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EXCELシミュレーション
軽水炉事故
ダイナミックシミュレータ
グリーンウッド
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初めに
原発事故のインパクトはコンセクエンスまたは被害 x
(失う国土の指標としてのpBq)と発生確率p(回/炉・年) の積として計算できる。過去の軽水炉を含む原発事故を整理すると過去の発生確率pはxのべき分布になる。
べき分布の発生確率密度関数p(x)はガウス分布のようにxが増えても急激に小さくはならない。すなわちロングテールを持つ。フォールトツリーを使う確率
論的リスクアセスメント(PRA)はフォールトツ
リーを
望ましいpが出るように想定できるため、ロングテールを消し去ることができ、政治的ツールに利用されがちである。経済現象も巨大エネルギーシステ
ムも複雑なシステムはべき分布になることが明らかになっている。そして原発事故のべき分布のべき指数αが0.31と水平に近いのは問題なのだ。せめてα
=1
ならなんとか
使えるかもしれないのだが。
ではコンセクエンスはどうだろうか?
現在主力の軽水炉をモデル化して x
を求めるモデルを作るのがこのシミュレータ作りの目的だ。圧力容器(RPV)と格納容器(PCV)周りのエネルギーバランスの微分方程式を、差分方程式と
して数値積分するダイナミッ
ク・シミュレータを開発すればよい。パラメー
ターは1GW出力として既存のデータから求めた。モデル化した事象は冷却できずに炉心が加熱し、燃料棒鞘管が水蒸気と反応し水素を発生し、圧力容器、格納
容器、建屋を壊してシステムから放出さ
れ、このガスに乗って核分裂物物質が環境にでてくるモデルである。
この x を計算する炉モデルには確率論は入っていない。だからある状況が与えられたとき、必然として
進行する物理モデルである。
フォールト・ツ
リーなどという恣意的な事前想定を排して、それぞれの要素が自律的な仕組みでそれぞれがそれぞれの平均故障時間(MTBF)の間に勝手なタイミン
グで壊
れ、もし人間系が気が付かなければなにもせず、気が付けば修復し、または代替手段を投入し、それがそれぞれに影響を及ぼしつつ、全体が動いてこの炉モデル
にインプットとして影響を与えると例えばテストケースー1から6などの
状況が無限点
出現し、pとxがセットとして求まる。この数値運転を実運転相当継続すれば x が発
生する確率pをべき
分布として発見されるのであろうか。それをコンピュータ上で実行する手法が経済物理学で採用されるマルチ・エージェントベース・モデルというわ
けだ。正統派経済学者は理解不能のため毛嫌いするが、いずれこちらが正統派経済学となると期待される。この方式は恣意的な価値判断が入る余地がないから、
より正しい姿が見えてくるはずである。
共同研究
というわけで軽水炉事故のマルチ・エージェントベース・モデルを作成する次の4名からなる有志連合が2011年12月23日結成された。
グリーンウッド事務所青木一三
千葉工業大学荻林成章
原子力学会員木下幹康
TTS(Thorium Tech Solution)千葉文浩
対象とするBWRシステム
概念的には次図のシステムを対象にする。一応自動停止後、自動的に冷却が継続できるように設計されているが、電源喪失ですべて手動となる。運転人
間系はすべて中央制御室経由で社会の上部構造に連なっている。この人間系は極端に遅い制御系である。
軽水炉の特徴は深層防護に重きを置くあまり格納容器(PCV)のすべての貫通配管に隔離弁が内と外に直列に装着されていることである。そしてこれらが全て
DCまたはAC電源駆動で、電源が一系統
であることが特徴。そして全世界の軽水炉は共通の設計思想で統一されている。すなわち心筋梗塞と脳梗塞という遺伝的疾患を抱えていることが今回の福島で明
らかとなった。バイパス手術を事前に施しておかねば怖くて再稼動もできないはずだが、原子力カルトの専門家は沈黙したままだ。本研究の目的はそのようなま
だ見えていない遺伝的疾患を発見することにある。
制御棒は無論、Air operated valve(AO弁)すらDC電源がなければ計装用空気があっても開閉できない。無論Motor
operated
valve(MO弁)はDC駆動であろうとAC駆動であろうと当該電源損失でただの鉄の塊と化す。したがってすべて人間が操作しなければならなくなるが、
PCV外隔離弁にはハンドルが付いているが、メルトダウン後はそこにゆく
のは死を意味す
る。PCV内部弁にハン
ドルがついてい
たとしても圧力容器(RPV)内に燃料がある状態では人は入れないから意味がない。ところがメルトダウンしてしまえばRPVもPCVもメルトダウン熱には
堪えられずメロ
メロとなる。とても核分裂生成物の封じ込めなどできない代物
である。深層防御(defence in
depth)などおとぎ話となる。高温になればシリコンゴムなどの充填物がだめになり、英語の字義通りelastic
defenceとなる。以下をモデル化してコンピュータ上で仮想運転しようというわけである。

BWR system
炉心モデル
軽水炉は複雑なシステムである。Fauske & Associatesによって開発されたThe
Modular Accident Analysis
Program (MAAP)
