読書録
シリアル番号 |
1249 |
書名
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知の不確実性 「史的社会科学」への誘い
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著者
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イマニュエル・ウォーラステイン
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出版社
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藤原書店
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ジャンル
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社会学
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発行日
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2015/10/30第1刷
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購入日
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2015/10/28
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評価
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優
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原題:The Uncertainties of Knowledge by Immanuel Wallerstein 2004
三浦半島歩き第5ステージの帰りに鎌倉駅西口の「たらば書房」で衝動買い。大枚3枚。発行日より2日前。
衝動買いした理由はブローデルとかプリゴジーヌの名前が目次の中に散見されたからである。
200年まえに哲学と科学が離婚してC.P.スノーにより「二つの文化」と
いわれるようになって以来、哲学は経済学、政治学、社会学などの分かれたが、科学ほど成果をあげていない。科学の分野ではポアンカレが三体問題で気がつき、イリヤ・プリゴジーヌが拡張した複雑性理論が発展しつつある。カオスの世界は実は電磁気学のマックスウェルも気象学のコンラート・ローレンツも気がついていた。しかるに文系学科はデイヴィッド・オレルの「なぜ経済予測は間違えるのか? 科学で問い直す経済学」やニコラス・タレブの 「ブラック・スワン」のように無力だ。文系学科の再活性化は科学の手法を取り入れて再編成しなけ
ればならない。この断絶が史的社会科学で埋められるかどうかということになる。すなわち現在の世界システムは複雑システムでその分岐点に差し掛かっている
とみられるが、うまく次の世界システムに移行することを理解し説明できるようになるのかどうか。
著者はユダヤ人でニューヨーク州立大学ビンガムトン校/ビンガムトン大学(英語: The State University of New York
at Binghamton/ Binghamton
University)のフェルナンブローデル経済・史的システム・文明研究センター所長にしてイェール大学シニア・リサーチ・スカラーである。カール・
マルクスがその政治経済学の根底にすえた唯物弁証法や史的唯物論、国際政治経済学での従属理論、それに歴史学のアナール学派の代表的存在であるフェルナ
ン・ブローデルの研究方法を踏まえて、世界をシステムとしてカオス理論で理
解しようというものである。すなわち世界システムの本質は決定論
的カオス現象とみる。現在世界はカオスの分岐点に差し掛かっていると説く。その理由は「近代世界システムにおいて世界経済のもたらす利潤分配は著しく中央
に集中す
るが、統一的な政治機構が存在しないため、この経済的不均衡の是正が行われる可能性は極めて小さい。その為、近代世界システムは内部での地域間格差を拡大
する傾向を持つ事になる」。または「金利が長期間低くなったまま上がらない」のもそのサインとする。そして個人主義的自由世界で生きると支配構造が最少
で、選択の多様性が最大限にみとめられるという「ホイッグ史観」的世界観は経済的な特権階級の自己満足的ものの見方でしかなかった。保守主義者はヒエラル
キーが望ましく、不可避であると主張。ヘーゲル主義はこうした主張を支持する論拠を提供した。「テクノロジーが今後も発展し続けるかの確証もな
い」。現在の世界システムは中世最後の神聖ローマ帝国皇帝カール五世のころ分岐点があり、資本主義経済が始まった。次の分岐点は何をもたらすのか?
ちなみにビンガムトン大学の設立においてはIBMの初代社長で大富豪だったトーマス・J・ワトソンが大きく関与した。フェルナン・ブローデル経済・史的シス
テム・文明研究センターはアルメニア人の実業家カルースト・グルベンキアンの遺産を元に設立されたグルベンキアン財団の助成を受けている。
Rev. November 4, 2015