宿城サイクリングに味をしめたグリーンウッド氏は 2013年10月8日(火)、印旛疏水路のサイクリングにでかけた。このところ天候不順で何回も延期。

家康による利根川の東遷の 顛末を目撃するのが目的であった。1783年の浅間山の噴火により縄文海進時代は海であった手賀沼、印旛沼、霞ヶ浦では排水不良でしばし ば洪水が発生するようになった。江戸幕府の破綻を救うべく、田沼意次が貨幣経済への移行や下総国印旛沼の干拓に着手する等の政策をお こない印旛沼と東京湾に注ぐ花見川をつなぐ印旛疏水路を掘削しようとしたが失脚。後世の目でみると田沼意次の汚名は政治的につくられたものであるとされ る。彼の悲願は第二次戦後完成した。ハーバード大学のジョン・ホイットニー・ホールは田沼意次を近代日本の先駆者」と評価している。

利根川から水を取り入れる印旛水門が長門川公園にある。長門川から利根川に水を逆流させる印旛排水機場(92m3/sec)と水門 と並んでいて両モード用運用が可能となっている。長門川と印旛沼の間には酒直(さかなお)水門と酒直揚水機場(20m3/sec) があり、印旛沼の水位を両モード運転で調節している。印旛沼の北部調節池と西部調節池は丘陵を掘削した印旛水路で連結されている。西部調節池の水は新川と いう分水嶺を越える丘に掘削された川で花見川と連結されている。大和田排水機(120m3/sec)が分水嶺をこえるためにあ る。印旛沼側の掘割工事により開削された疏水路部分である「新川」と、東京湾側の自然河川である「花見川」とを合わせて「印旛放水路」と呼ぶ。

吉高旛沼はオランダと同じく、北部も西部も土手に平行して外側にも排水水路が掘削されている。周辺の開拓地の水田からの排水はこの沼を囲む環状の排水路に 流れ込み、最終的にはポンプで沼に汲み上げている。たとえば物木落や北部調節池周辺の水を印旛沼の北部調節池に汲み上げる吉高(よし たか)揚排水機場や中央排水路の水を甚兵衛広沼に汲み上げる機場がある。甚兵衛広沼は北調節池に直結している。(よしたか)揚排水機場前の船着き場に ♂ モモイロペリカン君が1994年ごろから吉高機場近くの船溜まりに住みついて居るらしい。 飼えなくなって放鳥されたものらしく、えさは漁師の船に一緒に乗って出かけ漁師からもらっているようだ。自分で魚をとることを学んでいないらしく、餌にあ りつけないときは「ハラ減ったよー」と 自転車専用道路にでてくるという。 19才になっているはずだが、飼育されるペリカンは40年、生きるそうだ。 大きな鳥だから猫など怖くははいのだろう。サンタバーバラのスターンズ・ウォーフで釣り人から魚をもらっていたペリカンを思い出す。 この辺りはアングラーのメッカのようである。

友人の故飯田は千葉市稲毛区柏台に住んでいた。その近くに千葉市動物公園がある。その北側に彼がグランドキャニオンと呼 んでいた、巨大な渓谷がある。かっては花見川の支流の勝田川が作った渓谷と思われる 在は遊水地として使われている。 周辺で大きな工場があるところは不鮮明だが戸建むけの土地造成は大規模な土木工事をしていないため、かっての川にそった水田の跡が航空写真で見て取れる。


詳細計画

総走行距離45kmであるが長すぎるのでとりあえず、京成大和田駅までの31kmとし、花見川は省略とすると。乗換回数最少のルートは

鎌倉7:11駅⇒エアポート成田⇒9:23成田9:45⇒9:56JR成田線我孫子行き安食(あじき)

JR成田線安食駅→3km→長門川公園→2km→酒直機場→印旛沼北部調整池→印旛沼サイクリングロード14km→印旛沼西部調整池→八千代印旛栄自転車 道路 8km→新川遊歩道路4km→京成本線大和田駅

京成大和田駅17:03⇒京成快速羽田ターミナル行き⇒18:02新橋18:15⇒19:03藤沢駅

実施記録

前日の7日は一旦江ノ電に乗って出発したが天候不順として中止して帰宅した。電車の中で広角ビデオ・カメラをザック から取り出してベルトに装着した時、ビデオカメラの遠隔スイッチを落としたことに気が付かず帰宅。この探し物に1日浪費した。翌日、江ノ島駅に落し物とし て届けられていて回収できた。

成田で我孫子行きに乗り換え、下総松崎(しもうさまんざき)駅付近通過時に印旛沼が見えるか目を凝らしたが、周辺の丘陵に 囲まれた水田が見えただけだ。

計画通り安食駅着。安食駅近くのセブンイレブンで朝食と昼食を購入。国道356号を北上して印旛水門に向かう。国道から斜面を土手にのぼるとそこに自転車 専用道がある。気分爽快になって前進を続ける。左手に見える長門川はやけに立派だなと思いながらペダルをこぐ。地図も見ずに前進を継続する。右手の水田 (後で北辺田と判明)の排水はすべてポンプで利根川に汲み上げている。そのうちに矢口スーパー堤防の看板があり、かさ上げされた幅広の土地に矢口工業団地 がある。更に進むと左手に大きな橋が見えてきた。長門川にかかる富士見橋とおもいきや長豊橋とあり、利根川という看板をみた。あわてて地図を取り出すと、 なんと利根川土手を4kmも走ってきたと判明。



