男の料理を扱った本は多いけど、著者が玉村豊男となるとそれがありきたりでない事は予想出来る。内容的に面白かった。
実に理論的、明快にワンステップづつ基本を学んで行くのが面白い。料理の展開の視点は、ちょっとしたカルチャー・ショックさえ覚える。
一般法則からの展開が凄い。刺身から中国式海鮮料理への展開も面白いが、やはり第2章のチャンコ鍋からご飯と味噌汁へ展開し、それがポトフ、しゃぶしゃぶ、タイ式牛肉サラダ、ベトナム式スープ麺と展開していく様は感心するほど。面白い。
KKベストセラーズ刊の単行本「男の旅立ち、いざ厨房へ」の改題。
ちらりと読んだ内容からはムズカシそうな雰囲気がしたのだけど、読んでみるとこれが理解しやすく、何しろ面白い。日本語の成立についてこれだけ判りやすく書いている本は初めて。
後書きを読んでみると、なるほど、「仮想読者は高校生、女子高校で講演するようなつもりで、啓蒙的に、かつ、専門の枠から出て広場の言葉で書いて欲しい」と頼まれたとの事。しかし、こういう本はもっと読まれるべきだと思うし、類書がもっと出てきて欲しい。
各章、ポイントとなる人間を軸にして展開する。日本語表記の創造(古事記・太安万侶)→和文の創造(古今和歌集・紀貫之)→日本語の仮名遣の創始(明月記・藤原定家)→日本語の音韻の発見(本居宣長)→近代文体の創造(夏目漱石)→日本語の文法の創造(時枝誠記)、という風。
(表意文字とは)、初めから言語の音声的側面を犠牲にし、切り捨てることによって成立したものである
「古事記」、「日本書紀」の編纂の事情から推測すれば、「儒教の伝来」を伝える事が主たる目的であり、「中国語の伝来」はその結果の一つとして見るのが穏当な解釈であろう。
万葉仮名は仏典の陀羅尼の影響を受けたもの。平仮名、片仮名は日本人の独創であり、それは事務処理の合理化から生まれた。
…なるほどと思う所が多い。一番面白いと思ったのは、
「平岡のambitionヲinstigateシヤウトシテ失敗。広瀬中佐ノ例」
という漱石の「それから」のメモ。漱石の第一の仕事は、この様な内的言語から国民語のスタイルに変換する事であったらしい。面白かった。
アフォーダンスについては、デザインや認知の分野で多少は聞いた事はあったが、まとめた本を読んだのは初めて。というか、アフォーダンスについてまとめた本はこの本しか知らないが(^^;)。
「情報は人間をとりまく環境そのものの中に実在している」と説く、生態学的認識論アメリカの心理学者ギブソンと、その後継者=ギブソニアンの話。
ファイ(仮現運動)現象(離れた交互に点滅する二つの電球があるスピードを越えると位置の知覚ではなく、移動運動として知覚される)の話や、メロディは移調し要素音を変えても同じメロディに聞こえる事からゲシュタルトの存在を説明し、「ゲシュタルトの知覚は要素を感覚する事と同じレベルで起こる」と展開させる。非常に面白かった。
だまし絵についてまとめた本。だまし絵の内容的な分類が多いが、パルテノン神殿の柱が錯覚のためにわざと反対側に曲げてある事や、15世紀から17世紀にかけてのルネッサンス後期のミケランジェロやボッロミーニといったローマの画家や建築家たちが、回廊や広場を造る時に、空間や材料による制限以上の奥行きや大きさに見えるように、遠近法の錯覚をうまく利用した事などの一般的利用の話もある。類書が少ないので、もっと応用の話も書いて欲しかった。
著者が、脱眠時イメージ、入眠時イメージの幾何学的模様を、子供の頃からずっと記録し続けている所が凄い。
横溝正史賞佳作。
定年間際の男が、復讐のためにシステムに侵入し、銀行から大金を奪う。その犯罪が以外な展開を生んでいく。オタク的なディティールは面白かった。でも、ストーリ的には単純過ぎて面白くなかった。月曜ドラマスペシャルで、藤田まこと、菅野美穂、細川俊之でドラマ化されたけど、そういうディティールはすべてカットされ、侵入後の後半しかなかったのでつまらなかった。
