第27回松談会

「宮仕え、夫、そして男」=山内一豊(やまのうちかつとよ)

古文書記録に基づいて実際の場面から考える

2006年4月16日(土)東慶寺書院

伊藤一美氏 藤沢市立善行小学校校長、葉山町文化財保護委員長、藤沢市文化財保護委員

NHK大河ドラマ、「功名が辻」の主人公山内一豊について古文書に基づいて研究されている伊藤一美氏が1時間半かけて最近発見された襖の下張りも含め、候文の28通の古文書を直接読み下しながら解説してくれた。そもそも和紙と墨が長期保存に耐えることから膨大な古文書がのこされている。殆どは日常の金銭出納簿であるが大名の手紙も大切に保存されている。候文も殆ど漢字だけであるがなれれば意外に読めるものだとわかった。

そもそも山内は鎌倉の山ノ内出身者の名前のはずだが系図をみても二代前の久豊がどのような出生であったかは記録がない。一豊の命を救い、後に家老になって一豊を支えた五藤吉兵衛が書いた「御家老差出状」に一豊の頬を貫いた矢を抜いた思い出がビビッドに描かれている。

一般に流布している一豊出世の要因として妻千代の内助の功が広く流布されている。内助の功は間違いないのだが、馬を買う話は新井白石が書いた文書に初めてでてくる逸話である。一豊の死後60年を経た二代目のころである。この逸話は千代の内助を美化するために創作されたプロパガンダであると駒沢大学非常勤講師の平野しょう子女史が最近論文書いた。

一豊の実像は織田、豊臣、徳川の三人の権力者に能吏として仕え、権力闘争を乗り切った戦国武将というイメージがクローズアップされる。 天正13年、冨山の佐々成政攻めのときの「羽柴秀吉陣立朱印状」には前田又左衛門が一万を率いて一番手であるのに山内伊右衛門(一豊)はたった七百を率いても三番手である。武力ではなく能吏として評価されていたことがうかがえる。

一豊の出世は長浜城主になった後、家康に嫁ぐ秀吉の妹の旭姫を護衛して、家康の元に送り届ける、のち掛川城主になるのが豊臣と徳川の両方に評価されるチャンスとなった様子が一豊と家康とが交換した書簡からうかがえる。

百姓が玄関に欠落(けっらく)または逃散(ちょうさん)の意思表示をして山に立ち退く場合でも強固手段をとらず融和的にアプローチせよと部下に指示している書簡もいくつかある。 欠落が構成男女の駆け落ちの意味を持つようになったのは面白い。

妻千代の内助の功で最大のものは関が原の戦いの直前、石田三成の書簡を開封もせず家康に転送したことだろう。

そして関が原での功績により土佐の大名に取り立てられるのだが、高知城は掛川城をコピーしたという。おかげで地震などでで失われた掛川城は土佐にのこる図面に従い、鹿島建設がそのまま復原することができたので文化財の指定を受けて建築基準法の枠外の扱いとなっている。

一豊・千代間にできた子は長浜城が地震で崩れたときに死に、養子の忠義が継ぐことになるのだがこの継承をスムーズにするために一豊の妹、合(ごう)の夫の松田政行が徳川の家臣松井理兵に事前根回しを依頼する書簡も残っていて、一族の周到さが分かる。こうして15代山内豊信(容堂)まで連綿とした家系が維持され、土佐藩が明治維新で重要な役をになうことになるのだ。

キャロットでの話し

鈴木大拙の本は翻訳本で読んでは価値はわからない、原著で読むべきとの意見あり。

経典の経は経度、緯度というように縦糸と横糸の縦糸に相当する教えという意味だと井上和尚。

禅の公案の例として「曲がった道を真っ直ぐ歩け」とか「片手の拍手とは」があると井上和尚。

仏教でも神道と同じく死者は差別できない。したがって靖国問題はA級戦犯の分祀より戦線の両側に居た軍人と銃後の民間人戦没者も一緒にして祭る円覚寺方式で一挙解決がいい と井上和尚。沖縄の丘にその先例があるではないか。

松談会のページが私のウエブサイトにあるのを紹介しろというのでグーグルのサーチエンジンに松談会とと入力してサーチボタンを押せば見つかります。Seven Mile Beachと入力すればトップページが10,000,000のリストのトップにでてまいります。皆様が評価してリンクしてくれたおかげですと説明するとインターネットのリンクは仏教の”縁”と同じですなと井上和尚。

米国の科学教育団体「ナショナルジオグラフィック協会」が2006/4/6、1,700年前のコプト語で書かれたパピルス文書「ユダの福音書」の写本を解読したと発表したことが話題となった。「ユダの福音書」はユダが実は裏切りものでなかったということになるのはどういうことかという質問がでた。それに関してはいささかの知識があったのでそれは異端とされたグノースス派の文書でしょう。グノースス派の文書は焚書されてオーソドック派のキリスト教が確立したのだが、このパピルス文書は焚書を免れて現在まで残ったものだと説明する。ベストセラーのダビンチ・コードもこのグノースス派の女性原理を紹介したものと説明する。

酒が深まると

「坊主 一声、二顔、三筆」

「徹すると無になる」

「酒も女もにごうまで」

April 16, 2006

Rev. April 28, 2006


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