北辺田(きたべた)の排水 後方に矢口スーパー堤防


長豊橋

Uターンして元来た道を引き返す。途端に強い向かい風で難儀する。台風による南西の風だ。ようやく印旛水門にたどりつく。予定より8kmも余計に走ってし まったことになる。したがって本日は38km走ることになるはず。印旛水門で藤棚の下で川風に吹かれて朝食をとる。利根川の対岸の河川敷にセスナ機が着陸 している。大利根飛行場というものらしい。

まず目に入るのは印旛排水機場だ。これは印旛沼の水位が上がった時、利根川へ水を排出するときに使われる。無線で遠隔運転できるようにアンテナがある。そ の向うに印旛水門がある。これは常時開かれている。利根川洪水時に余剰水を長門川経由で印旛沼に取り入れる役目を持っている。



印旛排水機場


印旛水門

長門川にそって西岸を南下すると利根川に平行する将監川を渡る。釣り師がバッテリー推進器をつかってゆっくり船を操って釣りをしている。将監川はかっての 利根川の流れのひとつだったようだが今では切り離されて、盲腸のようになっている川だ。ここも護岸がなく自然豊かな風情のあるところだ。



将監川

成田線を渡って長門川に沿って南下する。やがて長門川の支流となった旧長門川に行く手を阻まれる。手持ちの古い地図には書いてなかったのだが旧長門川が長 門川から分岐する根元に新しい橋があったのだが、旧長門川を和橋までゆき、そこで渡り、旧長門川にそって再び長門川に向かった。増えた走行距離は 2.4km。この旧長門川は手が入っていないため美しい。旧長門川はかって印旛沼と利根川を結んでいたのだが今は盲腸のような存在のため自然のまま残って いるのだ。



旧長門川

長門川に沿って未舗装道を南下すると酒直水門と酒直揚水機場が見えてくる。酒直揚水機場は長門川の東岸に沿って設置され、揚水された水は水門の印旛沼川に 放流される仕組みだ。水運の便を考慮し、ロックも併設されている。



酒直水門と酒直揚水機場

土手の上の舗装された自転車専用をそのまま南下するとやがて印旛沼北部調整池に至る。白サギやカモが多数いる。神経質でカメラのシャッター音で逃げてしま う。



印旛沼北部調整池

印旛沼の西端、吉高揚排水機場前の船着き場に評判のペリカン君が元気にしていた。羽繕いをしている。



ペリカン君



北と西を連結するため丘陵地帯を掘削した印旛水路を通る。



印旛水路

西部調整池周りの八千代印旛栄自転車道は土手下にあって水面は見えない。そのかわり風がふきつけないのでマラソンの練習には適しているらしく、高橋尚子が 練習に使ったと書いてある。桜並木も心地よい日陰を作ってくれている。

途中ベストウェスタンのドライブインのような建物がある。不釣り合いなので、かえって調べると「ウィンドミル・クリニック」という眼科医院だそうだ。

鹿島川が西部調整池に流れ込む袂にレンタサイクルショップがある。ママチャリを貸してくれる。すぐそばにオランダ式風車がある。円形の池に囲まれ、跳ね橋 も用意されている。ここでアイスクリームのおやつ。



オランダ風車

オランダ村をでてしばらく行くと手繰川が印旛疏水路(新川)に流れ込むところで釣り師が鏡のような川面にバッテリー推進器をつかってゆっくり船を操って釣 りをしている。



手繰川のアングラー

ベンチで小休止していると本格的なギアで身をかためた引退者と思しきサイクリストがきて、自然と話をする。八千代の住人だとか。我がブロン プトン(12kg)を持ち上げてやはり重いという。彼のものはカーボンファイバー製でフレームだけで45万円。車輪が20万円、ハンドル2万円とか。たし かに軽い。全部で8kg程度か。ギヤを車輪外しモードに切り替えてレバーを引けば前後輪とも簡単に外せる。これをポケットに入る袋に収納し、航空機に手荷 物で預けられる。沖縄は道路がよく、渋滞もないため、3回もバイク担いで3日程の城周りをしたという。沖縄にも戦国時代があったのか城址が多いのだとか。 関東七名城や渡良瀬遊水地も殆ど回ったという。

道の駅で子猫にせがまれておやつのケーキを折半した。その後も子猫2匹がサイクリングロード脇で昼寝をしているのを見かける。新川の水位が次第に低くな る。ということは分水嶺に向かって登っていることになる。やがて大和田排水機場が見えてくる。4台のポンプはディーゼル駆動のようだ。排気ダクトが見え る。のこりの4台はモーター駆動のようだ。例の遠隔操作のアンテナが見える。ここで新川から汲み上げた水は花見川経由東京湾に流れているのだ。大和橋を 渡って大和駅に至る道は坂をのぼったり下ったり、結構自転車にはきつい。



大和田排水機場

予定より10kmも余計の52.8km走ったが予定通り駅に着き、5分の待ちで発車。よく走った。サドルを上げて膝が伸びきるようにしたた め腿の肉は引きつらなくなったが、ひざが痛くなる。日焼け止め薬の持参わすれて赤剥けの日焼けがおみやげ。

レンタサイクル利用の場合


京成佐倉駅から歩いて2.5kmの印旛沼西部調整池に鹿島川が流れ込む河口にかかる飯野竜神橋にレンタサイクル(営業時間:9時〜16時、定休日:なし、 料金:500円/日、TEL:043-486-8898)がある。(おらんだ風車のある佐倉故郷広場ない) 歴史博物館訪問も一興だろう。

これのメリットは自転車を持参する必要がないことだが、デメリットは必ずレンタサイクル店にもどらなければならないことだ。でもどうせ酒直機場より上流の 長門川公園までは自転車専用道路がないので、遊びならこれで良いかもしれない。

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Rev.November 28, 2013


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