生牛先物相場急落のあとに発表されたBSE感染牛の確認

米農務省(USDA)は、カリフォルニア州で牛海綿状脳症(BSE)に感染した乳牛が確認されたと2012年4月24日に発表しました。ロイターの『米でBSE感染牛、農務省「人間の健康守られている」』という4月25日付の記事によれば、「(米国内で4例目となる)今回は、農務省の発表前からBSE感染のうわさが広がり、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の生牛先物相場がストップ安を付けたほか、関連商品のトウモロコシ相場も下落した」そうです。実際4月24日の生牛先物価格(中心限月の6月物)の終値は111.57セント(前日比で値幅制限いっぱいの3セント安)となりました。

農務省は、生牛市況の下落のために、感染牛確認の公表を余儀なくされたようです。つまり、うわさがさらに広がり、市況の急落が続けば畜産農家に大打撃になる可能性があったため、公表せざるを得なくなったようです。逆にいうと、市況の下落がなければ隠し続けた可能性が高いようです。そう考えるのは、問題77(健康)でご紹介した『危険食品読本』によれば、2例目のBSE感染のときも、うわさが広がったために、感染を公表したためです。関連する部分を問題の答えからコピーさせていただきます。

「・・・2005年6月に確認された2頭目の感染牛が簡易検査で「擬陽性」となったのは、発表の7カ月前で、その後「顕微鏡で脳の免疫組織を見て診断する検査で、人間の恣意(自分勝手な考え)が入る可能性が高い」免疫組織科学検査(38ページ)で2回検査した結果「陰性」となったそうです。その後、米国農務省(USDA)内部監査局(OIG)の指摘を受けて、より精度の高いウエスタンブロット法で検査したところ「陽性」となったにもかかわらず、その結果は外部に公表されなかったそうです。感染が正式に確認されたのは、一部のマスコミがこの事実をかぎつけたことがきっかけで、イギリスの機関に再検査を依頼して感染が確認されたあとだったそうです。」

『危険食品読本』の話などをよく読むと、隠されているケースがほかにたくさんあってもおかしくないという気がします。

875頭の感染牛がいたと推定される

さらに問題なのは、検査頭数が年間に処理される牛3,500万頭の875分の1に当たる4万頭にすぎないという点です。これだけ検査頭数が少ないと、まともに検査しているとは言えないと思います。逆に、それでも感染が確認されたということは、実際には確認された頭数をはるかに上回る数の感染牛がいると推定できます。統計的に考えると、1頭発見されたということは、875頭の感染牛がいたと推定できます。

「最近気付いたこと」「サルモネラ菌による食中毒事件にみる米食品医薬品局(FDA)のウソ」という記事でもご紹介した非営利の消費者組織であるコンスーマーズ・ユニオン(Consumers Union、以下ではCU)の"CONSUMERS UNION CITES RISKS IN "L-TYPE" STRAIN OF MAD COW DISEASE, URGES USDA TO CONDUCT THOROUGH INVESTIGATION OF CALIFORNIA CASE AND EXPAND TESTING/GROUP URGES FDA TO BAN ALL BRAINS, BLOOD AND POULTRY LITTER IN ANIMAL FEED"( http://www.consumersunion.org/pub/2012/05/018405print.html 、2012年5月1日付)というレポートによれば、検査頭数は1995年に比べて90%減少している(つまり約10分の1になっている)そうです。また、今回発見されたプリオンは、一般的な定型的BSEではなく、非定型BSEのL型であることを米農務省も認めています。英国でこれまで100人以上の死者が発生した定型BSEに比べて、L型非定型BSEプリオンは、より強い伝染力を持っているそうです。L型非定型BSEは欧州やカナダでは発見されていましたが、(米農務省の発表を信じるなら)米国では今回初めて検出されました。コンスーマーズ・ユニオンでは、恐らく飼料から伝染したものではないかとみています。

コンスーマーズ・ユニオンが6項目の提案

このような状況から、コンスーマーズ・ユニオンは下記の六つの対策をとることを農務省と食品医薬品局に要求しています。

(1)農務省は今回のケースを徹底的に調査するべき。感染が判明した牛の子牛すべて、同じ飼料を与えられていた可能性のある牛すべて、同じ場所で飼育されていたすべての牛(herd mate)を検査する必要がある。
(2)検査頭数を少なくとも10倍以上に拡大するべき。
(3)民間企業に狂牛病の検査を「開放」するべき(これまでは、米農務省は民間企業による検査を認めず、狂牛病の検査はすべてアイオア州エイミスの連邦検査機関が「独占」してきた)。
(4)狂牛病を感染させる可能性のある飼料を与えることを食品医薬品局(FDA)は禁止するべき。 特に、肉牛と乳牛に鶏糞を飼料として与えることを禁止するべきである。・・・(鶏糞を飼料としている実態についても、問題77(健康)の答えをご参照ください。)
(5)すべての家畜の脳その他の特定危険部位(high-risk material)を飼料やペットフードとして利用することをFDAは禁止するべき。FDAはある年齢以上の乳牛の脳を飼料やペットフードとして利用することは禁止しているが、若い牛の脳については禁止していない。
(6)離乳期の子牛に、乳牛の血を牛乳の代替品として与えることをFDAは禁止するべきである。

こんな危険な食品ですが、日本政府が米国産の牛肉の輸入を禁止するという動きはないようです。日本政府は米国の言うことにまともに反論できないようです。ご自分とご家族を狂牛病から守るためには、ご自分で判断して行動に移すしかないということです。最後に、『危険食品読本』の34ページの『消えてはいない!米国産牛のBSE疑惑』という章の最初の3行を引用させていただきます。

「はっきりと、結論からいおう。米国産牛肉は、極力、食べるのを避けたい!
なぜなら、米国ほど狂牛病(BSE=牛海綿状脳症)のリスクが蔓延している国はないからだ。」

さらに言わせていただければ、ベジタリアンになれば、こんなことを心配する必要はなくなります。「私がベジタリアンになることにした五つの理由」もご参照ください(2012年5月13日)。

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