問題77(健康)の答え・・・a. から j. までの10項目すべてが正解です。小泉首相や厚生労働省がこれらの事実を把握していなかったとすれば、お粗末そのものですし、知っていたとしたら、ブッシュ大統領との関係を保つために、国民の健康を犠牲にしたと言われても仕方がないでしょう。以下では、『危険食品読本』に基づいて、これらの事実をご紹介します。

a. 米国の食品安全基準は、食の安全性よりも企業利益優先で決められている

米国の食品安全基準が企業の利益優先で決められていることを示す例として、サルモネラ菌の検査の例が挙げられています。米国内のサルモネラ菌による食中毒の患者数は年間100万人以上、死者は500人以上だそうです。これに対して、厚生労働省によれば、2005年の日本国内のサルモネラ菌による食中毒の患者数は3,765人、死者は1人だったそうです。このように大きな差があるのは、精肉業者の圧力で、ブッシュ政権が挽肉のサルモネラ感染の検査を廃止したためだそうです。米国では、サルモネラ菌に侵された挽肉を売っても何の罪にもならないだけでなく、挽肉は汚染されていても、農務省の認定ラベル付きで販売できるそうです。

(2010年7月11日追記:サルモネラ菌による食中毒については、「最近気付いたこと」「サルモネラ菌による食中毒事件にみる米食品医薬品局(FDA)のウソ」もご参照ください。

b. 米国内唯一の連邦政府検査機関で狂牛病であるという検査結果が出ても外部に公表されないことがある

2003年12月に米国内で最初に見つかった狂牛病に感染した牛は、カナダ産だったそうですが、2005年6月に確認された2頭目の感染牛が簡易検査で「擬陽性」となったのは、発表の7カ月前で、その後「顕微鏡で脳の免疫組織を見て診断する検査で、人間の恣意(自分勝手な考え)が入る可能性が高い」免疫組織科学検査(38ページ)で2回検査した結果「陰性」となったそうです。その後、米国農務省(USDA)内部監査局(OIG)の指摘を受けて、より精度の高いウエスタンブロット法で検査したところ「陽性」となったにもかかわらず、その結果は外部に公表されなかったそうです。感染が正式に確認 されたのは、一部のマスコミがこの事実をかぎつけたことがきっかけで、イギリスの機関に再検査を依頼して感染が確認されたあとだったそうです。

c. この検査機関は、狂牛病の疑いの高いヘタリ牛(自力で立てなくなった牛)の組織サンプルの検査を拒むことがある

米国農務省の元検査官、レスター・フリードランダー氏はつぎのように述べているそうです(38ページ)。

「アイオア州のエイミスにある国内唯一の連邦検査機関では、過去に何度も不正確で矛盾する検査結果を出していると聞いています。私が現役時代も、検査の強化どころか、まるで狂牛病が発覚しないようにと、せっかく集めた500頭もの、まともに歩けないヘタリ牛の脳組織のサンプルの検査を拒んだことがあった」

d. 検査頭数は出荷される牛の1%にも満たない

日本では食肉用に出荷される牛は全頭、狂牛病かどうかが検査がされていますが、『危険食品読本』の40ページにはつぎのように指摘されています。

「米国の検査頭数は出荷される牛の1%にも満たない。狂牛病の検査はヨーロッパではおよそ4頭に1頭の割合でなされているが、米国では現在、90頭につき1頭の割合でしか検査されていない〔引用者追記:90頭に1頭なら1%を上回りますが、なぜ「1%に満たない」のかは不明〕。また、03年に1頭目の狂牛病の牛が確認されるまでは、1700頭に1頭しか検査していなかったにもかかわらず、全米肉牛輸出連合会は日本の消費者に対して、ホームページ上や新聞広告などで、『食肉処理前後の全頭検査および解体後の全部位検査』と明記。まるで全頭検査をしているかのようなイメージを与え続けていた。アメリカは、日本の消費者をだまし続けていたのだ」

e. 米国産牛は最近まで骨肉粉を食べていた可能性が高い

米国農務省が世界に向けて発表した狂牛病対策の公約の多くは、法律的な裏付けのない「勧告」(Recommendation、
引用者注:「勧告」は、あとから「ほら、だから言っておいたじゃありませんか」と責任逃れをするために使われる日本の「お役人用語」の典型で、普通の日本語に訳せば「推奨」ということになります。ランダムハウス英語辞典によれば、recommendationは、「行動・行為についての実際的な勧告を意味するadviceよりも意味が弱く、従わなくてもよい意見」を意味するそうです、さらに意味が弱くなるとsuggestionとなるようです)が大半で、これらはほとんど守られていないそうです。例えば、米国政府は1997年から骨肉粉を牛に与えていないとしているが、骨肉粉を牛に与えることを禁止する法的強制力を持った法律はないそうです。

