メモ

シリアル番号 表題 日付

227

マンデル・フレミング・モデル

1996/10/12


以下、ジェフリー・サックス、フィリップ・ラレーンの「マクロエコノミックス 上下」準拠

●一国のGDP(国内総生産)は総需要に等しい

GDP=PQ

ここで
P:GDPデフレーターと呼ばれる価格指数。ケインジアンはPが増えればQは減る。
Q:実質GDP

Q=C+I+G+TB

ここで
C: Consumption 消費支出
I: Investment 投資支出
G: Government Spendings 政府支出
TB: Trade Balance 貿易収支=輸出額ー輸入額、為替レートと連動する。
i: interest rate 金利
M/P:実質貨幣残高
M:Money Supply 貨幣残高
P:物価水準


●IS-LMモデルを国際関係に拡大したものを「マンデルフレミングモデル」という。ケインズの『一般理論』の内容を図示しようと1937年にヒックスが考案。縦軸に利子率i、横軸に実質GDPであるQをプロットする。

この上に描くIS曲線(投資ー貯蓄曲線、Investment-Saving Curve)はGとか税Tなどの変数を固定してQとiの関係をプロットしたものである。

i=(1-c)/(a+b)((1/(1-c)G-c/(1-c)T+(cF/(1-c)(Q-T)F)+(d/(1-c)MPKE-QD)

ここで

QDはIS曲線とLM曲線の交点のQ
a、b、c、cF、dは正の定数。

cは現在の所得の限界消費性向で0.6

T:税

MPKE:将来の資本の限界生産力の予想値

MPK=((1-s)/(1-t))(r+d)

ここで
s:投資税額控除
t:租税
r:借り入れ金利
d:減耗率

利子率iの上昇は消費Cと投資Iに影響を与え総需要Qを抑制する。し たがって右下がりの曲線になる。Gを増すとIS曲線は右にシフトする。Tを増すと左にシフトする。

LM曲線は実質貨幣残高M/Pを所与とする貨幣市場均衡と斉合的な総需要と利子率の組み合わせである。

i=(v/f)QD+(1/f)(M/P)

ここでfとvは正の定数。

(f/v):LM曲線の勾配で正。

LM曲線は右上がりである。Mを増加させるとLM曲線は右下にシフトする。

●変動為替レート制の下では、金本位制やIMF体制のような為替レートが固定されている時とは異なり、経済政策の効果が逆になるという定理。

●マンデル・フレミング定理ともよばれる。

●ケインズ理論では「景気が悪くなれば、財政支出を増やすのが景気対策とされた」また「海外との関係を是正するためには金融政策を使うのがいい」とされた。これは固定為替制の下で正しいが、変動為替制下には適用できない。

●変動為替制下では「国内の不況対策としては金融政策を適用し、対外的には収支不均衡を是正するために財政政策を使うのが正しい」というのがマンデル・フレミング定理である。

●日本では1990年ころケインズ理論一辺倒で景気が回復したのに金融緩和政策を取り続け、余った金が土地や株式に流れてバブルが生じた。

●バブル後、不景気になっても財政政策中心で、日銀の独立とかいいながら特段の金融政策が採用されていない。

●政策のミックスを誤った結果である。

●学士会報813号 東京大学名誉教授館龍一郎(タチユウイチロウ)

●カナダのマンデル教授は1999年のノーベル経済学賞を受賞したが、若きマンデルの貢献に対してであり、その後マネタリストに変更したことは理由にならないという説が一般的。



安倍首相・黒田総裁の失政

安倍政権は20年継続したデフレを打破して成長戦略をとると宣言、浜田宏一というクルーグマン教授に代表されるリフレ派の経済学者の口車にのって2%の管理インフレ政策をとると公約。2012年に黒田日銀総裁を任命した。