などは泡の挙動もシミュレートできるものだが、規模が大きく、エージェントモデルには重すぎる。そこで我々は熱収支、物質収支とメルトダウン速度だけから
炉の状態を計算する簡便モデルを
自前で開発することにした。
炉心は単純な構造である。したがって運転状況をシミュレートするダイナミックモデルは偏微分方程式である必要はなく、集中定数系の連立常微分方程式で十分
である。実際の積分は差分方程式で行う。こうして作成したモデルは自動運転と手動運転の無
限の組み合わに対し、素直に応答する数学的モデルとなろう。
炉の水位はW、水の蒸発潜熱はLr。Qは制御棒挿入失敗時は核分裂熱、成功時はWASH-1250の崩壊熱とする。水がなくなれば
核分裂熱はなくなる。また崩壊熱は時間
の関数で急激に減少するモデルとする。
Wr2=Wr1-QΔt/(1000Lr)
炉の温度上昇
Tf2=Tf1+(Q+fm(WzΔHz-WfLf))-Qr)Δt/(1000(0.5WrCpr+WfCpf)+VrρCpv)
ここでTfは温度、Qrはコリウムの放射熱、Wは重量、ΔHzはジルコニウム反応熱、Lfは
燃料熔解熱、Cpは比熱、Δtは差分時間、Vは容
積、ρは蒸気密度、fmはSAMPSONが計算したメルトダウンス速度。
Qr=Ax4.88( ((Tf+273)/100)4
- ((Td+273)/100)4 )
水蒸気圧は温度からAntoinの式で計算。
などなど。
モデル検証テスト運転ケースの定義
完成したモデルがもくろんだ無限の運転態様に素直に反応するか典型的な6例でテストし、予期された結果が得られた。その検証テストは:
ケース-1:崩壊熱をICで冷却し、備蓄水干上がり後、ECCS投入失敗⇒24hで320pBq
ケース-2:崩壊熱をIC、引き続きRCIC又はECCS投入成功⇒24hで0pBq
ケース-3:崩壊熱によりIC備蓄水を使い果たし、メルトダウンするも8.8h後、ECCS投入成功⇒でドライウェルの温度が400°C以下、圧力
7.5atm以下に抑え込み放射能封じ込め成功⇒24hで0pBq
コリウムが冷えて温度1000°C以下に下がるとき、RPVのゴーストの圧力が現れる。放出量に影響はない
ケース-4:崩壊熱によりIC備蓄水を使い果たし、メルトダウンするも16.5h後、ECCR投入成功⇒でドライウェルの温度が400°C以上になりケー
ブル貫通部などから小リーク発生。ただし圧力7.atm以下に抑え込み破壊は免れる⇒24hで32pBq
ケース-5:すべての冷却手段が絶たれたとき(IC低備蓄水で代用)の崩壊熱によるメルトダウンが1時間以内に始まる⇒24hで
8,583pBq>.800pBq
ケース-6:すべての冷却手段が絶たれ(IC低備蓄水で代用)、かつ、DC電源消失などで制御棒挿入不能、ホウ酸注入失敗時の核分裂熱と崩壊熱でメルトダ
ウン ⇒7.2hで931pBq>800pBq
である。
結果として得られた改良点は:1GW炉内にある最大セシウム量は800pBqである。したがってモデルにはストッパーを組み込む必要がある。ちなみに福島
では3基で40pBqが放出され
た。
ケース-1
アイソレーションコンデンサーは動いてもその後ECCSがうごかなければ4.4時間後にメルトダウンが始まり、メルトスルーし、18.2時間後に格納容器
は破壊されて24hで318pBqのセシウムが
放出される。

ケースー1 崩壊熱をICで冷却するも備蓄水干上がりECCS失敗
ケース-2
アイソレーションコンデンサーに引き続きECCSが働けばなにも問題ない。

ケース−2 崩壊熱をIC、引き続きRCIC又はECCS投入成功
ケース-3
アイソレーションコンデンサーは動いてもその後ECCSが動かずメルトダウン、メルトスルーする。しかし8.4時間後にECCRが働かすことがで
きれば格納容器は破壊
されず、セシウムは閉じ込められる。コリウム温度が1000°C以下になるとRPVの圧が上がるがこれは計算上のゴースト。ゴーストを消すよう検討する。

ケースー3 IC備蓄水を使い果たしメルトダウンするも8.4h後ECCS投入
ケース-4
アイソレーション・コンデンサーは動いてもその後ECCSが動かずメルトダウン、メルトスルーする。ただ16.5時間後にECCRが働けば格納容
器の
ケーブル貫通部などから小リークが発生するが格納容器は破壊されない。セシウムは24hで24pBq程度もれる。

ケース-4 IC備蓄水を使い果たし、メルトダウンするも16.5h後、ECCS投入
ケース-5
ICの備蓄水を下げることとでICが使えないとした。全ての冷却が初めから確保できなければ、1時間後にはメルトダウンが始まり、6.9時間後に
格納容器は破壊され、セシウム放出量
は24hで1,290pBqに達する。(モデルにストッパーないため)この1時間の間にオペレータがメルトダウンを止めることができるかはなはだ疑問だ。
ただECCSを復活できれば格納
容器を
救って閉じ込めができるかどうかという程度だろう。

ケース-5 すべての冷却手段が絶たれたときの崩壊熱によるメルトダウン
ケース-6
ICの備蓄水が3%しかないとした。制御棒挿入失敗、ホウ酸水注入失敗、冷却不能で9分で炉心露出し、核分裂は停止するも、崩壊熱で27分でメル
トスルー開始し、1.7時間で炉心は2,500°C。3.6時間で格納容器が破損し、7.2hで920pBqのセシウムが飛散する。

ケース-6 すべての冷却手段が絶たれかつ、制御棒挿入不能、ホウ酸水注入失敗時の核分裂
熱・崩壊熱
によるメルトスルー
