Koshimizu tougen
− 太陽系内の囁き −
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無間にも怖じけることなく、
天国にも惑わされることなく、
無辺世界の闇に孤高を持する月が、
うす笑いを浮かべ、沈黙を破る。
「何が分かっているというのだ。
偶さかの星屑に寄生する穀潰しの人間が、
そんなに偉いのか」
すると、太白星が一際の光を放ち、
「観るがよい、光こそ存在であり、いのちである」
と、月に味方するでもなく、独白する。
本来なら、嘲笑や啓蒙されるべき対象の惑星では絶対にない筈の地球が、
落魄の身をさらし、
「善かれと思ってしたことが裏目に出た。
Homo sapienseは我が大いなる誤算であった」
それに、
「我を知るためにと、神を与えたのが錯誤であった、
なぜなら、それをも戦いの道具にした。
まこと獅子身中の虫である、我、満身創痍なり」
と、嘆く。
更なる闇の奥の死者の世界から、始終を観る王が威厳を保つ低き唸りを発し、
告げる。
「汝、慈しみの星よ、黄泉に還るがよい。冥界こそが癒しであり、
暗黒こそが甦りである。嘆くことは無い、汝は十分に意を尽くした」
小癪に障る滅びのものの格付けを冷笑し、冥界の王は念を押す、
「すべてを始末し、来るがよい」
と、転生へ誘い、震撼する低き唸りと共に、
飽く事なき永劫の沈黙の中へ退く。
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