シリアル番号 | 691 |
書名 |
ダビンチコード |
著者 |
ダン・ブラウン |
出版社 |
角川書店 |
ジャンル |
小説 |
発行日 |
2003 |
購入日 |
図書館予約2005/5/2 原著購入2006/6/6 |
評価 |
良 |
原題:The Da Vinci Code by Dan Brown
世界で1千万部うれたというベストセラー本である。
書店で何度も手にとったがハードカバーは買うのをためらっていた。友人が原著で読んでいるというが原著はしんどい。それで鎌倉図書館に予約した。人気があるため、1ヶ月経つが順番がまわって来ない。その間、インターネットで調べてわかったことは下記のとおり。
なかでもhttp://priory-of-sion.com/が一番充実している。
「事実に基づいている」と著者ダン・ブラウンが主張する小説「ダ・ヴィンチ・コード」が依拠した種本の一つはマイケル・ベイジェント、ヘンリー・リンカーン、リチャード・リー共著の「レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説」である。
レンヌ=ル=シャトーはスペインとの国境、ピレネーに近い寒村に実在するシャトーである。
しかし彼らが取材したメロビング朝の直系の子孫を自称するピエール・プランタードのホラ話だったことが判明している。(ハプスブルグ家がメロビング朝の子孫)
シオン修道会も実在したがこれは20世紀になって営利目的に作られた組織でイエスの血統とはなんらの関係もないことが、判明している。当初ヘンリー・リンカーンが作成した番組を放送したBBCも、1996年にその誤りを認める番組を放送している。
種本が依拠していて事実なのはカソリックの教義が確立する頃の2-3世紀の古代キリスト教グノーシス派のそれである。グノーシス
派の秘儀的な精神知についてはブラウンが「ダビンチコード」でティービング氏やラングドン氏に語らせている。
種本にはこのほか中世ヨーロッパで一時有力だったキリスト教異端のカタリ派について、十字軍派遣の隠された目的は異端の抹殺であったこと、メロヴィング王朝がキリストの血統をひく
ということ、テンプル騎士団や薔薇十字団の目的、聖杯伝説、新古典派の画家ニコラ・プッサンの絵の隠された秘密、などが書かれているという。
ついでにフリーメーソン、錬金術、海賊船のトレードマーク・髑髏とクロスボーンのルーツなどの逸話を散りばめてあるらしい。
ダン・ブラウンの本にはレオナルド・ダ・ビンチ、ボッティチェリ、アイザック・ニュートン、ビクトル・ユーゴー、ジャン・コクトーがシオン修道会の総長だったという話が冒頭にでてくるが
、シオン修道会の話のほとんどはピエール
・プランタードがでっち上げたホラ話のようである。
このように事前にインターネットで入手した情報では読む価値はないように感じ、翻訳本はついに購入しなかった。しかし2005/6/6にフランス旅行に出かけた折に、乗り継ぎのヒースロ空港で待ち時間つぶしにペーパーバック本を7ポンドで買った。丁度パリを歩いたのと同時進行であったので土地勘がリフレッシュされるため、定番の
フランス警察との追っかけごっこのシーンと比較して読むと結構引き込まれ、挫折せず読めた。帰国までに半分読破し、帰国して一気に読破。娯楽として楽しませてもらった。
塩野七生が「ローマ人の物語XIII」でも書いているようにコンスタンチヌス帝が召集したニケーア公会議などの歴史上の事実はきちんと書いてある。ローマ帝国維持のためにキリストを三位一体として神格化して政治的に利用するために、新約聖書が編纂され、この教義に反する人間キリストを伝える教義は焚書されたことも言及されている。 焚書の難を逃れ1950年に発見された死海文書やコプト教に残っている教義などにニケーア公会議で否定された教義が残っているとティービング氏に語らせている。ただシオン修道会なる団体 はフィクションであるという。
レオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐がニケーア公会議後抹殺されたキリストとマグダラのマリアは夫婦であったとの解釈がティービング氏によって展開される。 しかしこのような解釈は他の画家も描いていると指摘されている。
フィナボッチ数列を暗証番号にしたり、5角形の星型の線が黄金分割 で交差するとか、5角形の星型と5弁、鏡文字をうまく使っているのにも感心した。
ローマ法王庁は本書を禁書に指定したというが、むべなるかな。回教の世界なら、著者は暗殺されているかもしれない。ただ本書が信者の信仰を損なうかというとほとんど関係ないだろうと思う。
この本を持ってヒースロー空港のセキュリテー・ゲートを通過すると英国人のセキュリティー要員が「この本は一時的に没収する。明日また出頭せよ 」という。どうしてという顔をすると「それまでにおれが一晩で読んでおく」といったジョークを吐いておどけてみせた。 無論、武器など隠していないかチェック後即返却してくれた。機内でもブリティシュ・ミッドランド航空のスチュワーデスが「それ 、私も読んだが面白かったわ」とコメントしていた。
1995年に読んだバーバラ・スィーリングが死海文書と聖書を解読して得た発見と称する「イエスのミステリー」という本を懐かしく思い出す。 この内容はメモ「イエスの生涯新説」にまとめてあるが、ここでもイエスはダビデの子孫でイエスとマグダラのマリアは結婚していたと書いてある。 しかしダビンチコードでは更に踏み込んでマグダラのマリアは売春婦ではなく、ユダヤの王家ベンジャミン家の出身であるとしている。
原著で読んでよかったと思う。P.S.と書く毎にPriory of Sionを思い出すだろう。
Rev. July 07, 2005