以上でさまざまな炉の崩壊状況を柔軟にシミュレートできることはわかった。このモデルは冷却開始のタイミングによって放
出量が最大振幅でうごくことを試験したものにすぎない。実際には無限の運転状況の組み合わせにしたがって無限点の放出量を計算してくれる。
あとは炉を取り囲むハードシステムと運転人間
系をエージェントベースのコンセプトで構築して計算器内で仮想運転することによりべき分布が得られるのではと期待している。これからの予定は少ない公表
データからプラントエンジニアリングの常識を駆使してスイッチギヤや弁の構成部品である、ソレノイドコイルやバネ、整流器、半導体1万点以上の部品レベル
での回路のロジック、プラントの全体構成、運転員の判断根拠と行動時間などを図表にし、オブジェクト指向でプログラムのだ。
電源と非常冷却系の喪失がメルトダウンに至るFT分析
本研究の目的はあくまでマルチ・エージェントベース・モデルによるべき分布予測であるが、全体のモデル作成には炉モデル作成の10倍の汗が必要。それまで
待てな
いので、PRAの手法の一つFT分析を使って電源と非常用冷却装置のフォールトツリーを作り、現行の軽水炉の脆弱さを証明しよう。福島事
故は津波という単一の原因がDCとAC電源の喪失を引き
起こした。この失敗のルートをみるとエージェントベースのシミュレーションをするまでもな
ということがわかる。ということは下記のように津波でなくとも、単純な電源系や非常冷却系のハードの故障でおなじ危
機がありうるということだ。
UPS battery |
0.001 |
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DC swichgear |
0.001 |
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DC bus* |
0.001 |
|OR= |
0.003 |
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DC logic circuit for IC isolation valve |
0.001 |
- |
- |
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DC MO IC isolation valve |
0.001 |
- |
- |
|OR= |
0.005 |
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|
AC MO IC isolation valve |
0.001 |
- |
- |
- |
- |
|OR= |
0.006 |
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|
UPS battery |
0.001 |
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DC swichgear |
0.001 |
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DC/AC converter |
0.001 |
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AC swichgear |
0.001 |
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AC cable |
0.001 |
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UPS swichgear |
0.001 |
|OR= |
0.006 |
|OR= |
0.009 |
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AC transmission line |
0.001 |
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transformer |
0.001 |
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AC switch gear |
0.001 |
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AC main |
0.001 |
|OR= |
0.004 |
- |
- |
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DC bus* |
* |
- |
0.003 |
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Diesel generator starter logic circuit |
0.001 |
- |
- |
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Diesel generator |
0.001 |
- |
- |
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switch gear |
0.001 |
- |
- |
| |
