アルーシャ国立公園から出るまで1時間、さらにマラングゲートまで途中のトイレ休憩1回を経て数時間。 着くまでも着いてからもほとんど生きた心地がしない。 他の人に話しかけられても満足な会話もできない。 未だかつてこんな気持ちで山に登ったことなどないので、 この先何が起こるのか予想もつかない。。。
メルー山
「このまま少しでも登る時間が遅れればいいなぁ」 という私だけが思っている期待をよそに入山手続きは終了し、 登山が始まった。 初めの1時間くらいはなんとか登れたが、 そこから先は思い出すのもつらい。 生まれてからこれほどつらい登山があっただろうか。 いや、あるはずがない。 だってこんなにつらい思いをしてまで登り続けなきゃいけないことなんて今までなかったのだから。
ポーターのPAULIとともに10分歩いては5分休むのを繰り返す。 その10分でさえ果てしなく長い時間に感じる。 11:00にマラングをスタートして3時間のコースを日が暮れるまでにたどり着ける自信がないつらさをどう表現したらよいのだろう。 あまりにも力が出ないのでフルーツを食べたのがさらに裏目にでて、途中の休憩ポイントで朝から食べたものを全て吐いてしまった。 キリマンジャロに登って、高山病のために登山中に吐いた人の話はHPとかでたくさん読んだけど、こんな標高2000mなんてところで吐いてる人なんかいないよなぁ。。。
日本でさえ食事をしないと登山中に動けなくなってしまう私がこんな状態で登り続けられるわけがない。 5分の休憩中もほとんど口もきけないほどの状態で寝そべっているので、他の登山者にも何かと声をかけられる。 まず、日本人のおばさんにあんまをしてもらう。 次に、欧米人に声をかけられて 「エナジーシュガー」というエネルギー食料をもらった。 みんなやさしい人たちだなぁ、とおぼろげな意識の中で感謝しながらも、「今日中にマンダラハットまで着けるのだろうか」という不安がどうしようもなくおそってくる。 しばらくすると、普通の倍以上の遅さで登っているので、 他の登山者もぱったりいなくなった。
つらくなって倒れ込むたびに「なんでこんなこと高いお金払ってやってるんだろう」ともうろうとしながら考える。 ふと登山を始めた頃のことを思い出す。 初めは登ってもつらいだけで、つらいことを克服したちょっとしたいい気分のためだけに登っていたけど、 だんだん登ってる最中も楽しくなってきた。 なのに、この登山は初めのころの登山よりもずっとつらい。 こんなことしてたらキリマンジャロだけじゃなくて、 他の山に登ることも嫌いになりそう。 今回アフリカから日本に帰ったらすぐに、 簡単そうな山に登ってもう一度楽しい登山をしておかないと登山の印象が悪いままになっちゃうかも。。。
その後の苦しみがどれほどだったのか今では思い出すことさえもできない(下山して数日で思い出すことができないほど想像を絶するつらさだった)が、文字通り這うようにしてマンダラハットに到着した(17:00)。 他のメンバーが声をかけてくれるが、応えるよりも先にトイレに行きたい。 トイレから戻ったらベッドから動けなくなった。 リーダや他のメンバーからエネルギー飲料、薬、エネルギー・ゼリー、トイレットペーパーをもらう。 リーダはまだしも他のメンバーが持ってきたものまでもらっているのだから迷惑な話だ。 自分ではそれなりにいろいろと準備したつもりだったのに、 こんなことになるとは全く予想していなかった。
この時期に日本で感染性胃腸炎にかかっていた人は多いらしいので、その人たちにはこのつらさが少し分かるかもしれないけど、 その中で登山を強行した人なんてほとんどいないだろうなぁ。 私のような根性無しにこんな試練はかなり酷だ。
しかし、最初はこの日本で流行っていた病気の発病が不幸だと思ったけど、
今では「アフリカに行くことができただけでも感謝しないと」と思っている。
こんな体験をしないと他の人の不幸が身にしみないなんていうのはずいぶん情けない話だ。。。
自分がうなされながら思い浮かべた世の中の私よりも不幸な人々(と私が勝手に思った人々)のことをここに列挙することさえ恥ずかしい。
S17,761歩、Y17,447歩。