米国の通信社UPIの記者、スティーブ・ミッチェル氏はつぎのように語っているそうです。

「米国で感染牛が見つかって半年もしてから、やっと各農場へ『骨肉粉を牛に与えてはならない』というFDA(米食品医薬品局)の勧告書が回されたのです。それまでは、骨肉粉の入った飼料に『牛の一部が入っているので、牛に与えるな』と書かれたシールを貼る表示義務だけが飼料工場に義務づけられているだけだった。このため、農場には規制などほとんど行き届いていなく、つまり米国産牛は最近まで骨肉粉を食べていた可能性が高い」

f. 米国では驚くべきことに鶏の糞尿が牛の餌として与えられており、この鶏糞には、鶏の飼料として認められている骨肉粉が30%程度含まれている

前出の米国農務省の元検査官、レスター・フリードランダー氏は、つぎのように述べているそうです。。

「私は農務省の検査官時代にその現場を何度も見ています。精肉企業の多くは直営の養鶏場を持っていますが、鶏の糞尿を牛の餌として再利用しているのです。これは20年以上も前から行われていることで、FDAも業界からの圧力を受けて、牛の飼料のひとつとして公式に認めています。大量に運ばれてきた鶏糞を牛の餌の箱に流し込んでも、牛は見向きもしないので、糖蜜(蔗糖製造の際の残液)をかけて、無理やり食べさせているのです」(43ページ)

さらに、FDAの調べでは、牛に与えられている鶏の糞尿の総量は実に、約100万トンに達し、鶏の飼料として使われている骨肉粉が未消化で残ったものが、鶏糞の30%を占めているそうです。

骨肉粉についてはさらに驚くべき話が『まだ、肉を食べているのですか』(ハワード・F・ライマン、グレン・マザー著、船瀬俊介訳、三交社)に載っていました。骨肉粉は「レンダリング・プラント」(動物性脂肪精製工場)というところで生産されるそうですが、この「レンダリング・ビジネス」の年間生産量は1,814万トン、売上高は約2,900億円に達しているそうです。また、この工場では、次のよううなものが処理されているそうです。牛の死体から肉を取り除いた、重量で約半分に相当する部分、病気で死んだ牛はまるごと、ひどい病気にかかった動物、ガンにかかった動物、腐りかけた動物の死体。「保護施設(!)」で安楽死させたまたは道路でひき殺された、600万頭から700万頭のノラ犬やノラ猫などのペット(同書9ページ)。さらに、同書では畜産農家が糞尿を直接購入して牛に与えているのが当たり前になっているとも、指摘されています(11ページ)。

「アーカンサス州の平均的な農場では、毎年50トン以上の鶏の"残り物"(引用者注:排泄物)を牛にエサとして食べさせている。そしてあるアーカンサス州の畜産農民は『USニュース・ワールドリポート』でこう証言している。「最近、田舎の養鶏場の床からかき集めた745トンもの"残りかす"を購入した・・・・」と。それを「少量の大豆繊維と混ぜ合わせ、800頭もの牛に"エサ"として与えている・・・!」というのだ。・・・その農民はこう釈明する。「鶏の"糞"がなけりゃ、俺が飼っている牛の半分は売るはめになるサ。ほかのエサは高すぎて買えないよ・・・・」
・・・・・・もし、あなたが肉好きの"ミート・イーター"なら、これらの糞(クソ)が、あなたの食べ物の"食べ物"だってことを、しっかり覚えておくことだ」

g. 米政府は特定危険部位が肉に混じり込みやすい解体機械の使用を禁止する方針を打ち出したが、法律的な裏付けがないため、ほとんどの食肉解体場で依然として使われている

米国政府は神経部位が混じりやすい機械(MRMやAMR)を使って肉を解体することを禁止する策を打ち出したそうですが、法律的な規制ではないため、ほとんどの食肉解体場で守られていないのが現状だそうです。米国の食肉加工業、最大手、タイソン・フーズ社の元従業員であるメルキアデス・ペレイラ氏は、これらの機械を使用していることを認め、さらにつぎのように述べたそうです(45ページ)。