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AC bus* |
0.001 |
- |
- |
|OR= |
0.007 |
|AND= |
3E-07 |
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DC bus* |
* |
- |
0.003 |
| |
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DC logic circuit for ECCS |
0.001 |
- |
- |
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DC MO ECCS pump suction isolation valve |
0.001 |
- |
- |
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AC MO ECCS pump discharge isolation valve |
0.001 |
- |
- |
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ECCS pump cable |
0.001 |
- |
- |
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|
ECCS switch gear |
0.001 |
- |
- |
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ECCS pump |
0.001 |
- |
- |
|OR= |
0.005 |
- |
- |
|OR= |
0.005 |
| |
|
AC bus* |
* |
- |
3E-07 |
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SW pump cable |
0.001 |
- |
- |
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SW pump switch gear |
0.001 |
- |
- |
| |
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SW pump |
0.001 |
- |
- |
OR= |
0.003 |
- |
- |
- |
- |
|OR= |
0.008 |
コアのメルトダウン至る確率は電源系とICまたはRCICとECCS、海水取水系のFT分析するだけで今回の福島事故とほぼ同じマイナス3桁の確率にな
る。これだけで炉の深層防御は突破される。
過去の電力会社によるFT分析はこのような想定はしていなかったか、要素の故障率が低く想定されていたのかかもしれない。AC電源だけAND結合だが、
ICまたはRCICにしろ、ECCS(2系列だが電源は1系列)にしろ、海水ポンプ(2系列だが電源は1系列)にしろ、隔離弁にしろすべてOR結合であ
る。どこかの電源系がだめなら総崩れ体制で、どこが深層防御だといいたい。
軽水炉技術の本質
軽水炉を使う原発は危機において自動的に安全に停止するような仕組みになっていないという点で自動車のようなものだ。電気信号により制御されているが、電
源が切れれば制御システムは無力化するから人間が止めるだけではだめで、その後も冷却を手動運転で継続するしかない。しかし人間の技にたよるような代物は
技術とはい
えない。これをポスト・ナチュラルサイエンス問題という。航空機はフライバイワイヤー時代だが、信号が伝わらねば落ちる。不遜ないいかただがエアバス1機
おちたところで国家は安泰。保険業界で対応可能。
ところが軽水炉はそうはいかない。土地を失うという社会的なコンセクエンスが大きすぎるからだ。
戦争直後の米国で軍艦を駆動するために生まれた、軽水炉の設計思想をそのまま押し頂いてきた軽水炉は民生用として不適切ではないのか?それを墨守してきた
原子力技術者は認識力が欠如しているのではないか?東芝、ウェスティングハウス、アレバの新設計思想なるものも、電気回路が死ねば制御できない。
ケースー1から6に至る状況が発生する確率をフォールト・ツリーなどという事前想定をして恣意的に排除してきたのが米国の軽水炉技術の本質なのだ。も少し
詳しく論ずれば、制御棒挿入のスクラム弁は1系列しかない。これに失敗したときのホウ酸注入ポンプは電動だから役に立たない。スクラム弁はDCロスでバ
ネ仕掛けで
開く仕掛けと推定されるがバネが折れる確率はどのくらいなのだろう。GE設計の原発は水たまりに乗り入れるとエンコする車とおなじ、保安院は水に乗り入れ
なければよい(薄手の壁を築くこと)といっているだけ。ところが水に乗り入れなくても電気系はネズミ一匹、失火、または単なるケーブルやコイルの劣化、絶
縁不
良、 接触不良、腐食、集積回路の故障、ソフトのバグで死ぬのだ。
自動装置がすべてすべてだめなら人間が止めることになっている。ところが電源がきれればすべての計器はみえなくなる。めくらに故障車を運転させるようなも
のだ。それでも可搬式バッテリーをつなげば水位はみることができる。しかし福島ではスリーマイル島の原因となった悪名高い差圧式がそのまま使われていた。
PWRは温度計を多数炉内にいれて代用しているがBWRは何の対策も取られてはいなかった。
