初出の1988年に読んで、自分の中のその年のベスト1,2ぐらいだった記憶があるが、機会があって読み返す事にする。
舞台は18世紀のパリ。まったく体臭が無いジャン=バティスト・グルヌイユは、その類いまれな嗅覚の才能を活かし、香りで人間を操るまでになる…。
悪臭に満ちたパリの街、皮なめしのグルマル親方、調香師のバルディーニ、プロン・デュ・カンタルの山での暮らし、致死液説のタイヤード・エスピナス公などなど、再読ではディティールを堪能出来た。しかし、やはりラストは衝撃的。何度読んでも傑作。
当時悪魔小説と言われた記憶がある…「悪魔には体臭が無い」って何が元だっけ??
出産のためにマンハッタンから、郊外ブライヤウッドのセカンドハウスへ移ってきたペイジと弁護士のジェイソン。屋根裏に隠れていたリリーという少女が悲惨な虐待の被害者だと知り、しばらく一緒に暮らす事にする…。
恐怖小説としては、その語り口は素晴らしい。一直線に進む物語で、ドンデン返しも裏もあまり無いけど、とにかく怖くて面白かった。妊婦の心理状態の使い方、心理セラピストなどの使い方も上手い。
大ベストセラーで図書館で予約していたのだけど、忘れた頃にやっときて読んだ。TVとか、いろんな所で情報を得ているので新鮮さは無かったが、内容は面白いしためになる。世の中の皆が読むと、ちょっとは平和になるでしょう。
前作「十一番目の戒律」で書いた様に、ニ年で一冊のペースの中で今回は短編集になる。短編集としては4冊目。今回、実話ベースのものが目次でマークされているので、それを意識して読むとちょっと違った楽しみ方が出来る。
法律の知識を駆使して犯罪を働く「犯罪は引き合う」、計画的な結婚の「偶然が多すぎる」など、詐欺の様な話が多いが、ケープタウンの人種差別の話「心(臓)変り」など心暖まる話もある。文章の質も高く、楽しめる。
ワインバーグなどソフトウェア工学の本は好きでよく読んでいたのだけど、久しぶりのその手の本。MacOS XのMLで話題になっていたので気になっていた。
利用実績のあるデザインを再利用して時間・費用・労力を節約するのがデザインパターン。アンチパターンはその逆の意味で、ソフトウェアの開発や導入が成功するために避けるべきパターンの事。「打ち出の小槌」「お邪魔妖怪」「機能分解」など名称を付けて分類している。
訳者あとがきに有る様に、その失敗は第三者的にはかなり笑える。滑稽ではあるが当事者としては真剣な問題であり、ソフト開発を手がけるなら目を通すべき本。特にオブジェクト指向の開発では役に立つ。
ベトナム解放の2年後の1977年にベトナムを2週間訪問した著者、20年後の再びベトナムを訪れた時の記録。96〜98年の旅を再編成したもの。経歴としては、民社党本部、新進党と機関紙を担当しているらしい。特に新しい視点も無く、政治家らしい視点も感じられない。マッサージやカラオケでの行動が、どうもおっさん臭いのが情けない。文章も下手。
水上マーケットツアーの中で著者がOLに勧めている、吉田元夫「ベトナムの現在」(講談社原題新書)、皆川一夫「ベトナムのこころ」(めこん社)、近藤紘一「サイゴンから来た妻と娘」(文春文庫)には目を通しておきたい。映画で勧めている「青いパパイヤの香り」「シクロ」は観ているけど。(というか、ベトナム映画は少ない)
「アジア・キッチン旅行」の著者という事で読む気になった。開高健の影響で行った初めてのアジアが香港、そこからのめり込んでいくアジア初心者の時代。初々しさはあるけど、読んでてもあまり面白くは無い。情報的にも視点的にも面白さは少ない。「アジア・キッチン旅行」はもっと面白かったのに。バンコク、ベトナム、韓国、トルコなどなど。
第10章「香港オールディズ」は、横濱正金銀行で1920年代後半から1930年代後半に香港に赴任していた父のアルバムの記録を追う旅で、まったく毛色が違う。でも、ここが一番面白い気がするので、もっと調べて書き込んで欲しかった。
「大江戸ボランティア事情」でも組んで書いている二人の新作。江戸の生活の一部を自分で体験してみるという企画。不定時法の時計を使ってみる、旧暦で暮らしてみる、火打ち石で火をつける、
、行灯を使う、、筆で字を書く、着物で暮らす、下駄を履くなどなど。「大江戸えねるぎー事情」の石川英輔らしく、リサイクル、エネルギーという視点で見るものが多い。不便ではあるが、便利な点を積極的にみている。
主人公のキャシー・キングズリーは精神科のレジテントで糖尿病の持病を持ち、左目も手術が必要なほど悪化している。夫は天才的な心臓外科医トマス。
手術後、順調に回復していると思われた患者を襲う突然の死、SSD<術後突然死>を不信に思ったキャシーは、友人のロバートとともに調査を始める。途中までは病院の細部の書き込みや、サスペンス味や、犯人は誰だ的な面白さはあったけど、ラストはなんか余りにあっけない。