財務省出身の黒田総裁は財務省の伝統的なプライマリーバランス政策に従い国の借金が大きく積みあがっているのでGは増やせないと考えた。しかし、物価水準Pは下がり気味だ。そこで貨幣残高Mを増やせばLM曲線が右に平行移動 して消費Cが増し、価格Pが上昇するのではないかと考えた。しかし購買力平価での日本の賃金水準は1991年に世界で9位だったが、2014年には19位と下がっていてCは増えない。貨幣供給Mを増やすためには具体的には国債を市中銀行から買って現金を市中銀行供 給した。そうすると貨幣の超過供給に反応して家計は自分の貨幣を債権に替える。それにより債権価格が上昇し、利子率は下がると考えた。

以上をマンデルフレミングモデルで検証すると。2014年に

GDP=600兆円→610兆円
C=286兆円一定
G=96兆円一定
TB=10兆円→20兆円
T=54.6兆円→64.5兆円(消費税3%増)
M=233兆円→253兆円(マネーサプライ)


IS-LMモデル

為替レートが円安にふれて増加したTBが10兆円程度では消費税増税分でむしろIS曲線は左にシフトして不景気になっている。LMは233兆円でこれを 20兆円増やしたところでLM曲線の勾配はフラッとでほとんど影響がない。いまだ日本経済は「流動性の罠」に捕らわれていることがわかる。これはMを操作 しても感度は低いということがわかる。すなわち量的緩和をして貨幣フローを増しても貯蓄というストックに化けてしまいMを変えて もGDPを制御できない。むしろ金利を直接変えるほうが有効ということでマイナス金利とせざるを得なかったということ。しかしこれで株バブルがはじけた。 金融政策は利かないということだ。

実際株価は上がった。利子率 の下落は消費Cを刺激 し、総需要Q が増加し、物価Pが上がるともくろんだのだ。しかし政治がプライマリーバランスをとりもどすためとして財政支出をGを固定し、消費税Tを増したため、IS曲線は左に引き戻されて Qは 期待ほど増えなかった。消費Cはかわらなかったため、物価水準Pは変わらず利子率だけが低下した。それでも産出量Qが増えたのは、為替レートが円安にふれたため貿易 収支TBが増えた結果だった。過去3年間の大規模な金融緩和で、為替レートは1ドル=80円近辺から125円までの円安が進んだ結果である。こうして物価 Pの 押し上げ効果はとても小さ かった。そしてQの若干の増加はミニ株バブルを起こしただけに終わった。結局、金融政策Mは有効でないことが判明したわけだ。

黒田総裁のリフレ派の金融政策は17年前にはクルーグマンの言う通り有効だったのだが、当時の白川日銀総裁は消極的であった。そして戦力の逐次投入をしているうちに発行済貨幣がたまって、舵が鈍感になって漂流するハメになったと私は思う。世界中が同じような政策をとっているので世界経済が漂流している。

日銀がコントロールできるのはマネタリーベースHというもので

H=C+R

ここでCは公衆が保有する通貨(currency)、Rは銀行が日銀に預けている当座預金

GDPに関わるものはマネーサプライMで

M=C+D

ここでDは預金(deposit)

貨幣乗数(money multiplyer)

M/H

アベノミックスの異次元緩和前の2013/3のマネタリーベースHは135兆円だったが2016/9には408兆円に増えた。しかし日銀の当座預金Rが積 みあがるばかりでCは増えず、マネーサプライMは大して増えなかった。黒田総裁はRを減らそうと日銀当座預金の金利をマイナス にした。ところが市中銀行は資金需要がないのでまた国債を買い戻した。異次元の金融緩和を正常化するために日銀が利上げすれば、裏表の債券価格は下がる。国債を大量に持つ銀行などは打撃を受けかねない。日銀の思惑がどうあろうと現実は製造業の 職場が中国などに移転して、給料が下がって庶民が保有する貨幣Cは減っている。こういう時に、世界景気が回復して金利が上昇すると、銀行は当座預金を引き 下ろして海外で運用しなければならなくなる。こうなると円安と輸入品のインフレが始まると貨幣乗数が上昇に転じる可能性が指摘されている。資金の海外流出 を止めるには日銀は当座預金の金利を上げなければならないが、しかし日銀は逆ザヤになってそれも出来ない。日銀の巨額損失を穴埋めできるのは政府だが、日 銀に国債を買ってもらえないので、財源を調達できない。世界の景気回復は2018年には始まっていて米国もEUも公定レート上げモードになっている。このとき、働ける若年層はなんとか生きてゆけるが、働 く能力をうなった高齢層はインフレで悲惨な状態になるのだろう。最後は家屋敷を売って食料を買うハメになる。