高温
になって水が蒸発すれば幻の水位を示してミスリードする。しかし再稼働にあたっての電力各社の対策にはせいぜいPWRに見習うことだけのようだ。別の形式
の水位計にするなどは検討されていない。常
時基準水柱があるようにプランジャ−ポンプで水を注入することも考えられるが、ステーションブラックアウトでは同じこと。PWRでは炉の中に沢山の温度計
を入れるという対策くらいである。ディスプレーサー式ではスパンを短くしなければいけないが、肉厚16センチもある既存の圧力容器に穴を沢山あけてノズル
を溶接することは禁じ手だ。
全て新しく設計しなおさねばならない。ということは廃炉を意味する。放射線
を使う水位計があるが、放射線が飛び交う環境では使えないだろう。

水位計
人間はフレキシブルだから時間さえ与えら
れれば、なんでもできる。しかし制御棒挿入不可のような事態で
0.1時間以内に人間がなにができるというのだろうか。政府すらオフサイトセンターは役立たずとみとめた。崩壊熱によるメルトダウンの早い展開には人間系
はついてゆけないと認めたのだ。それも福島は津波がくるまでのもっとも崩壊熱が大きい時を冷却できたという幸運すらあったのだ。すなわち人間系では対処で
きないものをすると自己暗示にかけている1000年昔の行者のようなものだ。古い設計思想の原発を、根本的に改造することなく、(実はそれは不可能なのだ
が)、再稼働などは論理的に破たん
している。このように壊れる可能性のある電気で
動く制御系に依存する軽水炉はフェールセーフデザインではなく、救いようがないガラクタだ。そしてそれをバックアップする人間系は特に協調を重んじる組織
で上
の指令待ちでは迅速な動きができないのだから初めから破たんしている。
原子力潜水艦や空母などの軍艦は軽水炉は稼働率も低く、戦場でのみ稼働するものだ。万一のとき海に沈んでしまうため、なんとか使える、しかし人口密度の高
いところでは使えない。現在、東芝、アレバ、ウェスティングハウスなどから新規提案がまな板に乗っているが、いずれも本質的にGEの延長上で
x が小さくなっていない。
軽水炉のメンテナンスでは被ばく制約からメンテナンス要員の使い捨てをせざるを得ず、暴力団の温床にもなり、メンテナンスの質の低下は避けられないという
別の次元の問題もある。
サンフランシスコ地震のとき、米国の高速道路の橋桁が落っこちたのをみた日本の土木工学科の先生方はあれは日本ではありえない事故だと嘲笑した。ところが
神戸地震で高速道路が支柱毎横倒しになって大恥をかいた。いま米国の原発技術者は福島原発事故は日本がお粗末だっただけで我が国では起こらないと嘲笑って
サザン・カ ンパニーの ジョージア州ヴォーグル原発3、4号機向けの東芝の原子炉の建設にOKを最近出した。
福島を自分の目でみたヤッコ原子力規制委員会委員長は反対票を投じ、自分は反対だという声明を
出している。オバマは雇
用が確保されるならと知らん顔。米国やフランスも日本と同じピット・フォールに落ち込んで自分はお粗末な東電とは違うと単に思い込んでいるにすぎない。べ
き分布からみて次はフランスか米国か、はたまた彼らが信じるお粗末な日本が再稼働して墓穴を掘るかという違いしかない。
戦後最大の思想家といわれる吉本隆明は原発事故後、反原発は人間の進歩性、学問の進歩の否定」と批判し、どんなに危なくて退廃的であろうと否定することが
できないといっていたようだ。東工大電気化学卒というのに長らくノンテクニカルな問題に取り組んでいる間にエンジニアリングセンスを失い原子力の本質を理
解できなくなったようだ。なにも原子力をなくしても人間の進歩性、学問の進歩は可能というかむしろ原子力カルトの抵抗がのぞかれて促進される。日本では氏
がもっとも嫌った権力が電力の地域独占をまもるために原子力カルト集団を形成し、あらゆる洗脳技術を駆使して原子力なくして人類の未来はないと市民に信じ
させようとしてきた。その成果が吉本隆明というわけだろう。ミイラ取りがミイラになってしまった。
メルトダウンに至るアイソレーションコンデンサー隔離弁の欠陥
福島1号機のアイソレー
ションコンデンサーと圧力容器を結合する配管が格納容器を貫通するところでは格納容器内にAC電源駆動モーターオペレーテッド隔離弁があり、格納
容器外側の隔離弁は直流駆動である。そして直流電源喪失で全ての隔離弁は閉というロジックであった。たまたま直流電源が先に失われ、
交流電源はしばらく供給されていたため、内側の弁は閉信号で閉となり、その直後、交流も失われたのである、開ける手段は交流電源が復活しないかぎりなかっ
たのである。
米国の自信はSAMG (Severe Accident Management Guideline)や09/11以降作成したマニュアルB5b
Strategiesに格納容器外の隔離弁は手動ハンドルを回して開けると書いてあり、MAAP等の事故シミュレータを
使って恒常的に運転員の訓練をしているからというのだが、停電の場合は内部のMO弁は開
閉不可能なのだ。停電で格納容器内部の隔離弁が開けられないというシチュエーションがシミュレータ・メニューに入っているのか?または電源復旧訓練だけで
ごまかしている
のか?途中のケーブルがいかれていたらどうするのか?それとも隔離弁は停電でも開閉できるように空圧で直接開閉できるAO弁に交換して電力系と別に空圧系
を持っているのか?米国では本
当にこれらを駆使して迅速に対処できるのか?興味がある。
リレー
