メモ

シリアル番号 表題 日付

744

ソアソンの花瓶 Vase de Soissons

2003/08/09

ギリシアの民主主義と東洋の専制政治の違いは、個人が私有財産を持つか、君主が全資産を所有するかということである。最近は教えられなくなったそうであるが、「ソアソンの花瓶 」とはかってフランスのグラマースクールで教えられた私有財産権に関する寓話である。

ソアソンの花瓶は美しい花瓶で、フランク族の一兵士がガリアでの戦いで教会から略奪したものだった。クロヴィス王は、彼が夢中だったキリスト教徒の女性の ご機嫌を取るためにも、その花瓶を教会に返還したいと考えていた。しかしその花瓶を奪った兵士は返すことを拒否した。その花瓶はまぎれもなく彼の所有物で あり、そのことを主張するために彼は王の前で花瓶を割った。「あなたのものはあなたのもの、私のものは私のもの」と主人に訴えた。その後、軍隊が王の前に 整列したとき、クロービス王は花瓶を割った兵士の前に立ち、サンダルをどうかしたのか、とたずねた。そして兵士が前かがみになって足元を見たとき、王は兵 士の頭蓋骨を戦斧でたたき割った。「おまえのものはおまえのもの、だがお前は私のものだ」

デビッド・S・ランデス著「強国論

クロヴィス王はベルギー地方を支配していたサリー・フランク族の王だが486年、他のフランク族と同盟しソアソン(現Soissons、 Aisne県)でローマのガリア総督シアグリウスを破った。この戦いを「ソアソンの戦い」という。これでクロヴィスは北フランスにおけるフランク王国の領土を確立し、メロビング朝 (Merovingians)の基礎を固め、ソアソンを首都とした。メロビング朝の名はクロヴィスの祖父、メロヴィスにちなんでいる。クロヴィスはガリアでキリスト教を初めて受け入れた。

Rev. June 23, 2005


フランス人の留学生に聞くと、この逸話は歴史の時間に教わったそうであるが、最近は時間が少なくなり、教えてもらえないそうである。Vase de Soissonsでインターネットを検索するとフランス語の沢山のサイトがあるが、英文のサイトではクロビス王はキリスト教徒の女性のご機嫌を取るためで はなく、ビショップの要請に応えて花瓶を返そうと考えたとある。また兵士は斧でこの花瓶を割った後"Thou shalt receive nothing of this unless a just lot give it to thee." と叫ぶ。lot とは古英語で「分け前」の意味。この逸話はクロビス王の死後世紀の時点でツール(Tours)のビショップ Gregoryによって書かれた。

Rev. August 11, 2005



ニーアル・ファーガソン著「文明」では所有権は
西洋が覇権をとれた6つの真因だとしている。

Rev. September 9, 2012


トップ ページヘ