政府が発行する国債を日銀が直接引き受けて政府の資金調達を支える「マネタイゼーション」は、財政規律を失わせるとして財政法で禁じられている。発行して 3カ月後の10年物国債が日銀に保有される比率は黒田東彦日銀総裁が就任した13年に2割に満たなかったが、異次元緩和の国債買い入れで4〜6割前後へ上 がり2018年4月には8割超という異常な高水準。2018年の米金利上昇をきっかけに世界で「悪い金利上昇」が広がるかもしれない。日本の財政規律が緩 んでいると市場にみなされれば金利上昇の圧力は強まり、日銀の負荷も増す。

野口悠紀雄は2017年12月3日朝日のコラム「異次元緩和の終焉」でほぼ類似の破綻を予想している。すなわち日銀の緩和マネー→投資や消費に向かわず、 企業の内部留保として積み上がる→企業が株式などを購入→預金過剰にもかかわらず投資案件がなく金がだぶついて いる銀行から銀行の手持ち国債を日銀が額面金額より高い価格で購入→銀行の日銀当座預金残高が増える→物価目標の実現がするしないにかかわらず緩和政策の 転換→国債の金利上昇と日銀内銀行の当座預金金利上昇→日銀の巨額損失→この日銀損失が日銀が保有する国債の金利収入を上回る逆ザヤが発生+国債償還時に 国から受け取る金は額面通りのための損失=45兆円>日銀の自己資本=7.6兆円⇒日銀の債務超過。金利が上昇すると国債利払い費が急増し、2023年度 の利払い費+元本償還費=国家予算の50%となり財政破綻となる。これで日本はエンド・オブ・ザ・ ゲーム。いま必要なのは、インフレ目標の達成にこだわることなく、できる限り早く異常な政策から脱却することだと野口氏は主張している。

幸い日本では銀行が住宅用の低金利融資に走るとあの 2008年のサブ・プライム・ローン崩壊に至る悪名高いグリーンスパンが採用したマジックと同じことは発生しなかった。日本では製造業は魅力ある商品の開発ができていないので消費Cは変わらず、銀行の資金需要も低迷している。改善した貿易収支TBは下がった金利に連れられて不動産に化けて土地価格を 上昇させるか、株に化けて株価が暴騰してバブルになるだろう。

2016年、米国では連銀の金融政策でだぶついた資金をシェールオイルに貸し込んだジャンク債がこげつくのではというパニックになった。これはギリシアやアイスランドの金融危機と は比較にならない。米国のシェールバブルの崩壊という大波かもしれない。これは米国がシェールオイルに多量の投資IをしてQが回復した。それで連銀のイ エーレン女史が安心して金利iを上げたとたん、Qが収縮した。2016年に入り石油価格は50$を回復して小康状態。2016/6イエーレン女史は2回目の利上げを延期した。


日銀の国債保有残高

日銀の国債保有残高は下表のように最近数年急激に増えている。


日銀(兆円)
銀行(兆円)
生保(兆円)
2000
45
100
45
2005
95
260
95
2010
50
305
130
2015
240
230
150

2016/5のサミット直後、安倍首相は向こう2年半消費税は8%に据え置くと宣言。あきらかに参議院選挙のための票を買う行為だ。これはプライマリーバランスを重視する財務省からみれば逆行となるのにそれを押し切った。直後、三菱東京UFJ銀行は「国 債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」と呼ばれる資格を国に返す方向で調整に入った。日銀のマイナス金利政策の下で国債を持ち続ければ、損失が 発生しか ねないため、4%の応札義務 を回避したいからという。他の銀行も追従するかもしれない。