メルトダウンに至る逃がし弁操作系の欠陥
福島では寝ている子を起こすと津波を想定することを経営陣が拒否したため、非常用電源装置のバッテリーとAC電源のスイッチギアの水没ではじまる。逃し弁
(SR弁)
に作動空気を送り込むソレノイド弁が125V直流電源喪失で作動せず、逃がし弁を開けられなかったため水を注入できないという事態に陥る。仮設バッテリー
でソレノイド弁を開けても格納容器内背圧があがると作動窒素ガス圧との差圧でパイロット弁を開ける原理のため開弁せず。(2号機)それならまずベント操作
して格納容器圧を下げてからと東電は考えることをしなかった。しかし仮にそう考えても、ベント弁は地震によるものとみられる計装配管破断で2号機は開ける
ことができず、各尿狂気は破損した。津波だけでなく津波にも弱かったのである。
逃がし弁(実際のSR弁は別の型式だが原理は同じ)
停電後2時間で燃料棒は露出し、メルトダウンが始まる。するとメルトダウンの熱で中性子計測の ためのsource range monitor/
intermediate range
monitorのドライチュイーブおよびTIPのドライチューブが貫通する炉心温度が727Cに上がった時点で破損し、そこから水蒸気と水素が
格納容器にもれて圧がさがり、結果として消防ポンプから海水を注入できまで下がった。ただそのときにはメルトしたコアも溶けた制御棒貫通部から格納容器下
部に落ちて高熱を発していた。結局
格納容器の温度と圧があがり、サプレッションチャンバーのウエットガスベント弁もAO弁であるにもかかわらずDC電源喪失で開けらればい事態になった。ハ
ンドルで開けようとしたが、放射線が強く、サプレッションチャンバーのキャットウォークを半周したところで引き返さざるを得ず、ハンドル操作もできなかっ
た。次善の策として洗浄されていない放射能を多量に含むガスをドライベント弁(MO弁)をあけて放出しようとしたが、AC電源喪失で開けられず、決死隊が
原子力建屋に入ってハンドルで開けて放出したというのが実態。
ガスが漏れやすいBWR格納容器の欠陥
BWRの格納容器は上部に燃料交換のための大口径の蓋がある。メルトスルーしたコリウムが発する高熱の水蒸気や水素ガスは対流で上部に溜まる。この熱で大
口径の蓋のゴム系のガスケットが劣化してガスが漏れて膨大な放射能と水素が漏れ、燃料交換デッキは爆発で吹き飛んだ。したがって安全対策のためBWRにベ
ントスクラッ
バーをつけてもここからの直接ガスもれを防止できず、意味がない。この点PWRは下図のように格納容器内で燃料を抜きだし、水プールで横倒しにして隣接す
る燃料建屋に開口面積の小さな水中コンベヤー経由水中搬送する構造のため、熱が溜まる上部フランジはなく、漏れを生じにくい。
2号機はベント弁にシリーズで入っているラプチャーディスクの誤差でベントできず、圧が上がりすぎてドライウェルとサプレッションチャンバーを連結するベント管のベローなど破壊されガスと水漏れが生じ、水棺はできず。
BWRとPWRの格納容器内での使用済み燃料棒搬出法
したがってPWRにはベン
ト・フィルターないしスクラッバーをつけておけば仮にメルトダウンしても漏れる恐れは低くなるし格納容器ベント弁も放射能汚染の恐れがすくないため手動操
作しやすい。実際フランスの古いPWRは砂充填のフィルターを付けている。元にスリーマイル島でもメルト
ダウンしたが、下部に制御棒貫通部がないため、メルトスルーせず、格納容器は健全性を保ちセシウムの漏れは底からはゼロであった。しかし安全弁から格納容
器に放出されたガスは放射能を含んでいた。ただスリーマイル島PWRはパブコック・ウィルコックス製のため逃がし弁からのガスはタンク水で洗浄でき、格納容器上部スプレーでも洗浄されたので外気にベントされたのはキセノンだけであった。結果として著者が目
下整理してい
る未公表のべき分布図もこれを示している。日本のウエスティングハウスのPWRも同じ仕組みのため封じ込めは少なくともスリーマイル島程度は期待できる。
再稼働について
日
本では再稼働に当たって、ベントフィルターを付けるだけでよしとしとしているが、非常用発電機と格納容器内のAC電源ケーブルと接続しても信号送信に失敗
すれば格納容
器内の隔離弁が開閉不能となり、メルトダウンする。
そうすれば
格納容器壁を貫通するケーブル類のシールが高温で溶融し、格納容器蓋のボルトが伸びて、放射能が直接漏れ出てくる。ベントフィルターを追加してもこれをバ
イパスする漏
れのため、折角の
フィルターは
役に立たない。ま
さに「神は細部に宿る」
米
国の自信は根拠がないのである。深層防護という以上、空圧で格納容器内隔離弁を直接開閉できるようにするということはMOをAOに交換して電気と空圧いず
れかで弁操作できるようにする必要があるのではないか。また計測も同じで水位計、温度計など別の様式の計器を持つ必要があろう。
格納容器にはウェットベント弁(AO弁)とドライベント弁が用意されていたが、ウェットベント弁(AO弁)は多分地下室でサプレッションチャンバーの破損
か、遮蔽壁がなく裸で地下室に設置されているため、決死隊の運転員がアクセスできず、結局洗浄されていないガスをドライベント弁(MO弁)を手動
であけてベントせざるを得なかった。(以上の推論は政府のIAEA向けの英文の報告書にはドライベ
ントはAO弁とかいてあるのに、BBC特集では発言を契約で禁止されている下請けの匿名の作業員がMO弁を開けたと証言している。東電撮影の映像まであ
り、外見
