Koshimizu tougen
    − 太陽系内の囁き −
アオサギ
    ・
    ・
無間にも怖じけることなく、
 天国にも惑わされることなく、
  無辺世界の闇に孤高を持する月が、
   うす笑いを浮かべ、沈黙を破る。

   「何が分かっているというのだ。
     偶さかの星屑に寄生する穀潰しの人間が、
      そんなに偉いのか」
    すると、太白星が一際の光を放ち、

    「観るがよい、光こそ存在であり、いのちである」

     と、月に味方するでもなく、独白する。
    本来なら、嘲笑や啓蒙されるべき対象の惑星では絶対にない筈の地球が、
     落魄の身をさらし、

     「善かれと思ってしたことが裏目に出た。
       Homo sapienseは我が大いなる誤算であった」

        それに、

         「我を知るためにと、神を与えたのが錯誤であった、
           なぜなら、それをも戦いの道具にした。
            まこと獅子身中の虫である、我、満身創痍なり」

             と、嘆く。
                 更なる闇の奥の死者の世界から、始終を観る王が威厳を保つ低き唸りを発し、
                  告げる。

                   「汝、慈しみの星よ、黄泉に還るがよい。冥界こそが癒しであり、
                     暗黒こそが甦りである。嘆くことは無い、汝は十分に意を尽くした」

                      小癪に障る滅びのものの格付けを冷笑し、冥界の王は念を押す、

                       「すべてを始末し、来るがよい」

                         と、転生へ誘い、震撼する低き唸りと共に、
                          飽く事なき永劫の沈黙の中へ退く。
                                 ・
                                 ・
 永劫を刻む波動  大慈大悲  月、語る  狸、語る  暗黒へ羽ばたけ