三橋貴明などは日本の財政が先進国一の負債を負っていでも国債購入者は日本人だから大丈夫と言っているが増税しない限り、国民の預金が赤字財政をうめることはないのだ。それに日本国債購入の外国人が次第に増えていることが最大の関心事だ。2004年には5%、2010年には10%、2016年には25%である。年金生活者が貯金を 取り崩しているため、銀行は国債購入の元手を失しないつつあるのだ。このまま行くと 2020年には50%を超えて、国債を外国勢に売り浴びせられ、国債の金利が暴騰し、財政破綻危険水域に入るのではなかろうか。三菱銀行がプライマリー ディーラーを降りても日銀が年間80兆円のペースで国債を買い占めるので政府は困らないとされる。しかし、これを2.5年続けると日本銀行は500兆円を超える紙 屑を抱えることになる。これは財政ファイナンスそのもので巷に金が溢れ、悪性のハイパーインフレを引き起こす恐れがある。禁じ手なのだが安倍―黒田2悪人 はそれを意図しているとしか見えない。トマ・ピケティの指摘する貧富の差が拡大しただけで終わるなどという生易しいものではない。


家計金融資産

消費や日本国債を買い支えるのは家計金融資産だ。日銀が2016/6/17発表した資金循環統計(速報)によると、2015年度末の家計の金融資産残高は 1年前に比べ0.6%減の1706兆円となった。前年度末の水準を下回ったのは7年ぶり。株安や円高が進み、保有株式や投資信託が減少したことが主因だ。 4月以降も株安傾向が続いており、金融資産の目減りが個人消費を下押しする恐れが出ている。


タックスイーター

円安で民の実質賃金は下がっているので消費Cは減ってQも減っている。新しい商品を開発しないから製造工場が余剰になり、投資Iは減る。シャープや東芝のように過剰設備を整理する会社もある。Iを増す には再生可能エネルギーに投資することだが、既存の原発をかかえた電力保護のために再生可能エネルギーは制約をもうけて制限し老朽化した原発に負い銭を投げているしまつ。かといって安倍 首相が増税してIS線が左にシフトしてQは減ったことを反省して逆に増税すればいいというわけでもない。ますます景気は悪くなる。ならば財政政策だと政府 支出Gを増やしても係数は1ではなく、そのままQを増やすわけでもない。北海道に有料高速道路つくっても金支払って走る人は居ず、全く無駄投資だった過去 がある。JR東海がリニアを建設しても電力消費量が新幹線の3倍もあり経済効率が下がる。水素燃料に投じた過去10年の税金もむだ。米国で成功したAI研 究に税金を投資しても米国のように人材も育っていないので研究者が腐敗するだけ。舛添都知事などチンピラ政治家は小さな公金を自分のポケットにいれるが、 もっともこまるのは巨大な財政赤字を継続して国家財政に大きな穴をあけてゆく存在だ。彼らをタックスイーターという。

安倍―黒田2悪人どころか野党を含む政治家、そして役人、会社経営者はみなタックスイーターなのだ。

タックスイーター=政治家+官僚+業界・財界

リベラル嫌いな作家の橘玲氏は国民も年金として税金を食っているというが、少なくとも国民はその税金を分配する直接権力をもっていないため、的外れだろう。むしろ国民は政治家のウソにだまさ れて無条件でその権力を譲渡してしまっているマ抜けた存在だ。民度が低いといえば低いが正しい選択をしようにまともな政治家は存在しないのだ。

キグリー(Carrol Quigley)はThe Evolution of Civilizationで「文明は拡大するための道具を備えているから成長する。軍事、宗教、政治の組織が余剰を蓄積し、それを生産的な革新に投資する からである。文明が衰退するときには、新しい方法に余剰分をあてなくなる。余剰を管理している社会集団が既得権益を持って、余剰の使途を非生産的で利己的 なものにあてるからである。人々が自分の資本を食いつぶしていくうちに、文明は世界国家の段階から衰退の段階へと移行してゆく。衰退はやがて侵略期につな がり、野蛮な侵略者に無防備な姿をさらけだす。侵略者はしばしばより若く、より強力な別の文明からやってくる。」といっている。