上、たしかにMO弁である。元東芝の格納容器設計者の後藤氏が東電はドライベントをしてしまったようだといっている。これらを総合して私はウエットベント
弁は危険す
ぎて操作できずアクセスできるドライベント弁と開いたと解釈した。ドライベントはサプレッションチャンバー内のプールでスクラッビングしてないセシウ
ムたっぷりの水素ガスでがもろにでてくる。でもこれしか手はなかった)
消防車または仮設ポンプからの海水または真水をチェック弁があるため開いていたコ
ンデンセートリターン系のラインから炉内に注入できたのは幸運であった。ただこのラインは炉心に注水できないため、後日ホウ酸注入ライン(SLC)に変更
した。1号機のICコンデンサー、および
2、3号機のRCICのタービンは結局最後まで動かなかった。2,3号機のECCSのポンプだけはバッテリーでかろうじて8時間動いたのである。
これらの心筋梗塞状態に陥る可能性を除去する時間的余裕もない
拙速の再スタートは、ロシアンルーレットとおなじである。心筋梗塞の可能性を除去できたとして
も冷却水の確保などせいぜプールの水の流用くらいで容易ではない。結局、新炉を開発することになるだろうが原理からして事故の無い軽水炉など設計できない
ことがわか
る。放射能はすぐ死者をださないが、ゆっくり作用するので避難するしかない。除染は国庫
の破た
んを招く。すなわち軽水炉事故は国土を失うに等しいので住民が納得するはずもない。
政府の対策はモグラたたきを出ない。地震と津波対策だけではないか。電源喪失対策は移動式発電機だけだ、移動式発電機の先のスイッチギアもケーブルも対策
外だ。そう危惧しているとき2012/2/9韓国南部の釜山の古里原発1号機で点検中全交流電源が12分間喪失する事故があったと報じられた。非常用
ディーゼルも作動しなかったという。30年の老朽原発でこのところ電気系統の故障が多いという。2012/3/14には九州新幹線で架線事故で停車中の列
車がバッテリー上がりでパンタグラフを上げることができなくなり6時間も立ち往生したという事故もあった。予備のバッテリーを持つことにしたという。
先日原子力学会に出席したとき、これが心配で日立の技術者にスイッチギアを動かすにはコイルに流す直流が必要だろう。化学プラントのサブステーションのよ
うにスイッチギアにバッテリーを内臓しているのかとバッテリーの場所に関しついしつこく質問したが、彼は私の質問の意味がわからず立ち往生。結局バッテ
リーは集中管理の中央給電方式だとわかった。これはまことに危険な設計思想だ。後で関電の方が通常は直流は交流があるかぎり、整流器で供給するのでス
イッチギアは動く。しかしそうでないときにはバッテリーに切り替わる。それでもだめなら手動という手もある。だから外から交流が供給される限り大丈夫と
いっていたが、外部交流が復活したのに九州JRでは車両のスイッチがはいらず、手動で入れざるをえなかった。それでもバッテリー上がりでパンタグラフを上
げることができなく、6時間対応上したあげく結局別の列車でおして最寄の駅に移動したという。
電力会社はこのようなリスクのあるものをよく運転する気になるとあきれる。無理してリスク犯すより「電気ありません。すみません。節電してください」と
いったほうがよほど楽では
ないか。それでも政府が動かせというなら、免責してもらって動かせばいいわけ。おかしなことに、いわゆる原子力カルト集団の方々はそういう認識ができない
ようだ。そして我々常識人を「危険神話」をまき散らす悪い人々、風評被害をまき散らす悪人と村八分にする工作を始めた。なナオミ・オレスケスが描写した
Merchant of
doubtと同じ手法だ。もしかしたら米国産のジョークかもしれない。日本人は村八分には弱いから、こうしすれば運転再開できると思っているようだ。全く
理
解に苦しむ行為だ。合理的な損得勘定ができない。だから商売センスの良い韓国や中国にまけるのだろう。国家は原発運転再開の是非の判断を急ぐのはだれのた
めなのか。
進化経済学会第16回大阪大会においての井上智洋の「経済倫理学と行動経済学から見た原発問題」は再稼動問題の的をついているのでここに紹介する。原発は
自動車の走行と同じく確率的暴力である。
しかし原発の事故確率はまだ不明である。(べき分布になるが平均値はない)平均値がなければ効用と危険を天秤にかけられない。この不確実性が人々に脅威を
与える。行動経済学では、人は不確実性を嫌悪する傾向にある。これを「曖昧性の回避」
(risk aversionではなくambiguity
aversion)が実験的に確認されている。このような不確実性が不効用をもたらすわけで、原発の忌避は合理的行動ということになる。原発維持派は不確
実性がもたらす不安感を功利計算勘定に入れ忘れている。リバタリアニズム(自由至上主義)からみれば、発送電分離して保険で賠償可能であれば原発稼働も可
とする考えもありそうにみえるがそうではない。まず保険を引き受ける保険会社はない。それに市場が機能するためには賠償額が先にきまっていなければならな
い。しかし賠償額は事後的に裁判所できまる。だからここに市場メカニズムは作用せず暴力的収奪のみが残る。すなわちリバタリアニズムは原発には適用できな
い。だから原発は事故を起こしてなんぼという権利侵害の前に、建設・稼働そのものが権利侵害になるということ。だから事故を起こした時だけ責任者を処
罰して済む話ではない。被害がおよびそうな地方自治体とあらかじめ保証額を取り決めることもリバタリアン原則に違反する。なぜなら個々人と賠償額を取り決
