伊豆

巣雲山

2010年12月15-16日、wakwak山歩会は伊豆の宇佐美から巣雲山(580m)に登った。


第一日

伊豆急宇佐美駅15:00集合。根府川(ねぶかわ)で茨木のり子の「根府川の海」を思い 出す。

伊豆急のレール故障とかでダイヤは乱れていた。歩いて10分の温泉民宿ふかべ(Hotel Serial No.492)に移動。ここで 来年の登山計画を審議した。すんなりマーさん作成の原案通りに決まる。ラピスラズリ、ヒスイ、水晶の原石を配した露天風呂はよかった。ただ国道沿いで、か つ登り坂のため、夜は車の走行音がうるさい。


第二日

明日はどうしても出席しなければならない会議があり、今日としてもらった。雨こそ降らないが、雲は厚く、風は冷たい。膝を悪化させてしまったマーさんは朝 帰り。残り3名で登ることにする。宇佐美からでは山頂は前山に 隠れて見えない。

今日のルートの全長11.68km、累積登り666m、累積下り661m。

8:00民宿の支配人に車で ミカン畑まで送ってもらう。コンチャンが音羽ゆりかご会の創設者が「みかんの花咲く丘」を作詞した場所だそうだ。たしかに歌詞

みかんの花が 咲いている
思い出の道 丘の道
はるかに見える 青い海
お船がとおく 霞(かす)んでる・・・

通りの心和む風景だ。沖に見える岩は手石島だろ うか?

どういう事情なのか調べてみた。長野県埴科郡松 代町出身の童謡作曲家海沼實は音羽ゆりかご会を創設し、 川田正子(後に継子となる)、川田孝子(後に継子となる)など数多くの童謡歌手を育てた。海沼實はミカンの歌をつくりたいと思ったがうまい歌詞が浮かばな い。そこへ音楽の月刊雑誌「ミュージック・ライフ」編集長の加藤省吾が、歌手の川田正子の取材のため、海沼が同棲していた川田姉妹の母須磨子宅を訪ねてき たという。海沼は加藤に事情を説明し、自らが歌詞の内容を示唆しながら加藤に1番と2番歌詞を作らせ、そこに加藤が自作の3番を書き加えて、20〜30分 で歌詞を完成させた。それから海沼はGHQで詞の検閲を受け、検印を受けるとすぐに伊東行きの列車に乗り、列車の中で作曲をはじめた。車窓にみかん畑が現 れる国府津駅付近でやっと着想し、伊東線の宇佐美駅付近でこの歌を書きあげ、翌8月25日の放送に間に合わせたという 。人気絶頂の童謡歌手川田正子の歌唱で放送された歌は日本全国に大反響を呼び、『みかんの花咲く丘』は、日本を代表する童謡作品となった。 海沼實は不倫関係にあった川田須磨子と最終的には結婚し、美智子をもつ。この美智子が音羽ゆりかご会を引き継いだ時、川田正子は音羽ゆりかご会から独立 し、森の木児童合唱団を設立した という。

みかんの花咲く丘

尾根のアスファルト道を登ってゆくとやがで舗装も無くなり、植林地に入る。ここはホテルから見たとき禿山になっていたところだ。エクシーブ・初島 クラブの東窓を破壊した2004年の台風22号の強い東風のためにこの一帯の杉の植林地は軒並み倒木になってしまったとか。杉では危険と広葉樹を植林して ある。しかしここは猪と鹿が多いそうで食害に会わないように網で幼木を囲ってある。宇佐美から亀石峠に登る自動車道である宇佐美大仁道路が背後に見える。

植林地

この杉林をトラバースしていると路傍にフユイチ ゴが自生している。フユイチゴは杉林を好むという。クリさんが口にいれてみたところ甘いという。

フユイチゴ

長いトラバース後、ついに伊豆スカイラインのある阿原田峠に出る。ここから伊豆スカイラインに沿った尾根道を30分ほどゆくと巣雲山の 広い 山頂だ。冷たい風が吹いている。展望台に上ると360度の眺望を楽しめる。北には2005年の冬登った玄岳が見える。その背後に箱根山が一直線に並んでいる。

玄岳

西北には愛鷹山と富士山、富士市の工業地帯が見え、その手前には沼津アルプス、そして駿河湾が見える。

駿河湾方面

東に目を転ずれば初島、手石島、大島が見える。

大島

そして南には天城山がうっすらと雪化粧している。今年5月、一泊したホテル・ハーヴェスト天城高原の背の高い建物も裸眼でよく見えた。大室山 もチラリと見える。

天城山

山頂を去る前に記念撮影。

山頂にて

生仏から谷に下る。別荘地を通り、孟宗竹林に囲まれたミカン畑で昼食。更に下ると花岳院前を通過。 途中宇佐美の山持ちという老婆から、「夫が亡くなってから山も見に行ってないが、息子達は興味を持たず、山は今どうなっていることやら」という。「ご心配 なく、自然に帰って喜んでいますよ」と応えておいた。よくマスコミは 間伐をしていない森は荒れているというが、私はそうは思わない。人間が勝手に密植した人工林は太古の昔から生きてきた森の掟にしたがうべく、自律的に再編 中なのである。 それを荒れているとみるのは人間の勝手というものだろう。

宇佐美駅に着く。マーさんからまだダイヤが乱れているとメールがあったが、定刻の13:50の列車で帰途に着く。歩いた時間は4時間強。

嵐が過ぎた直後の12月23日は日本晴れであった。七里ヶ浜の自宅から巣雲山が見えるか双眼鏡で探したが分からない。カシミール3Dで透視図を描いてみる と西伊豆の魂の山の 左手の風早峠と巣雲山と網代の屏風岩が一直線上に並んでいる。ならばと2005年、自宅から撮影した写真を調べると、写っていた。西伊豆の猫越岳(1,035m) と後藤山もその左手に見える。 再度ニコンの視野角6.3度の双眼鏡でみると巣雲山の山頂にあるコンクリート製の展望台がかろうじて見えた。

七里ヶ浜から相模湾越に遠望する巣雲山 (2005/12/27撮影)

December 16, 2010

Rev. November 23, 2017


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