湖水地方

2017年

ロンドンを起点とした湖水地方の3泊4日の旅である。1971年、 ブロンテ姉妹のハワースを 訪問のため、レンタカーでリーズに1泊旅行に出た。その帰りにスコッチコーナーまで北上してから西に転進した。ペンリスに達してから進路を南にとって湖水 地方の東端を夕刻南下した。時間がないため、実際の所、湖水地方に分け入ったわけではない。今回はロンドンの娘の家に滞在するのが主たる目的であったが、 その肝心の娘が仕事でオランダに数日出張するという。ならばその間に長年の課題であった湖水地方にでかけようとなったのである。

2017年月6月22日(木)

高速鉄道のバージントレイン1等車の指定席は日本でネット経由328ポンドで購入したものをロンドン到着直後入手。ユーストン駅からは改札もなしに乗り込む。不用な職員も改札機械も置かないとい う合理主義には脱帽。どうせ座席指定なので車掌が改札しなければならない。ならばとホームに入る改札など無駄としないのだ。自由席もあるのだが、切符さえ あれば問題なし。これを見るとJRが新幹線入口に設けている改札機械と要員は全くの無駄ということになる。乗せてやる式の事大主義の官僚的発想からいまだ脱却できていない。そして高い料金をふんだくるのだ。さて全 ての席はテーブルを挟んで対面となっており、軽食と お茶かコーヒーが無償で給される。ここらへんは航空機の発想を取り入れている。

途中、運河と鉄路は互いに絡み合うように走る。そもそもリチャード・アークライトが水車を動力とした紡績機を発明してから始まった産業革命は湖水地方の南 東にある山岳地帯のピーク・ディストリクトにあるダーウェント渓谷に始まるのだ。スティーブンソンの蒸気機関の発明はその後のこと。こうして産業革命は英 国の北部で発生。物流は当時、運河を建設して馬に尾曳かせておこなった。鉄道はそのあとに運河に沿っ て敷設されたことがわかる。土地は全くフラットではない。したがって運河は等高線にそって蛇行する。こうして鉄路と運河は互いに絡み合うように走っている のだ。



運河に平行して走る鉄道

切符は安い時間帯を選んだためか、プレストンで次の列車にのりかえなければならなかった。次の列車がどのホームに入るのか表示されないので困ったが、駅員に聞 いて同じホームと分かった。Oxenholmでレイク・ディストリクト線に乗り換える。ディーゼル車である。

湖水地方のウインダミア駅を降りてgoogle mapを見ながら予約したホテルに向かって歩いていると、同じ年恰好の日本人の老夫婦が我々の後をつけてきてinformationはどこかと聞く。われわれも そこにゆくのだと安易に考えてついてきたとのこと。そこでホテルはどう行くか聞くつもりとのこと。これは10年前の我々の姿だ。折角坂を下ったのだ が、駅まで戻ればそこに在るはずと冷たく答えた。

我々はBeaumont Houseという駅に近い宿を選んだ。(International Hotel No.547) 330ポントであった。宿にチェックイン後、まだ時間があるのでウインダミア駅北側にある山Orrest Headに登ることにした。View Rangerを道案内に登った。そのルートは下図の通りである。東側の牧場内を登る登山口入口に家畜が逃げ出さないように柵のドアがある。この開け方が分 からず時間を要した。単に力の問題とすぐ分かった。View Rangerの自動トラック記録をスタートさせたが、途中で携帯カメラ使用のためにView Rangerを切ったため、途中のトラックは飛んでしまったが、実際には点線のフットパスに沿って登った。林に入る処で牧場は終わる。山頂経由、西側の牧 場外の登山道を下ってたどり着いた地点が宿だ。

始点の東側のパブリックフットパスのドアを苦労してあけて石作りのヘッジにそって登り始める。



このルートは一般的ではなく、若いカプルとすれ違っただけだ。



登り

途中から森林に入り、反時計回りに登ると頂上付近は森林帯を抜け草原になる。ワラビをとる人がいないので1mにも達している。その下はブルーベルの層に なっている。頂上は表土が剥がれて岩が露出している。頂上には西ルートで登った人が大勢いた。眺望は360度で素晴らしい。ウィンドミア湖は山頂の南西に 横たわっている。


Orrest Head山頂からウィンドミア湖方向(南西) 

北側には石壁に囲まれた牧草地と農家の牧歌的風景が見える。グラスミア湖の東にある禿山が遠くに横たわる。



Orrest Head の北側の眺望 望遠レンズ

東方はるかかなたに、ウィンドファームがあった。南にはランカスターの海が見える。下りは西のルートをとる。

夕食はウィンドミアの中華料理店を利用。


2017年月6月23日(金)

朝起きると雨だった。今日の予定はビアトリックス・ポターのヒルトップ訪問だ。娘に借りたレインコートを来て最寄のバス停から1名当たり2.3ポンド支払ってボウネスに向かう。

