PRO/IIの紹介

グリーンウッド

プロセス制御システムとプロセス・シミュレーション・プログラムPRO/IIのプロバイダーであるインベンシス・プロセスシステムズ社にて「LNG・ガスプラント産業の黎明ーそしてLNGの後はー」というタイトルで講演させてもらった御縁で短期間、アカデミック・ディスカウントで試用させてもらう機会を得た。

グリーンウッド氏の現役時代はまだプロセス・シミュレーション・プログラムは存在せず、K-Valueチャートやエンタルピー線図を参照しながら手計算で 気液平衡や熱収支計算をしていた。MITで勉強した前島君を中心にしてフォートランでプログラムした社内開発のシミュレーション・プログラムが完成したころは概念設計だけして若い世代に計算してもらって済んでしまった。

会社も引退し10年経過したこの時期にプロセス・シミュレーションに挑戦などとは酔狂な話だが、すでにバイオマスガス化発電シミュレータエクセルを使って作ったものにとっては大いに興味ある。エクセルでは反応平衡、エンタルピー計算、伝熱計算、圧力損失計算、エンジン出力計算を行う式を書き込まねばならず、収斂計算も初期値を入力して一つずつ仕上げてゆかねばならない。眼前にプログラミングせずフローシートを書き、データを入力するだけて良いうソフトがあれば触ってみたくなる。IPS社のご好意に甘えることにした。

Windows XP Professionalでなくては上手く動かないかもしれぬということで、試供用パソコンまでお借りした。プログラムはコピープロテクトのためにUSBキーを挿入しないと動かない仕掛けとなっている。

PRO/IIのCDとUSBキー

なお二つのシミュレーターを同時に平行処理することはできない。

フローシート

PRO//II ver.8.2を起動させて、真っ先にすることはFileをプルダウンしてNewを選択し、真っ白なシートを開くことだ。

<単位操作の選択>

次ぎにこの上に右手にあるPFDパレットからこれから使う単位操作をえらんで真っ白なシートのうえに適宜配置する。PFDパレットに用意されている単位操作ボタンを紹介する。単位操作ボタンはスクロールして探す。

用意されている単位操作

Block Diagram:フローシートの特定の区域を枠で囲みこの部分をブロックとして扱い、Collapsボタンを押せば内部の図を消して矩形を示してシンプルにして全体を見やすく してくれる。一種のサブルーチンのように扱うことができる。

Flash:気液分離器。圧力下での気液平衡はSoave-Redlich-Kwong式などを使い、分子間のバイナリーパラメーターkijaも入力できる。

Distillation:蒸留計算

Mixer:プロセスストリームの合流点。ここでは圧力の高い方には流さないというロジックがビルトインされているので注意が必要。

Splitter:プロセスストリームの分岐点;流量比とか1段前のステージへのリフラック流量の圧力を規定できる

Simple HX:熱交換器;熱負荷、出入りの露点、沸点、出入温度、出入温度アプローチ、内部最小温度アプローチのいずれかを規定できる 。圧力損失、内部ゾーン分割、パス数も指定可能。相変化のある流路はあらかじめ流路を指定してHCurveをチェックしイメージすることが大切。

LNG HX:天然ガスの液化器または空気分離装置の熱交換器の熱収支を計算する。内部を分割して内部温度差も計算してくれる

Fired Heater:加熱炉;加熱量またはプロセス出口温度のいずれかを規定できる

Compressor:圧縮機;圧縮比または出口圧力のいずれかを規定できる。断熱効率を入力

Expander:膨張機、膨張比または出口圧力のいずれかを規定できる。断熱効率を入力

Controller:特定の変数を目的値に収斂させるために使う。たとえば合成ガスの水素/窒素比はコントローラーでセコンダリー・リフォーマーへの空気量を調節して決める。

Stream Calculator:アミン水溶液による二酸化炭素吸収分離などの計算に使う。

Conversion Ractor:化学量論式と転換率を指定できる。

Equilibrium Reactor:化学量論式と平衡データをアルレニウスの式、反応熱などを入力する。アンモニア合成はこれでモデル化する。 メタノール合成は標準のセットが内蔵されている。

Gibbs Reactor: Free Energy Minimizing Reactorともいい、内蔵の比熱や標準生成熱から自由エネルギー推算式を使って計算してくれる。自由エネルギーの最小化にはNewton Raphson法またはその改良法であるMarquart法が使われている模様。一次微分がゼロとなるポイントを求める方法で、このために二次微分まで求めているという。これらの微係数は解析的に求められる。

圧力下での自由エネルギーはSoave-Redlich-Kwong式などを使って推算する。

単純な燃焼反応、合成ガスを製造する水蒸気リフォーマー、高温・低温の2段シフトコンバーター、メタネーターはこれで計算可能。

<ストリーム>

PFDパレットの最上部には常にstreamsというボタンが表示されている。これは単位操作を連結するものだ。streamsというボタンを押してそのストリームの起点となる単位操作のノズル(赤色)の上にカーソルを重ねて左クリックするととつながる。カーソルを終点となる単位操作の該当するノズル(赤色)に移動させて重ね、左クリックするとストリームの連結が完成する。

下記フローシートはシミュレーション作りの中心となるものだ。ここにはアンモニア合成の合成セクションのサンプルを示した。

PRO/IIの画面 アンモニア合成の合成セクション>

単位系

使用する単位系を指定する。デフォールトはフート・ポンド系であるのでメトリック系にするにはいちいち指定する必要がある。

コンポーネント・セレクション

ベンゼン環をアイコンにしたコンポーネント・セレクションボタンをおして入力ウィンドウを開けどのような物質を扱うかリストから拾う作業をデータ入力されていない欄は赤で囲まれている。

熱力学関係式

サーモダイナミック・データ入力ウィンドウを開け、どのような熱力学的方程式を使うか指示しなければならない。デフォルトではSoave-Redlich-Kwongの式を使う。

アンモニア・水系などはPR-Modified Pang. Reidが用意されている。

冷凍機メーカーが使うREFPROPをPRO/IIとリンクであるため、精度の高いモリエ線図(アンモニア・水混合物)をPRO/IIに組み込んで計算することも可能。

計算手順

なにもしなければMinimum Tear Streamsが使われる。

<リサイクルストリームの収斂精度>

なにもしなければデフォルトの数値を使う。

<データおよび初期値のインプット>

ストリームや単位操作のデータはそれぞれのストリームまたは単位操作を左クリック して入力ウィンドウを開け、データ入力ウィンドウを開け、赤枠で囲まれた欄に数値を入力する。

実行計算

実行計算前の単位操作のアイコンはは灰色だが、runボタンを押すとラインが赤や青に点滅したのち、上手くゆけば全ての単位操作とストリームは青色になる。赤色のラインが残っているのは発散してしまった証拠である。どこがまずかったか調べて修正し、解が得られるまでトライする。

計算結果

右クリックするとData Review Windowが開き気・液の組成データ、動力消費などを見ることができる。 温度、圧力、モル流量だけならカーソルを上にもってゆくだけで表示してくれる。

March 25, 2009

Rev. January 28, 2010


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