今後すべきこと

残る対策は

@ 金融政策がだめなら財政支出Gを増やす方策がある。財政支出としては介護報酬、育児報酬職員の最低賃金を上げ、教育予算を増や し、最低賃金を引き上げればCが増え、Qが増える。二次的効果として貧民層が無くなり人口が増える。公共投資は経済学では税制支出Gに分類されるが、道路網整備などの公共投資は経済の効率化に寄与できる場合は民間投資Iと同じ効果をもたらすため有効性 を再評価すべきだろう。治水工事や耐震建築などに投資すれば洪水損失で消費が激減するたどの影響も少ない。軍事強国になった危険な隣国に対抗するために憲 法などいじらずに抑止力のためのロボット兵器開発など新軍事技術の開発に投資する。技術は波及効果をもって産業のコメにな る。

A貧民層をなくすためにTである税制改革をするという手がある。消費税の8%から10%への増税は中止し、むしろ消費税を減税し、高額所得者から税を調達 する最高80%の累進課税を導入する。こうして消費Cを増す。政府による富の再配分は配分する行政機構の権力を増し、碌なことはない。

B結論からいうと金融政策、財政政策、租税改革のいずれも無力だ。その理由は明快。外貨をかせいでいた製造業が価格競争に負け、利益が小さいが確実に確保できる 部品製造業に特化したため、最終製品を企画して市場に出し、市場と会話するするという伝手をうしなってしまった。こうして国内から海外の市場がみえなく なったことにある。これはすべきことではなかったことだ。例えばシャープは液晶部品メーカーとして生き残るしかないという袋小路に追い詰められた。

C企業が外国に工場を移転させてそこに投資しても国内投資Iは増えず、国は富まない。生産性向上のための投資をしても企業は不要となった余剰労働力を解雇できるが国は海外に棄民するとはできないため社会福祉費が増えてしまう。国内投資Iを減らさないで済むためには国内で生産しても競争力が維持で きる新商品の開発を優先する産業へ 転換しなければならない。できない企業には退出願うしかない。具体的には中国などでもできる多量生産製造から中国では無理な高度な技術を必要とする商品を生む産業に転換 することだ。そして部品製造は中国で行う。たとえばソーラーパネル、分散電力用の蓄電池、ジェッ トエンジン、航空機、ロケット、AIを駆使した自律運転車、AIやネットワークを駆使するファイナンス業、高度文明を売り物にする芸術・エンタテインメン ト産業の振興、高度医療サービスなどの展開だろう。この構造改革は文系の企業支配階層にとって能力不足で痛みを伴う。したがって誰も手を付けない。国はそのよ うな企業を 支援することはやめ、自然死を待ってベンチャーを育成すべし。といってもどうせ上からの目線でベンチャーなどを育てる能力すらない。石原東京都知事がすで に失敗している。自助努力しかないのだ。

DIT産業における主導権がハードからソフトに完全にシフトしている一方で、日本ではプログラムイングやコーディングを担う人材の社会的・経済的地位が低 く、従って高付加価値を生み出すような人材育成ができていない。では米国でなぜプログラムやコーディングを担う人材がそだったかというと、マイクロソフ ト、グーグル、アップルのようなオタクが始めた中小企業が伸びに伸びて世界の富を独占することができた。これをみていた世界中の能力がある若者が世界中(特 にアジア・インド)から何万人も米国に渡った。これを可能にしたのが米国がオープンでボトムアップの文化だからである。日立を除いてMHIも東芝も文系社長 の支配下にある。トリクルダウンなどという「上から目線」こそが、仲間内でつるんでうまい汁をスポンジのように吸い取ろうという悪しき日本の文系文化なのだ。ダメな理系経営者 も結構目につく。これも同じ文系支配の「上から目線」の権威主義的文化に乗ろうとまねした輩でかえって始末が悪い。安倍政権は憲法を修正して個人の自由を 制限して命令に忠実な人間にしようとしているが、これこそ、製造業をだめにした主要な原因だ。逆噴射もいいところ。このようにマスコミを抱え込んで国民に真の姿 を見せていない安倍政権ははなはだ危険で邪悪な存在と言わざるを得ない。

