'90s BEST 20 (PART1)


 88年に上京した私ですが、最初の2年間は身内と同居しており、ひとり暮らしを始めたのは90年からです。と、いうことはわたしにとって90年代=ひとり暮らしの10年間なんだなあ、と気が付いて、この10年間で好んで聴いた20曲を集めてみようと、他人にはどうでもいい企画を立ててみました(購入店を憶えている盤に関しては、それも記載しています)。まずは10曲。

Artist
THE WHO

Title
HEAT WAVE A QUICK ONE (HAPPY JACK)

Label/No.
MCA/MCAD-31331=CD

 当時のイギリスのバンドはアメリカン・ポップスを好んでか、仕方なくか、とにかくよくカヴァーしているのですが、その中でも好きな曲がこのマーサ&ザ・ヴァンデラスのヒット曲のカヴァー。ピート・タウンジェントのジャカジャカしたギターに、ジョン・エントウィッスルのファズをかけた(歪ませた)超格好イイギター・リフみたいなベース、キース・ムーンの聴くものを唖然とさせるドラムに、ロジャー・ダルトリーのここでは爽やかなヴォーカル、そしてメンバーのコーラスとそれらのコンビネイションが絶妙。原曲を一度ブチ壊して、オリジナルとは全く別物の自分達の曲にしてしまっているところが凄いと思います。それでいて、H=D=H作の原曲のメロディーのよさが失われておらず、浮かび上がってくるのだから、楽しみが2倍になっているとも言えます。

 ジャム『セッティング・サン』の中にこの曲のカヴァー入れていますが、、もしジャムのカヴァーが好きでフーのカヴァーを聴いたことがない人がいたら是非ともフーのも聴いてみて欲しいです。聴いて損はないと思います。また、リンダ・ロンシュタットのカヴァーもありますが、こちらも地に足が着いた演奏、歌に好感が持てます。

 フーは学生時代の友人に好きな奴がいて、その影響で聴き始めました。ハード、ブルージーかと思えば、ソフト&メロディアスな曲もあったりして、そのつかみ所のなさは正に「四重人格」。そこが私にとっての魅力。

Artist
LOU REED

Title
WALK ON THE WILD SIDETRANSFORMER

Label/No.
RCA/PCD14807=CD
 彼にとって最大のヒットであるこの曲は、ミック・ロンソンデヴィド・ボウイの当時イギリス、グラム・ロックの人達のプロデュースによるもの。ラップのサンプリングにも使われた、パシャパシャした軽い感じのドラムと太いウッド・ベースのリフレインするフレーズが印象的で、それにささやく感じで歌う彼の歌がシミてきます。ドラム、ベース、ギター、コーラス、サックスとバックも無駄がなく、アコースティックな作りなので、ヴォリュームを上げてついつい聴いてしまうのは私だけ? 72年作。
 
 学生時代から忘れた頃に聴きたくなる曲で、もう10年以上聴いている事になるのですが、今聴いても新鮮で飽きません。そしてシミます。89年ころ、当時持っていたロックのガイド本に載っていて、ロキシーの1枚目などと共に宇田川町のタワレコで購入。

Artist
WILLIAM BELL & JUDY CLAY

Title
MY BABY SPECIALIZESTHE COMPLETE STAX/VOLT SINGLES 1968-1971

Label/No.
STAX/9SCD-4411-2=CD

 スタックスのドル箱ライター・コンビ=ヘイズ&ポーターによるこの曲は、ウィリアム・ベルの真摯な態度が曲全体を被っている印象があります。兎に角いい意味で真面目な歌い方には聴く度に胸を打ちます。そして、バックも非常にタイトなプレイ。シンプルだけど押しの強いドラムと、すき間がいい具合のベースのリズム隊はもう大、大、大好き。ひっかかる様に絡んでくるギターのカッティングもシミてきたりして。&JUDY CLAYとなっていますが彼女はコーラス程度の参加。