ボウネス・ピアでヒルトップ往復のフェリーとバスの切符を買って、ウィンドミア湖の対岸に向かう。



フェリー

対岸の船着き場から525番の定時バスでニアソーリに向かう。バスといってもミニバスである。途中、ファー・ソーリを通過。ここに田園のなかにかわいらしい教会が見える。運転手 がニア・ソーリに関し、なにか説明するがわからない。そこで日本ではプライム・ミニスターのことをアベ・ソーリというんだと冗談をいったが伝わらなかっ た。

ニアソーリのバス停で下車、11ポンドの入場料金を支払って指定時間にビアトリクス・ポッターが半生を過ごしたヒルトップを参観する。ナショナルトラストが一帯のすべてを管 理している。説明員がポッターが後年、著作権収入の相談に乗っていた弁護士と結婚して過ごした家は下の大きなクリーム色の家(非公開)だったが、ポッターが愛着を もっていたのはこの小さな家だったと説明。土産店でスレートのコースターとマグカップを購入。



ヒルトップ

バス停近くのパブで昼食。食後、公開されていないポッターが後半生を弁護士と過ごした家の裏から北の池まで行く道路を少し登るとファー・ソーリにあるかわいらしい教会がみえたので望遠レンズにとらえる。



Saint Peter's Parish Church Sawrey 望遠レンズ


これで本日の目的は達成したのでバス停で帰りのバスを待つ。全く逆のコースでボウネスに戻る。偶然に昨日駅前であった老夫婦に会ったが、彼らのホテルは Lindeth Howeというホテルだという。駅からはタクシーでしか行けない遠いところであった。「地球の歩き方」にリストされているホテルでビアトリックス・ポッ ターが母親のために所有していた建物を利用しているという。遠くて不便だと言っていた。自前のペースで動き回るにはやはり実際 に地図を見ながら、歩ける範囲で選ばないと。

まだ時間があったのゆっくりウィンドウショッピングしながらホテルまでもどった。かなり坂道を登る。夕食はウィンドミアのインド料理店を利用。雨 はあがっていたのに夕刻急に降り出す。たまたまレインコートを着ていなかったのあわてて帰ったが、街中で、「気候変動は終わった」という声を聞いた。


2017年月6月24日(土)

本日はロマン派の詩人ワーズワースが愛した村グラスミアまでバスで移動し、そこで湖畔散策するのが目的である。ウィンドミア駅前の555番バス停で往復切符を1人8ポンドで購 入。小一時間走ってグラスミアで下車。東北方向に禿山が見える。Seat SandalとFairfield Peakの方向だが、その前山かもしれない。



30ペンスノ有料公衆トイレを使ってから村内を散策始めると有名なセイラ・ネルソンのジンジャーブレッド店があった。観光客はそちらに夢中だが、脇に 門があるのに気が付いた。これを入るとオズワルド教会の墓地で、探すとワーズワース一族の墓があった。ここを訪問する観光客は皆無。



ワーズワース一族の墓

教会は修理中。脇を流れるロゼイ川の橋を渡るとき、川辺に素敵なティーハウスがあった。グラスミア・ティー・ガーデンズというのだそうだ。



グラスミア・ティー・ガーデンズ

グラスミアは氷河が作ったU字渓谷なのだろうが、ロゼイ川はその水をあつめてグラスミア湖に注いでいる。広い谷底を横断して対岸に達するとそこに ワーズワースのDove Cottageがあった。ここは昔、スコットランドヘの街道に面していて旅籠だったのを改造して一族の自宅にしたのだそうだ。



Dove Cottage

裏庭は斜面に面していて2階のフロアと同じレベルだ。



Dove Cottageの庭


グラスミア湖からロゼイ川が流出する地点に向かって歩いていると、列車の中であいさつした日本人の老夫婦に会った。グラスミア湖を反時計廻りで一周したんだと いう。われわれはそれからロゼイ川にそって下った。ロゼイ川がライダル・ウォーターという小さな湖に入る地点で右折し、ライダル・ウォーターの南岸をライダルマウントまで歩くことにした。ライダル・ウォーターの対岸に白い建物があって美しい。



ライダル・ウォーター

若者の一団がマウンテンバイクで楽しんでいた。これで本日の目的は達成した。あとはライダルマウントから555番バスでウィンドウミアに帰った。


2017年月6月25日(日)

帰路は同じ予約済みのバージントレイン1等車で帰った。ディーゼル車が遅れて Oxenholmに到着して心配したが、本線のほうもそれに合わせておくれるため問題なし。途中奥様と子供がまちがって途中下車してしまったというマン チェスター行のインド人客がうろたえて乗務員に連絡を頼んでいたのが事件であった。途中、明らかに人工物とみえる円錐形の小山を2つほどみかけたが不明であった。

ロンドンに戻る
カンタベリー紀行
ケンブリッジ紀行

July 7, 2017


トッ プページへ