政治家とは犯罪者である。強盗が用いるかなてこの代わりに言葉で仕事
シュンペーター

E英国は製造業が壊滅しても金融業で生き残ったが、日本にグローバルに通用する金融業はない。金融業こそ文系の花形産業なのだが、後塵を拝するのみ。いずれビットコインに負けるであろう。



経済学の欠陥

以上、縷々解説したものは文系のマクロ経済学に準拠している。この文系の経済学の欠点については物理経済学を研究している千葉工科大学の荻林教授の解説を参照願う。

そもそも文系のマクロ経済学は主としてフローの概念で組み立てられている。だから需要Q(フロー)が増えると価格Pが上がるとしている。

ストックの概念がとぼしい。理系的にいえば価格は在庫(ストック)が少なくなると上げたくなる。これは心理学の分野。スーパーが夕方に野菜の価格を下げるのは、腐るか らで、腐る商品に特有の現象。石油は腐らないから石油タンクが満タンになると安くなる。でも在庫は経済学者はあまり考えない。そもそも貨幣の在庫、すなわち 貯蓄高Sはわかっても、物のストックの統計がなかったので無視して今がある。黒田総裁は国債を銀行から買い上げてマネーフローMを銀行に注入すれば需要Qは 喚起されるとした。しかし実際に起こったことは日銀の当座預金残高(ストック)がふえただけ。あわててマイナス金利としたが、銀行の経営が苦しくなっただ け。

国は国民から借りているので、外国資本が逃げても安泰としているが、もし国民が日銀を信頼しなくなり、取り付け騒ぎになったら手もつけられない。これは一種の感情の爆発現象(detonation)。


教祖クルーグマンの変節

2015年11月15日 異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治

によればリフレ派の理論的支柱はクルーグマンだったと言える。浜田氏や岩田氏の著作を読んでも、その内容は、クルーグマンが1998年に書いた『流動性の罠』で提唱されたマネー増発論の引き写しに過ぎないものであった。

そのクルーグマン氏は10月20日、NYタイムズ紙のサイト上に持つ自身のブログで『Rethinking Japan』と題したコラムを発した。クルーグマンは1998年と比べて、日本における2012年からの需要つまりGDPの弱さは「本質に根ざすため、永 続的な経済の条件」に見えるとしている。

クルーグマンが、将来は高くなると見ていた日本の潜在成長力は、実は、低いものだった。このため、日銀が国債を買ってマネタリー・ベースを増やしても、企 業と世帯が新たに借り入れることによって増えるマネー・サプライの増加にはならなかった。つまり量的緩和は、デマンド・プル型の需要増加によるインフレを 引き起こすことはできなかった。デマンド・プル型のインフレは、需要増→供給力不足により物価が上がること。


クリストファー・シムズ米プリンストン大学教授の「財政インフレ」理論

ノーベル賞経済学者のクリストファー・シムズ米プリンストン大学教授らが、1990年代の半ばから唱えている「物価水準の財政理論」。金利がゼロ近辺とな りデフレ脱却へ金融政策の効果がなくなったとき、物価水準を決めるのは財政政策だ、という考え方から、歳出の拡大や減税などを実施すべきだと主張する。

よりにもよって財政の非常時に、憲法改正という大事業を掲げる安倍首相はこの理論に乗ろうとしている。

しかし、トランプ米政権をはじめ欧米諸国がポピュリズム志向を強め、積極財政で足並みをそろえれば、2〜3年内に世界的にインフレ傾向となる公算もある。 その影響で日本では予想以上に早いテンポで物価が上がり、金利も上昇して、財政・経済の破綻が早まる危険性も見逃してはならないだろう。

Rev. May 2, 2018


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