「脊髄に近い部分でも、・・・機械を使っています。危険部位の処理は何の訓練も受けていない人間が担当することが当たり前のことになっており、ときには脊髄が肉に飛び散って付着していることさえある」

h. アメリカは牛の個体識別制度(トレーサビリティ)がないため、20カ月齢であるか否かは判断できない

アメリカでは、個体識別制度がないため、日本の示す輸入プログラムが求める条件の一つである月齢20カ月以内かどうかを正確に判定するのは無理だそうです。米国では、,月齢を歯の生え具合によって判定しているそうですが、この測定法は、牛の種類や栄養状態、生まれた季節などによって、6カ月の誤差が生じることが分かっているそうです。従って、この方法では、正確な月齢の測定は不可能と考えられますが、実現不可能なことを条件として受け入れるというのは、もともと守るつもりがなかったからなのでしょう。

i. 狂牛病の感染が疑わしい牛については、政府の検査官が確認にくる前に飼料加工業者に回すように、農務省自身が奨励している

内部告発者をサポートする団体、ガバメント・アカウンンタビリティ・プロジェクトの元食品担当者であるフェリシア・ネスター氏は、「政府の検査官が確認に来る前に飼料加工業者に牛を回すように」農務省自身が奨励しているという話しを聞いたため、農務省に確認したところ、『衛生上の問題から、病気である可能性が高い牛を検査官の到着まで保管しておく余裕はない』との回答があったそうです。フェリシア氏は「そのため、全米の農場で、様子のおかしい牛を獣医に診せることなく飼料加工業者に回したり、死亡した牛をそのまま土葬したりといったケースが頻発しています」と指摘しているそうです。さらに、こわい話をすれば、日本でも農民が独自の判断で、狂牛病に感染した疑いの牛を土葬にしているという話を、どこかで読んだ記憶があるのですが、どの本だったか分からないため、見つかったらご報告します。

j. 米国内では、狂牛病による以外の原因は考えにくい、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の集団感染が6カ所で起こっているが、現在では、医師は届け出義務はなく、政府の疾病対策センターもデータを集計していない(なぜか95年に集計を中止した)

米国政府は正式には認めていませんが、米国では狂牛病にかかった牛の肉を食べたことが原因と考えられる、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病の集団感染の疑惑が浮上しています。『危険食品読本』の48―49ページには、次のように指摘があります。

「日本ではどのようなヤコブ病であっても、医師が国に届け出る義務がある。しかし、アメリカの場合、政府の疾病対策センター(CDC)がヤコブ病関連データをまとめていないだけでなく、医師が国に届け出る義務はないため、CDCが動いて調査することなどないのだ。また不自然なことに、95年までは届出義務もあり、CDCも病理解剖のデータをとっていたのだか、その後、データの収集を停止している」

同書では、下の表に示したような集団感染の例が示されています。この中には、30歳以下で亡くなった人も複数含まれているそうです。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の集団発生の例(『危険食品読本』による)

発生州 地区 期間 患者数(人)
ニュージャージー チェリーヒル 97―05年 18
ペンシルベニア レイアレン 86―90年 18
ペンシルベニア アレンタウン 89―92年 15
フロリダ タンパ 96―97年 18
ニューヨーク ナッソー 99―00年 12
オレゴン 全域 01―02年 14

このほかに、『田中宇の国際ニュース解説』というサイト( http://tanakanews.com/e0706BSE.htm 、出典はNBC10.COM の記事、http://www.nbc10.com/consumeralertarchive/3281620/detail.html )によれば、ニュージャージー州の「ガーデンステート競技場」(the old Garden State racetrack)の100人の職員のうち2人、競技場の会員パス(一定料金で何回でも入れる常連者用の定期券)の保有者1000人のうち7人がヤコブ病で死亡し、競技場内のレストラン( the Phoenix restaurant )で食事したことがあるという人がヤコブ病で死んだケースも見つかり、合計で13人の競技場に出入りしていた人々がヤコブ病で死んだことが分かったそうです。

また、アメリカでは、年間400万人が、アルツハイマー病、あるいは痴呆症と診断されるそうですが、そのうちのかなりが、クロイツフェルト・ヤコブ病である可能性もあるそうです(49ページ)。

また、北米では鹿の狂牛病ともいえる狂鹿病(CWD)が大発生しており、その肉を食べたハンターから、26人のクロイツフェルト・ヤコブ病患者がでているそうです。大農場で放牧中に病死したあと野ざらしにされている牛の死骸を野生の鹿が食べていることがあり、これが狂鹿病大発生の原因として疑われているそうです。

以上で答えはおしまいですが。上で述べてきた情報から、たとえ今後、小泉首相が輸入再開を強行したとしても、米国産の牛肉は極力食べないようにするのが賢明だと思います。わたしは、肉のことをいろいろと調べるうちに、肉や魚は食べない「ベジタリアン」になろうと考えるようになりました。なぜそう考えるようになったかを近いうちにご報告しようと思っています(2006年5月5日)。

(2006年10月2日追記)・・・「わたしがベジタリアンになることにした五つの理由」を追加しましたのでご参照ください。

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