脂質異常症の話
動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイドライン2013年版を参考に

平成26年9月24日更新

 血液中の脂質(あぶら)には、コレステロ−ル、中性脂肪(トリグルセライド)、リン脂質、脂肪酸といったものがあり、身体の細胞の膜を構成したり、ステロイドホルモンの材料となったりして大変重要な役割を担っています。しかし、血液中の脂質が過剰になると動脈硬化を起こしやすくなります。このような事から血液中の脂質、特にコレステロ−ルと中性脂肪の過剰な状態を高脂血症といいます。
総コレステロ−ル220mg/dlの数値が一人歩きして、220以上あると、薬剤が使用される傾向がありますが、まず食事療法・運動療法などの生活習慣の改善が大切です。
血清脂質以外の色々の条件を考慮して薬剤は投与されるべきで、すぐにお薬を使われるようであれば、そのような診療に??を持ちましょう!!特に閉経期前の女の方は。
 
以下に記載しました日本動脈硬化学会ガイドラインは心臓の冠動脈疾患の予防あるいは治療を主眼としたもので女性では総死亡率をみると総コレステロ−ルが220〜249の人たちの方が195〜219の人たちよりも低くなっています。
脂質異常症の診断基準値 動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012年版)
                                    
日本動脈硬化学会作成
 2002年のガイドラインの発表以来10年が経過し、日本での臨床介入研究も蓄積されてきたので、今回ガイドラインの2回目の改訂が行われました。2007年度版ではHDLコレステロ−ルの低値が動脈硬化の危険因子でもあることより高脂血症の名称が脂質異常症dyslipidemiaと変更されました。
 今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012版の変更点:
  1:患者のリスクを 絶対リスク(NIPPON DATA 80 を用いての)で層別化 した。 
  2:動脈硬化性疾患に関連する様々な危険因子を包括的に管理することが必要であることが強調された。
  3:高LDL血症 の 境界域 が設定された。LDLコレステロ−ル 120〜139 を境界域 とした。
  4:管理目標値はあくまでも努力目標値で、20〜30%の低下の重要性を
  5:LDLコレステロ−ルの次なる管理目標として NON-HDLコレステロ−ルの数値が導入された。
   中性脂肪値400以上の場合にLDL値を求める 。Friedwaldの式が適用されないので。
  6:新たな危険因子よして、慢性腎臓病(CKD)を導入した。
  7:二次予防・糖尿病では、必要性を認めれば、より厳格な治療を推奨すると。
  8:高リスク状態とはどのような状態かを、よりはっきりと。
空腹時の採血で、
次のA)〜C)のいづれかを満たす状態を脂質異常症といいます。
B)LDLコレステロ−ル:140mg/dl以上     ・・・・高LDLコレステロ−ル血症
C)HDLコレステロ−ル:40mg/dl未満     ・・・・低HDLコレステロ−ル血症 
D)中 性 脂 肪    :150mg/dl以上    ・・・・高トリグリセライド血症   
LDLコレステロ−ル値は直接測定法を用いるか、次のFriedwaldの計算式で算出します(TG値が400mg/dl未満の場合)

 LDLコレステロ−ル=(総コレステロ−ル)−(HDLコレステロ−ル)−(中性脂肪)×0.2

NON-HDLコレステロ−=総コレステロ−ル - HDLコレステロ−ル
    
                               
 脂質異常症のリスク別の脂質管理目標値:(日本動脈硬化学会2012年)
  脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要がある。

                                                         
日本動脈硬化学会編集のガイドライン2012年版,脂質異常症治療ガイド2013年版より、引用。少し表の字が小さく読みづらいと思います。  
  


冠動脈疾患の既往があれば  二次予防の目標値
冠動脈疾患の既往がなく;
  糖尿病,CKD、非心原性脳疾患、末梢動脈疾患(PAD)があればカテゴリ− V
上記の事項がなく、:下記のことがあればカテゴリ−1ランクあげる
 1:低HDL-C 40以下
 2:早発性冠動脈疾患の家族歴(第1度近親者 かつ 男性55歳未満、女性65歳未満
 3:耐糖能異常
 
