鳥羽レース

湘南魔火矢組の代表、魔宇飛亭号(マウピティ号)が 2005年開催の第46回鳥羽レースに出場し、優勝を狙うという。 秘密兵器はオーナースキッパーのヤマギンに加え、米国仕込みのまだ30才そこそこの若きヘルムスマン、トシクンの起用という。E氏は持ち舟シエラザード号で江ノ島にフィニッシュするマウピティ号を出迎えようと企画した。

マウピティ号

鳥羽レースの名称はいつのころからか鳥羽パールレース と変った。御木本パールがスポンサーになったからパールが入ったかと勝手に推察しているがいかがなものだろうか。名前がどう変ろうと日本セーリング連盟主催のメジャーなレースの一つである。昔は鳥羽港からスタートした。石原慎太郎の「男の海」収録の静謐の劇ー'71鳥羽レースの章に仲良し艇のマウピティ号クルーの話がふんだんにでてくる。

7月22日(金)10:10に五ヶ所湾口楓1号ブイ沖0.5海里をスタートするという。鳥羽港より少し長いコースとなったようだ。遠州灘を越え利島を反時計回りして江の島までの180海里をノンストップでセーリングするわけだ。

7月22日(金)夕刻に灰色の海上自衛隊の「すがしま」型の510トンの中型掃海艇が湘南港に入港した。通常は海上保安庁の巡視船が来るだけなのに何事かといぶかっていたが本レースの本部艇になるという。

湘南港に入港する自衛艦 (7月22日)

船で出迎えるといっても、なにせ風任せのため、何時フィニッシュするかわからない。E氏が湘南魔火矢組の本部「すし政」に電話してもわからないという。分かっているのはタイムリミットが7月24日(日)16:00、ファイナルパーティ と表彰式が7月24日(日)16:00〜17:30ということだけである。

E氏が別の船に乗船している伊東氏を携帯で呼び出してみたが、強風にリギンが鳴っている音が聞こえるだけで要領を得なかったという。というわけで船でのお出迎えは断念。我が家からウオッチすることにした。

7月22日(金)夕刻から湘南港に停泊していた自衛艦「つのしま」は7月23日(土)正午には出港し、江ノ島沖で待機している。 風は北よりの風のようで目前の海は静かなものである。

昨年のせてもらったケロニアIII世号も参加しているのかしらなどと思案しながら白馬岳登山の帰りに買い求めた丸ナスに切れ目を入れて油・砂糖・味噌を詰め、メリケン粉の衣を付け、自家製のミョウガの葉でくるんで蒸かす家伝のオヤキを作る。これを肴にビールを飲みながら時々双眼鏡で沖をみながら観戦。

観戦中震度5弱の地震であわてて調理場の火を消し、勝手口を開けて逃げ出すか思案する騒ぎに。

夕闇せまる18:00になっても「つのしま」以外の大型艇の姿なし。今回は多少もやっているし、このところ冷水塊が遠州灘まで張り出してきているので濃霧が頻発し霧による海難事故も多い。利島回航なら本船航路からははずれているので多少安全かもなどと考える。

18:30「すし政」からE氏に入った情報ではあと10海里(18km)でフィニッシュとのこと。もう大島も過ぎていてちょうど初島から江ノ島に回航中のシエラザード号のエンジンが停止したあたりだ。 もうむずかしいことはない。ただ暗くなってからの到着となろう。

暗闇がせまると「つのしま」は満艦飾ライトを点灯。

19:50江ノ島の灯台下で観戦中のE氏から残り3海里でマウピティ号がファースト・フィニッシュ予定と連絡が入る。

双眼鏡でみていると20:00ファースト・フィニッシュするセールボートあり。マウピティ号か?自衛艦と江ノ島灯台の間を過ぎればフィニッシュなのだろう。 「つのしま」がサーチライトをフィニッシュ・ライン方向に照射しているため、フィニッシュ・ラインを過ぎるとき帆が明るく輝くのでそれと分かる。風は東南からの微風。1位艇はスターボード の青ライトをこちらにむけてフィニッシュ。そして船首を風にむけて帆を降ろし、機走で湘南港に入る。34時間かかったことになる。直線距離のノミナルスピードは5.3ノット。実平均スピードはこの1.4倍の7.4ノット位か。

20:30から20:45にかけ2-6位艇が団子になってフィニッシュ。3、4位艇はほぼ並んで、ポートサイドの赤灯をこちらに向けてフィニッシュ。5位艇は 「つのしま」の向こう側をポートサイドをこちらに向けたまま行き過ぎ、タックしてフィニッシュ。

21:00までに10位艇まで双眼鏡の中に視認したところで1時間の観戦中止。夜間というのに湘南港に入らず、三浦半島のホームポートに機走で帰る船もある。

伊豆半島の伊東の方角に花火が見える。

21:00入港するマウピティ号のもやいをとったE氏の話によるとマウピティ号は到着順3位だったとのこと。レーティング補正でOCR5位とのことであった。利島回航のとき最大風速28ノット (14.4m/sec)波高5mの中、デッキに崩れる大波で紅一点のクルー、クミチャンはバウからスターンまで流されたという。この強風で3本あるスピンハリヤードの1本を失ったという。乗船していたオーナーの岩田氏は「オレも歳 か、体が敏捷に動かなくなったよ」とボソッと語って自宅に引き上げたそうである。

スピンを展帆してフィニッシュした艇は暗夜のため、5位艇だけしか目撃しなかったが、スターボードタックでフィニッシュした全艇がスピンを展帆していたという。

各艇はGPSを持ち、SR3.29.1の船舶用無線送受信機、すなわち国際VHF又は衛星携帯電話搭載を義務付けられていたが、ロールコールしても実際には役に立たず、江ノ島ヨットハーバーにある大会本部でもレーダー上の影像がどの艇に相当するのか分からなかったという。

7月24日(日)朝になっても「つのしま」は大分沖合いに停泊している。我慢強く、タイムリミットの16:00まで待機する気配であったが、全艇帰還したのか、15:30には 「つのしま」も湘南港にもどった。

July 28, 2005

Rev. May 20, 2008


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