犯罪心理学を学ぶ女性が、見知らぬ少女を救うために猟奇的な殺人犯に立ち向かう。出だしがあまりに唐突で、展開も唐突。なんか、ストーリ・テーリングとしての面白さは薄い。このストーリ自体は、犯罪心理学の専門家が、いかにサイコな凶悪犯と対峙するという所にあると思うのだけど、そこはホントに薄い。
クーンツは嫌いじゃないけど、このアカデミー出版天馬龍行の超訳というのは勘弁して欲しい。日本語としての美しさにかけて、まるで機械翻訳みたいで。一般的には読みやすいのかもしれないけど。
時間つぶしに本が欲しかったので、しょうがないからキオスクで買った本(^^;)。まあ、斎藤栄ってのがいかにも時間つぶしっぽいけど。
斎藤栄自選のお勧め品を文庫本化するシリーズらしい。「勝海舟の殺人」(「虹の幻影」改題)、「日本のピラミッド殺人事件」の二作。
両作とも、飽きないけど好きにもなれない、いかにもキオスクな本でした(^^;)。
「マリ・クレール」に連載していた野田秀樹のエッセイ。
2035年の野田秀樹が孫たちにする昔のお話の形になっている。この構成はちょっと面白い。取り上げるネタは牛乳瓶、ガリバン、カエルの解剖、道端、クジラ、お下がり、そろばん、ダイヤル、たらい、ちりがみ、柱時計、文房具、駄菓子、ドッジボール、運動会の白足袋、縁台、ピン色の冷やしそうめん、蚊帳、銭湯…。それぞれ視点が面白い。
野田秀樹とは、たいして年代も違わないのでかなり共通した視点で見られて共感出来る。文章自体としては、それほど面白くはないけど、この共感がちょっと楽しいおしゃべりみたいな感じで楽しい。
しかし、運動会の白足袋というのは経験ないのでまるっきり判らない(^^;)。野田秀樹の年で、そんな経験しているのかなあ??
なかなか面白い。
M・スコット・ペック の「平気でうそをつく人たち」-虚偽と邪悪の心理学-みたいに一つ一つの例を深く突っ込んで調べている所が米国のジャーナリズムっぽい。億万長者の息子が家族が乗ったワゴン車を爆破、陸軍士官候補生が就寝中の家族を射殺、詩が好きな少女が服従する恋人を使って家族を殺害。これらの事例の詳細な研究も面白いけど、一番面白いのは総論としての「家族殺人の歴史社会学」。
ここは読む価値が高い。
「家族殺人は野心的で裕福でもある家庭に起こりがちなようだ」
「労働者階級であれば強盗に入り自分以外の家族を殺害し、中流以上であれば自分自身の家族を殺害する」
うーむ、深い。アダルト・チルドレンなどでも研究されている家族の問題を、親殺しという点から見ている。
'97年版はとっくの昔に出ていたけど、今ごろ読んでみる。参考になるけど、ちょっと読むのが遅かったか(^^;)。
すでに10冊目になるのに、実はあまり読んだことが無かった(^^;)。
好きなの嫌いなのは半々ぐらい。 個人的にはトリックに主体を置いた本格モノよりも 「エジプト人がやってきた」みたいな気軽なのが面白かった。
やはりプロで無いだけあって、文章が稚拙なのはちょっと疲れる。それが評価に入りすぎているのかもしれない。
米国に住むなら、それも小さい子供を米国で育てようと思うなら、凄く参考になると本だと思う。米国人の夫と二人の子供と、サンフランシスコに住む著者の経験からのエッセイ。
その現実的な所と細かい所が実に面白い。ほとんど世間話みたいな細かい話だけど、読んでいても楽しい。いかにも実生活の経験に密着した話でショートパンツや靴下、Tシャツの短さ、洗濯物を干すとくる近所からのクレーム、読んでいるだけで面白い(^^)。
多少、米国賛美が鼻につくと所もあるけど、全体に面白いし、読んでて為になります。移住しなくても。
「アダルト・チルドレン完全理解」の著者の信田さよ子の著書。
基本的に重複した内容が多いが、日本の家族における共依存についてが主たる話題。
セラピーをやっているだけあって、離婚や家族解散など現実的な解を出している所が面白い。
中で、「ちびまる子ちゃん」と「サザエさん」の家族を比較し、「ちびまる子ちゃん」の家族はアダルトチルドレンの家族だと決めている所が凄い(^^;)。あの漫画の毒を、この様に解体して見せた人は初めてでしょう。
さくらももこは著書の中で「おばあちゃんが死んだ時、本当に手を打って踊りたかった」と書いているそうで…凄い(^^;)。