    
      見にくい表ですみません。
 
 生活習慣の改善ステ−トメント:
1:動脈硬化予防のためには、喫煙と受動喫煙を回避する。
2:肥満に対しては、総エネルギ−摂取量を減らし、身体活動量を増やして標準体重を目標とする。
3:野菜、果物、未精製穀類、海藻類、大豆製品などの摂取を増やす。
4:LDL-Cを低下させるためには、飽和脂肪酸の接種を減らした分、不飽和脂肪酸の摂取を増やす。また、コレステロ−ルの摂取を制限し、食物繊維の摂取を増やす。
5:中性脂肪を低下させるためには、炭水化物、アルコ−ルを制限し,n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす。
6:HDL-Cを上昇させるためには、中等強度の有酸素運動を継続するとともに、体重を減らし、トランス脂肪酸の摂取を避ける。
7:継続的な身体活動や有酸素運動は、動脈硬化予防に有効である。
 
                                       
脂質についてチョット:
A)コレステロ−ルについて
 コレステロ−ルは体内の脂肪成分のひとつです。動脈硬化を促進することから、健康に対して悪影響を及ぼす悪役のイメ−ジばかりがクロ−ズアップされがちですが、その一方でコレステロ−ルは身体の細胞やステロイドホルモンの材料となり、また食物の消化・吸収に必要な胆汁酸の原料となるなど、生命の維持に必要な重要な物質でもあります。

B)善玉コレステロ−ル、悪玉コレステロ−ル
 脂肪は水や血液に溶けにくく、その比重は水よりも軽い。コレステロ−ルは血液中では蛋白質にくるまれたリポ蛋白という粒子になっています。衣服の汚れを水になじませる洗剤を考えてください。リポ蛋白には、からだの各部にコレステロ−ルを供給する働きを持つものがあり、供給するものが多いと動脈硬化が促進されます。逆に回収するものが多いと動脈硬化の進行が抑えられます。供給するタイプのリポ蛋白に含まれるコレステロ−ルを悪玉コレステロ−ル(LDLコレステロ−ル)、回収するタイプのリポ蛋白に含まれるコレステロ−ルを善玉コレステロ−ル(HDLコレステロ−ル)といいます。

C)動脈硬化 と コレステロ−ルの関係
 動脈硬化は子供のときから無症状で発症し、進行するので『沈黙の病気』と呼ばれています。年齢とともに進行しますが、生活習慣によって、動脈硬化は進行します。その結果、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管疾患(脳出血・脳梗塞)などの病気を起こしてきます。
  悪玉コレステロ−ルは血管の内皮細胞を通過しやすく、血管の壁に沈着しマクロファ−ジというおお食らい細胞に取り込まれ、泡沫細胞を形成してコレステロ−ルを蓄積し、これらが集積して粥状硬化(アテロ−ム硬化)の初期病巣のプラ−クを形成し、その周囲に色々の細胞が集まり動脈硬化巣を形成していきます。しだいに血管の内側が狭くなり、血栓などが詰まりやすくなります。すると、臓器に酸素や栄養分が十分に行き渡らなくなり、狭心症や心筋梗塞などを起こしてきます。


D)中性脂肪(トリグリセライド)
 生体内で最も量の多いエネルギ−源で脂肪組織に大量に蓄積されています。生体内のエネルギ−は通常、糖質により供給されていますが、糖質が不足した場合に備蓄エネルギ−として中性脂肪が利用されます。糖尿病ではブドウ糖が利用されにくく、皮下脂肪などに蓄えられた中性脂肪が分解して出来る脂肪酸が使われるので、糖尿病では血液の脂肪酸が増加します。これが肝臓に行くと糖とともに再び中性脂肪の合成材料となるので血液中の中性脂肪が高くなります。

 E)超悪玉のトランス脂肪酸
 記載する内容は勉強中:以下のホ−ムペ−ジ をよろしく  農林水
産省
高脂血症の治療:

1:適度な運動を習慣づけましょう
 無理のない運動、早足歩きなどを毎日続けましょう。運動は中性脂肪を減らし、HDLコレステロ−ルを増やす効果があります。
   運動療法のペ−ジへ。

 2:たばこはやめましょう。 喫煙はHDLコレステロ−ルを低下させます。

3:食事療法について:高脂血症の食事療法
 コレステロ−ルの多い食品は控えめにし、甘いものはほどほどに、食物繊維やビタミンを多くとりましょう。

4:薬物療法
 小腸でのコレステロ−ルの吸収を妨げたり、肝臓でコレステロ−ルが合成されるのを抑制するなどの作用の違うお薬が次々に開発されています。
一般に多く使用されている薬はコレステロ−ルの合成を抑制する薬(スタチン系)です。 商品名としてメバロチン、リポバス、リバロ、ロ−コ−ル、リピト−ル、クレスト−ルという薬です。

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