 この曲の収録さてているボックスを、新宿ルミネ2にあった当時のタワレコで購入した頃(93年)が、私のソウル・ミュージックの聴き始めになります。サザン・ソウルの好みで言えば、現在はハイの方なのですが、1曲だけサザン・ソウルから選べ、と言われたら今でもこれかなぁ。68年作。

Artist
コーネリアス

Title
ムーン・ライト・ストーリー

Label/No.
トラットリア ポリスター/PSDR-5070=CD

 こんなに親しみやすく、高揚感溢れるメロディーはそうないと聴く度に思います。個人的に渋谷系音楽から一曲選べと問われれば間違い無くこの曲を選びます。私にとっては聴く度に、HMVとクワトロWAVEがあった頃のセンター街奥の風景を思い出させる、当時の渋谷のサウンド・トラック的ナンバー。しかし、案外この曲を知らない人が私の周りには多い。そんな訳でこの曲を広めるべくカラオケに行くと、必ずと言っていい程歌っています(笑)。

 渋谷系全盛期の93年、ファンの期待に100%応えるような、これぞ渋谷系と言わんばかりの『ファースト・クエスチョン・アワード』からのシングル・カットですが、アルバムとはアレンジが変わっています。

Artist
ROGER NICHOLS & THE SMALL CIRCLE OF FRIENDS

Title
LOVE SO FINEROGER NICHOLS & THE SMALL CIRCLE OF FRIENDS

Label/No.
レキシントン/LEX-9317=CD

 左スピーカーからリズム、右スピーカーからブラス、真ん中からヴォーカルと順に音が飛び出してきますが、今でもその度にゾクッ。2分足らずの間、ムサい部屋にいることを忘れさせてくれます。「洗練」と言う言葉がこれ程似合うロック・ナンバーもそう無いと思います。フォー・キング・カズンズのヴァージョンも可愛い仕上がりで結構イケます。しかし、何言っても文章力の欠如を露呈するだけ。とほほ。兎に角聴いたことない人は聴いてみて頂きたい。67年作。

 ソフト・ロックのバイブルのアルバムの中でもこの曲は、1番多く聴きました。しかし、ある友人に聴かせた時「ブラス・ロック?」とのリプライ。「ソフト・ロック」というジャンルの曖昧さを感じたのを思い出します。94年頃、当時の池袋WAVEで購入。

Artist
TANIA MARIA

Title
OLHA QUEM CHEGA

Label/No.
東芝EMI/TOCP8211=CD

 「サバービア・スイート」関連で再発された、ブラジルものの1枚。この中に入っている「HEY VOCE」(Eの上に山型のアクセント表示が付く)はホーン、オルガン、グルーヴするリズム隊が、ポリ・リズム的にそれぞれバラバラなことやっている様でいて、聴いてみると只ただ、ひたすら爽やかな「サウダージ・ブリーズ」なサウンドを紡ぎ出しているといった具合。それに清涼感溢れる彼女のヴォーカルが、加わって部屋の湿気がなくなる気がする1曲。

 個々のパートを聴いていると、それぞれのプレイは尋常でないテクニックを感じさせ(とくにドラムとベースの複雑さはそれまで聴いた事がない程)、この聴いた時の似た印象(個々のパートをつまみ出して聴いても凄いと思わせる)の曲はスティーリー・ダン「麗しのペグ」。そして、この曲をくり返し聴きまくっていた頃は、「麗しのペグ」より格好イイし高度、とそんなことを私に思わせた唯一の曲。2分15秒であっと言う間に終わらせる編集感覚にも粋を感じさせる。71年作。

