森永先生への書簡

2015年3月9日

森永晴彦先生

「日本にA級戦犯はいない  西洋思想を受け入れる国々えの忠告」という一文を拝読。えらく刺激的なタイトルですね。

ヨースタイン・ゴルデルがいうように西洋哲学に大陸系のカントが確立したロジック優先の考えと、デビッド・ヒュームの経験を大切に考えるアングロサクソン系があるわけです。さて学士会会報 No.911 2015-IIに津田一郎北大教授が

エネルギー散逸がある系では全ての運動がその領域へと吸引されるアトラクターが存在す る。カオスアトラクターの中には可算無限個の不安定な周期軌道と非可算無限個の非周期軌道が存在する。カオス軌道の分布が偏りのない「一様カオス」では初 期条件にふくまれていた情報は時間経過とともに失われる。しかしカオス軌道の分布が非常に偏った「非一様カオス」は初期条件に含まれた情報は時間経過に比 例して失われず、かつマクロ情報とミクロ情報の混合が生じる。これは「情報の重ね合わせ」という現象である。これは脳の作業記憶のような短期記憶の保存、 感覚情報のような外部情報、エピソード記憶のような時系列情報のダイナミックな保持するメカニズムのモデルとなる。海馬のCA3の錐体細胞がカオス的応答 を示す。

と書いてます。こういう見地にたてばわれわれの脳の作動原理は大陸系もアングロサクソン系もほとんど関係ないんではないでしょうか。外からの経験のイン プットがなければロジックも発生しません。

現在の国連の問題はその名の通り、戦前に結成された枢軸国に対抗するための連合United Nationsがそのまま残っているわけで、なにもアングロサクソン系の思考形式とは関係ないのではないでしょうか。悔しいからと枢軸国連合を結成しよ うとしても大陸国ドイツは乗ってこないのではないでしょうか?100年も経てば昔のことは忘れると期待して待つしかないのでは?

それより先生のご指摘の「公的ウソ」のほうが気になります。憲法は欧米が近代化する課程で権力者が横暴にならないように市民がその権力を制限する目的で制 定されたものといわれています。日本の敗戦にともない明治憲法が戦争の原因となったとし、米国から新憲法が与えられました。その仕組みは日本の安全は米国 が守るから日本は交戦権を放棄するというものです。この仕組みを運用するために日米合同委員会が憲法の上にあり、日米の官僚が日米合同委員会会議で決めた ことは憲法より上位にあるというゆがんだ法体系が残っているわけです。だから憲法がウソにみえてくる。まわりまわって日本は米国の利益の一つとなっている 原発をやめることができないという事態になっているのだと私は愚考しています。

さて最近機械学会向けに書いた雑文「国家の大計」を同封いたしました。

敬具

March 9, 2015


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