読書録

シリアル番号 870

書名

時間はどこで生まれるのか

著者

橋元淳一郎

出版社

集英社

ジャンル

サイエンス

発行日

2006/12/19第1刷
2007/1/24第2刷

購入日

2007/7/30

評価

まえじまさんの推奨本

推薦の言葉は「自分で呼んで面白く、理科大化学科3年生の「化学工学」前期授業終了にあたり、
学生諸君にも一読を薦めたものです。不可逆過程〜エントロピ−が時間の概念を必要としたことや、生命がエントロピ−増大の法則に抗して秩序を維持できることに波動方程式のシュレディンガ−先生も困った話」というものであった。

この本を奨められた時すぐ連想したのは杉本大一郎東大名誉教授の「進化とななにか」という学士会での講演であった。

参院の総選挙の日に読み始めて読破。無駄のない解説で非常によく理解できた。

そうして昔、途中まで読んで挫折して本棚に飾ってあったロジャー・ペンローズの「皇帝の新しい心」という非常に高価な本を思い出し、パラパラページをめくってみると 相対論と量子力学が少し違う表現だがこれでもかと書いてあった。しかしそれにしても橋元氏の説明法は原理をしっかり理解した上で、自分流に整理した表現をしているのでなかなかの 人だと思いった。これに刺激をうけてペンローズの本をじっくり読みなおしたが、量子重力論以降は納得できなかった。

ニュートン、アインシュタイン、シュレーディンガーの理論は時間の方向性に関係ない線形力学であるため、時間の方向性が説明できない。熱力学あるいは統計力学によってはじめて時間の方向性が説明できるのである。

しかし時間は宇宙には多数の原子があったことにより始まったとみるのが正しいのだろう。そして宇宙がビッグバン以降膨張したために進化が可能となり、悠久の時間の間についに無生物から生物ができ人間にまで進化したわけで、ロジャー・ペンローズが夢想したようにいまだ存在しない量子重力論という創造主がいたためではない。

イリヤ・プリゴジンの弟子が書いた熱力学を根拠とする時間の不可逆性についてのしつこい解説「時間の矢、生命の矢」も読んでいるが、現物が我が家のどこかに埋もれて発掘できない。

過去に読んだ本ではN.ジョージェスク・レーゲン著「エントロピー法則と経済過程」も同じことを述べている。

Rev. August 3, 2007


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