読書録

シリアル番号 427

書名

兄弟

著者

なかにし礼

出版社

文芸春秋社

ジャンル

私小説

発行日

1998/4/10第1刷
1998/7/30第12刷

購入日

1999/07/16

評価

民放TVでこの本をベースに作成した番組を見て、近くの鎌倉市図書館に依頼して探してもらった本である。
重いストーリーを描ききった力作である。

「あなたの過去など
知りたくないの
済んでしまったことは
仕方ないじゃないの」

菅原洋一の「知りたくないの」でデビューしたなかにし礼が作詞した歌を集めた番組があったが、良いと思われるものはほとんどなかにし礼作詞だとの印象を持ったことがある。この歌を作らせたのが破滅的に生きた実の兄だったという秘話を知らなかった。

「私が書いたたくさんの歌は全てこの小説のためだったような気がする」と本人が言っているがその通りだと思う。完読してすぐCD店にゆき、 菅原洋一の「知りたくないの」と北原ミレイの「石狩挽歌」を買った。

「海猫(ごめ)が鳴くからニシンが来ると 赤い筒袖のヤン衆がさわぐ・・・」

いつの日か、増毛(ましけ)の浜に行きたいものだと思っていたが、2003年7月の利尻・礼文島、サロベツ原野 歴訪の旅の時と2004年8月下旬に北海道バイク・ツーリング・パート2で2度も訪問することができた。

増毛の浜の北は阿分(あふん)から南は雄冬(おふゆ)左は箸別の岬、右は舎熊(しゃぐま)の間がまで朱文別の入り江だ。増毛の語源はアイヌ語のマシュケ(鴎の多いところの意味)


なかにし礼 は亡くなったが生前にNHKが録画した終戦の逸話がすごい。一家は満州造り酒屋でやっていた。お母さんが世事に長けた人で軍関係者に日ごろから付け届けをしていて人脈形成していたおかげで満州開拓団を置き去りにして軍が軍用列車をしたてて、夜間逃亡するその列車にひそかにもぐりこませてもらった話がでてくる。民間人を置いて逃げる軍人も自分達がしてはならないことをしているという自覚があるのでとても重苦しい雰囲気だったという。当然まだ終戦前だからソ連軍が機銃掃射を浴びせてくるのでそう簡単な旅ではなかった。列車を無蓋車にのりかえて逃亡は続くのだが、追いすがって乗せろと懇願する開拓団をピストルとサーベルで脅して振り切って逃げたという。

August 14, 2010


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