Artist
TODD RUNGREN

Title
HELLO IT'S MELISTEN TO THE MUSIC '70S MALE SINGER/SONGWRITER

Label/No.
RHINO/R2 72446=CD

 この人のこの曲について、私がとやかく言う事も無いとは思うのですが。やはり、よく聴いたので取り敢えずこの選曲に入れときます。

 それでも一言二言いわせて貰えば(オイオイ)、アル・クーパーがアイデア先行で詰めの甘さを感じさせることがあったり、キャロル・キングには覇気の無さを感じさせる事があったり、ローラ・ニーロが感情むき出しになったり、と自分自身でコントロール出来ていない部分があるなあ、と感じさせることがある(それぜれの味にもなっており、イイ悪いの問題ではない)のに対して、この人の音楽は彼の考えがそのままストレートに音に表れていると感じさせてくれます。曲によってのクオリティの差はあまりないと。だから、それぞれ曲を聴いての判断は只ただリスナーの趣向の問題となると思います。そんな中、「HELLO IT'S ME」が好きな私はやはり、ただのポップス・ファン。

 因に渋谷ハンズ前のウルトラで購入した、このライノのコンピに収録されているのはシングル・ヴァージョン。アルバムでは収録されているイントロの楽屋風景をカット、エンディングもフェード・アウトとなっており、より無駄を省いた作りになっています。アルバム・ヴァージョンは72年、シングルは73年発表。

Artist
ORANGE JUICE

Title
FALLING & LAUGHING
THE HEATHER'S ON FIRE "THE POSTCARD SINGLES"

Label/No.
ポリドール/POCP-1279=CD
 兎に角疾走感、スピード感、切なさ感、全てに渡ってシミてきます。シンプルなドラムにベースのフレーズが格好良く、イントロだけで鳥肌もの。それにエドウィン・コリンズの野太いヴォーカルがイイ意味で青臭く、真にエヴァー・グリーンな一曲。80年作。

 このネオアコを代表する曲は、メジャー・デビュー盤にも再録していますが、このポストカード時代のものと比べると、メジャー・デビュー盤が無機質な80年代のサウンドなのに対し、ポストカード時代のは手作りっぽいウォームな雰囲気と冷たいエコーのかかり具合が独特で、メジャーでは作り出すことの出来ない、魅力的なサウンドになっていると思います。

Artist
STEVIE WONDER

Title
SUGERSIGNED,SALED & DELIVERED

Label/No.
MOTOWN/MCD09029MD=CD

 アルバム『涙をとどけて』の中に収録されているこの曲は、曲自体が異様に盛り上がるファンキー・グルーヴ。比較的クールなAメロから雪崩をうったように全パートが熱いプレイを開始するBメロ、その到達点のサビと曲の流れも何処までも扇情的。その中で、超強力なドラム&ベースとヴォーカルに絡み付く泣きのギターは卒倒モノの格好よさ。バスドラがこれ程響いてくる曲もそう無いと思います。70年作。

 スティーヴィー・ワンダーはセルフな作りの三部作が一般的には評価高いみたいですが、スティーヴィーにトニー・べネットの「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」をスピード感溢れるアレンジでカヴァーさせてたりする、センスのいいスタッフが周りを固めていた三部作以前のこの頃の方が個人的には好きです。

Artist
小坂 忠

Title
流星都市〜ほうろう

Label/No.
アルファ/ALCA-416

 松本隆&細野晴臣のはっぴいえんどコンビによる曲。歌詞、メロディー、ヴォーカル、ギター、オルガン、それぞれにメロウという言葉がこれ程、あてはまる曲もそうないと思いますが、そんななか林立夫のドラムは「ミーターズのジョー・モデリステか?」と突っ込みを入れたくなるような、ところ構わずのシンコペイトぶり(荒井由実のボサ・ノヴァタッチの「あの日にかえりたい」でも「爆発」してたりしますが(笑))。しかし、そんなドラム聴きたさにこのCDをつい取り出してしまう程、このドラム・プレイは私のお気に入りでもあります。で、作曲者でもある細野晴臣のベースはそんなドラムと上モノとつなぎ止めるべく、抑制の効いたプレイ。75年作。 

 初めて買って聴いたキャラメル・ママが参加したレコードは荒井由実の2枚組ベスト。しかし、別にキャラメル・ママが目的で買った訳ではありませんでした。この「流星都市」が収録されている『ほうろう』はキャラメル・ママ(ティン・パン・アレイ)参加が購入動機のアルバム。銀座山野楽器で93年頃購入。


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