めてないからである。(従軍慰安婦問題が発生する)仮に地方自治体が民主主義的手続きで原発受け入れを決めたところで、一人でも原発に反対すればリバタリ
アニズムからみれば合意なしの取引となる。すなわち暴力的収奪とみなされてもやむを得ない。結果として原発は無宿の地でしか稼働は許されない。こうして
「功利原則」と「リバタリアン原則」に照らし、原発維持の主張は一見合理的にみえてじつはそうではない。
詳しくは原発再稼働の不都合な真実をご覧ください。
軽水炉代替エネルギー
軽水炉が問題なら、ヘリウム冷却の高温ガス炉はどうかという考えもある。しかし高コストで放棄された形式である。
トリウム溶融塩炉なら p を変えることはできなくとも x
を小さくできる可能性があり資源問題も解決できるかもしれない。しかしこれは万能メンテナンス・ロボットがなければガンマ線が強く、人間は近寄れないし、
メ
ンテナンスも、運転もできない。万能メンテナンス・ロボットの開発は挑戦する価値はありそう。ただ核分裂生成物の減量は期待できず廃棄物の捨て場の確保は
政治的にむずかしいのは変わりない。
そもそもなぜ原子力が国家のエネルギー大綱の中核にすえられたかというと、増殖炉をつかうプルトニウムサイクルが無限のエネルギーを生むという古るーい神
話が原因だ。欧米ではとっくにコスト的に引き合わないと捨てられたアイディアである。現に軽水炉で生じたプルトニウムを再処理してリサイクルするフラン
ス・英国産のMOX燃料の価格は通関実績でウラン燃料の7-8倍である。発電単価に換算すると燃料だけで0.73yen/kWh x
8=5.84yen/kWhとなり、原発の発電単価は13.56yen/kWhになる。
MOX燃料がこのように高価ならプルトニウムサイクルは無意味⇒ウラン資源は化石燃料程度だからウランを使う原子力に国の未来をあずけるのは無意味。トリ
ウムにしてもウランの4倍程度の資源量だ。無論増殖は可能だが核分裂生成物の廃棄問題は未解決のままだ。核融合は技術的に未知の領域にあり、仮に成功して
もトリチウムなどの恐ろしい放射性物質を生む。
私は原子力は原爆の派生的産物であると思っている。原爆は野獣同士の覇権の道具として無頼漢を抑え込むためには捨てられない。第二次大戦で負けて米国の保
護下にある日本が原爆はもてないがいつでももてるように原子力で技術者を育成しておいて空威張りするというのが岸以降の政治家と官僚が受け継いだ遺伝子だ
と思っている。ついでに安いエネルギーがでるので結構結構というノリであったがどうもそうでないと分かったのが今回の事故というところではないでしょう
か。人は自分の感覚でしか認知できないというだけ。人間の脳なんて痛い目をみないとパスしてしまうのだ。
地球上に生命が誕生したとき、生命現象はすべて化学反応の複雑なシステムとして出現した。化学反応はすべて電子雲のなせる業なのだ。それに対し原子力は陽
子と中性子から構成される原子核を真二つに割る反応から熱エネルギーを取り出すしかけのため、陽子と中性子数が乱雑な組み合わせの核分裂生成物が生成す
る。これは強い放射線を放出して安定な物質になろうとするから、繊細な電子雲の微妙な作用をかく乱する核分裂生成物というものを生み出す。これは放射線を
発して崩壊し、長い時間をかけて安定物質に落ち着くまで繊細な電子雲をかく乱して生命原理を破壊する。こんなものを快適な生活のためのエネルギーのために
生み出すことは生命原理に反する行為なのだ。人類にとっても他の生命にとって歓迎すべからざるものだ。地球ができて40億年かけてようやく生命の敵である
これら厄介な物質が安定化したというときに、なにを好んで厄介な物質をまたつくりだし、ささやかなエネルギーを得てどうしようというのだろうか。太陽光を
使う光合成も、電気を作るPVも、半導体の論理素子も電子だけを操作し、発電機も電磁作用で生ずる電子の流れだ。自動車だって燃料を燃してでる熱から動力
を取り出す仕掛けだ。
この熱も燃焼という化学反応だから電子雲の変化を利用しているわけ。だから我々生命は電子の領域で暮らすべきで原子核にふれるのはご法度だと考えれば簡単
なことだ。
以上のように学者や専門家は生命原理までおつむが回らぬ、視野が狭いソフィストだ。増殖できるというだけで、コストも念頭にも浮かばず、生命原理の敵とい
うことも認識できず頭に血が上って何もわからぬ
文系中心の官僚機構とそれに操られる政治家達を騙して研究費をせしめ、国家戦略に格上げさせることに成功した。これが原子力カ
ルト集団の実態である。「もんじゅ」などというネーミングをみれば仏教系カルトかなと錯覚するが。
石炭はまだあるし、ローコストである。幸い世界的には安価な天然ガスが発見され、当面はこれに頼れる。石炭だって国際競争力が心配なら他国が使う程度の範
囲内で是是非非でつかえばよい。二酸化
炭素X%削減などという国際協定はもともと石炭比率の低い日本の競争力をそごうとした国際的陰謀とまでは言わないが不平等であることは確かだし、二酸化炭
素温暖化主犯説も仮説の一つに過ぎない。たまたま声の大きいソフィストたちが権力をたらし込んでいる構図である。とはいえ、 化石燃料も有
限。
結局、人類は長い目で
見て太陽の恩恵である再生可能エネルギーに将来を託すしかないことは明白。案ずるより産むがやすし、人類は長期的には再生可能な合成燃料技術をすでに手にしているのである。なにも心配はいらない。
February 15, 2012
Rev. August 28, 2012