クジラ・イルカ・マグロのPCB・水銀蓄積

2001年6月9日米国からのシングルハンド艇が横浜ベイサイドマリーナを訪れた。スキッパーのマイケル・リッピーはサンタバーバラの近く、オックスナードで生まれ育った人で、鯨保護に熱心な人である。ハルに鯨保護のメッセージが大書してある。立ち話したとき、彼は「鯨にはPCBなどが蓄積しているので食べないほうがよい」と熱心に説得しようとする。グリーンウッド氏は戦後の食料難のころ、脂皮を食べさせられ、まずいと思ったのでもとより異論はないが、そのような話が日本ででないのはなぜか?捕鯨を目のかたきにする米国人が誇張しているのかと思った。

ところが2002年8月8日の朝日新聞によると調査捕鯨で捕ったミンククジラの脂皮を市販している財団法人日本鯨類研究所が脂皮には厚生省の暫定基準値0.5ppmを上回る0.75ppmのポリ塩化ビフェニール(PCB)が検出されていたにもかかわらず、これを公表せず、脂皮を薄切りにしてゆでる「さらし加工」を加工業者に指導するだけに止めていたとのこと。日本鯨類研究所は捕鯨業を保護育成しようとする農水省系の研究機関だろう。農水省の捕鯨業保護育成政策を阻害する情報を秘匿する動機は大いにある。

この記事で「捕鯨を目のかたきにするおせっかいな米国人」のイメージが消え去り、税金を使って知りえた国民の健康に危険をもたらす情報を秘匿する農水省という悪いイメージがグリーンウッド氏の脳裏に定着した。

August 2002


この記事を書いて2年経過した10月13日の朝日新聞に農水省が魚に含まれる平均メチル水銀を公表したと報じた。これによるとコビレゴンドウクジラ1クラム中1.49マイクログラムとのこと。バンドウイルカは6.62マイクログラムである。ツナ缶詰は低く、0.11マイクログラムだから10倍以上ある。マグロはこの中間である。

PCBなどのダイオキシン類について発表しているくだんの農水省のサイトを覗くと魚類のデータはあるが、なぜか鯨は公表されていない。ちなみにマグロが1グラム中13ピコグラムで含有が一番高く、イワシは1ピコグラムで一番低い。サシミの好きな人は要注意。

いくら食習慣とはいえ、また魚の不飽和脂肪酸の効能もあるとはいえ、食物連鎖の頂点にいる人間がわざわざ汚染物質が高濃度に蓄積した特定の魚をありがたがって食することもなかろうに。舌で食べているのではなく、頭で食べているのではと疑う。それも金にあかせて世界の魚を食い尽くしつつある 我々日本人はどうかしているのではないか?

October 13, 2004

Rev. January 31, 2006


調査捕鯨は実態は調査とは名目で補助金によって成立している赤字漁業と化していて無駄な税金を使う公共事業化しているのとのこと。

July 9, 2006


マグロ、サケへのダイオキシン類の蓄積の原因に関しては「漁業と農業の環境問題」を参照。

December 12, 2006


環境省の調査によると捕鯨の町とよばれる和歌山県田太地町の1,000のうち、43人の毛髪からWHO基準50ppmを越える水銀が見つかった。最高値は139ppm、平均値は8.26ppm。全国平均2.12ppmの3.9倍であった。

最近1ヶ月に鯨肉を食べた人の平均値は15.2ppmで更に高い。水銀は食物連鎖の上位にいる動物に濃縮しているので注意が必要。

May 10, 2010


英国人の料理人がモロッコからトルコまで旅して地中海料理を紹介するBBCの番組をみた。ここ地中海沿岸諸国の肉料理にはクミン、レッドペパー、コリアンダーの葉を適当に振りかけて料理したものを薄焼きのやわらかいせんべい(ホブス、あるいはナン)で包んで食するものが多く、肉食系の私の食欲をそそった。遊牧民の料理とか。わざわざ出かけなくとも、モロッコ料理やトルコ料理の本探して試してみようかと。

日本の庶民は天武天皇以降肉食を禁じられ、イルカやクジラの肉を魚だといってホンネとタテマエと割り切って食べてきた。英語を母国語にしている連中は英語で書かれた食文化しか知らないため、イルカやクジラを食する日本人は地球環境を破壊するものすごい野蛮人に見えてしまう。だから和歌山県田太地町の漁師達がイルカを殺すことを弾劾する映画「ザ・コーブ」のようなものがアカデミー賞をとることになる。

食文化の逆宣伝としてこれらの哺乳類をスパイスで料理した食べ物を海の遊牧民の料理とか称して、欧米人が旨そうに食う英語番組をNHKなどが製作して世界に配信すればバランスがとれるのかなとチョット思った。

ただ、イルカやクジラのような哺乳類に加え、マグロですら肉食で食物連鎖の頂上にいるから有害成分は草食性の羊や牛より蓄積しているはずで怖い。やはりイルカ、クジラ、マグロは敬遠したほうがいいのではと思う。日本政府はイルカやクジラを食えと宣伝しているようだが、水俣病のような集団訴訟になるかもしれないと考える役人がでてこないのも不思議だ。

July 9, 2010


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